現場でたくさんの企画を見ていると、うまくいく企画には共通する“考え方の型”があると感じます。
その代表例が、演繹・帰納・アブダクションという3つの思考法です。私たちプランナーは日常的に、無意識にこの3つを行ったり来たりしています。今回は、企画の現場でどう使われているのか整理してみます。
① 未来を予測するときの「演繹(えんえき)」
演繹は、とてもシンプルな思考です。
「すでにあるルールを、目の前の出来事に当てはめて予測する」
たとえば、こんな感じです。
- 競合店ができると、売上は下がりやすい(ルール)
- 近所に競合店ができた(事実)
- だから、来月は売上が下がるかもしれない(予測)
これはもう、多くの人が自然にやっている思考ですよね。
市場予測、売上予測、KPI設計、広告効果の見込みなど、「この条件なら、きっとこうなる」と読むときは、ほぼ演繹を使っています。
② 傾向を見つける「帰納(きのう)」
帰納は、たくさんの事実から“型”を見つける考え方です。
- A店で競合が出たら売上が落ちた
- B店でも同じことが起きた
- C店でも同じだった
この事実が積み重なることで、
- 「競合店の出店は、売上低下の要因になりやすい」
というルールが生まれます。
アンケート分析、ユーザーインタビュー、アクセス解析、購買データの分析などは、ほぼすべてこの帰納の世界です。
バラバラだった点が、ある瞬間に“線”としてつながる。あの感覚が、帰納の醍醐味かもしれません。
③ 「なぜ?」を推理する「アブダクション」
少しトリッキーなのが、このアブダクションです。
アブダクションは、
「起きた結果」から、「それっぽい原因」を仮説として推理する思考法です。
たとえば、
- 今月、急に売上がガクッと落ちた(結果)
- 競合ができると売上は落ちやすい(知識)
- もしかして、気づかないうちに近くに競合ができたのでは?(仮説)
これがアブダクションです。
企画の現場では、
- 「なぜ、この施策だけ失敗したのか?」
- 「なぜ、このタイミングで反応が鈍ったのか?」
といった、“理由がすぐにわからない問題”に必ずぶつかります。
この“モヤっとゾーン”を突破するのが、アブダクションです。
企画の仕事は、3つを行ったり来たりしている
実際の企画は、どれか1つだけで完結することはほとんどありません。たとえば企業調査の場面では、こんな流れが自然に起きています。
- 「こういう特徴の会社は上場しやすい」と言われている
- A社はその条件に当てはまっている
→ A社は上場するかもしれない(演繹)
でも、本当にそうだろうか?と考えて、
- 同規模企業を複数リサーチしてみる
- aタイプ、bタイプ、cタイプに分かれた
- A社はaグループに属している
- aグループの多くは実際に上場している
→ なるほど、たしかに傾向はありそうだ(帰納)
ところが、
- A社はなぜか上場の動きがない
- むしろ異業種へのM&Aを積極的に進めている
そこでさらに考えます。
- M&Aの目的は、リスク分散、第二創業、事業売却、節税など
- 市況は長期的に厳しくなってきている
→ 「既存事業の将来不安を見越して、リスク分散しているのでは?」(アブダクション)
こうして、仮説の解像度がどんどん上がっていきます。
結局、すべては「仮説づくり」の話
演繹も、帰納も、アブダクションも、
実はすべて「仮説をつくるための道具」です。
- 演繹:このルールに当てはまるかもしれない
- 帰納:この共通点は、ルールになりそうだ
- アブダクション:この結果の原因は、これかもしれない
企画とは、
仮説を立てて、検証して、ズレたらまた修正する
このくり返しなのだと思います。
アブダクションが強い人が、だいたいやっていること
最後に、特に企画力に差が出やすい「アブダクションの鍛え方」を少しだけ紹介します。
「なぜ?」を最低3回、自分にぶつける
違和感を覚えたら、1回で止まらず、無理やり3回「なぜ?」を重ねる。
しかも最後は、あえて全然違う角度の理由も考える。
これだけで、発想の検索範囲が一気に広がります。
何でも「たとえ話」で考えてみる
ビジネスと恋愛、組織づくりとスポーツ、SNSと口コミ…。
違う世界を無理やりつなぐと、思考が一段ジャンプします。
事例は「結果」ではなく「しくみ」で覚える
×「A社は値下げして失敗した」
○「A社は“ブランド価値が命”なのに、安売りしてしまった」
この「なぜ失敗したか」が、次の企画のヒントになります。
「なんとなく」を放置しない
「なんとなくこの企画、危ない気がする」
そう感じたら、「それって、過去のどの失敗と似てる?」と、自分に聞いてみる。
直感は、だいたい過去の経験のデータベースです。
おわりに|企画は、情報の“編集”でできている
たくさんの情報があふれる時代だからこそ、
- どの情報を「事実」として拾い
- どう仮説としてつなぎ
- どう検証に持ち込むか
この「思考の編集力」が、企画の質を大きく左右します。
演繹・帰納・アブダクション。
この3つを意識的に使い分けられるようになると、
企画の見え方が、きっと少し変わってくるはずです。













