経験のすべてが“今”につながる——藤﨑さんが歩んだキャリアと営業の哲学(3)

話しやすい空気づくりから数字まで、営業に欠かせない3つの軸と、“人間力”の磨き方

営業の仕事を続けるなかで、大切にしてきた“営業マインド”のようなものはありますか?

はい。私なりに大事にしていることが3つあります。

1つ目は明るくポジティブでいること。とくにお客さまと対面するときは、場の空気づくりが大切です。ネガティブな話は、あとでSEや技術担当とすり合わせればいい。営業はまず、話しやすい空気をつくることが仕事だと思っています。

2つ目はお客さまの立場で考えること。これは、意識していたというより、振り返ると自然にそうしていたことかもしれません。でも結果として、とても大事な姿勢だったと思っています。

3つ目は、やっぱり数字。営業である以上、売上を上げることは避けて通れません。数字が全てではないけれど、思いや工夫だけではなく、結果を伴わせることが必要だと思います。

お客さまとの関わり方のポイントはどこにありますか?

関係性の構築において大事なのは、「お客さまを知ること」と「興味を持つこと」。これは、新規でも既存でも共通していると思います。

でも正直、ちょっと苦手なお客さまっていらっしゃいますよね……。

もちろんいらっしゃいます(笑)。でも、苦手だと感じても「何か一つくらい面白いところがあるだろう」と思って接してきました。結果として、苦手すぎて関係が続かなかったというケースは、あまりなかったですね。

すごいですね。苦手な人でもちゃんと向き合う。

耐性が高い、というのもあるのかもしれません。昔の職場では、無茶ぶりも多かったもので(笑)。でも、そういう経験があったからこそ、どんなお客さまにも動じない自分ができたのかもしれません。

では、既存のお客さまとの関係をどのように維持していますか?

とにかく定期的に連絡をとる。シンプルですが、これが一番大事だと思っています。「その後いかがですか?」とか「最近こういう実績が出たんですが、ご覧いただけませんか?」と、自分から動くことですね。営業が連絡しなくなったら、そこで関係も終わってしまいますから。

ありがとうございます。「定期的に連絡をとる」というのは、本当に大切ですよね。新規のお客さまとの関係づくりも悩ましい部分ですが、どのようにされていますか?

私は、一見まったく接点のないようなお客さまとの接点探しが、嫌いじゃないんですよ。既存の人間関係や情報のなかから“自然なつながり”を見つけることを大切にしています。

具体的には、どうやって?

日頃からアンテナを立てておいて、「この前、A社がこんなこと言ってたな」とか、「Bさんがこんな課題を抱えていたな」と記憶しているんです。ペラペラと本読んでたら「あ、この言葉、誰か言ってたなぁ」とか。いつ誰がお客さまになるのかわからないから、いざというときにピンとくるように、日頃から感度を上げておく感じです。

常に頭の中にお客さまのお話があるんですね。

そうですね。キーワードを覚えておいて、あとで引き出せるようにしておく。だから、完全な新規飛び込みはほとんどやらないです。接点の種を日頃から蒔いておくという感じですね。

自分でつくった流れのほうが、精神的にもいいですよね。

まさにそうです。自分で考えてアプローチした結果なら、たとえうまくいかなくても納得できますからね。

つながる接点を常に考えていて、はまりそうだなっていうところからちょっとアプローチしていく。

最近はAIやさまざまな営業支援ツールが出てきて、「営業って今後どうなっていくんだろう?」と感じる場面も増えています。藤﨑さんはどうお考えですか?

たしかに、そういった変化は大きいですよね。今後、営業の中でも効率化できる部分はどんどん自動化されていくと思います。でも私は、営業という仕事の本質、つまり「人と人が関わる仕事」という部分は変わらないと感じています。たとえば、お客さまを紹介する場面だったり、クロージングや最終的な意思決定の場面だったり。そうした間や空気は、人にしかつくれないものだと思うんです。

選択肢として「AIと話す」「人と話す」が並ぶような時代になりそうですよね。

まさにそうですね。だからこそ、「この場面は人と話したい」と思ってもらえる営業であることが、これからますます重要になると思います。AIができることが増えるほど、「誰かに相談したい」「ちゃんと話を聞いてほしい」といった人ならではのニーズに応えられる営業の価値が、より際立っていくはずです。

たしかに、迷っているときや判断に自信がないときって、「この人に聞いてみよう」と思える相手の存在が、すごく大きいですよね。

そうなんです。効率だけでなく、感情や信頼が関わってくるのが営業という仕事の面白さでもありますし、これからの時代だからこそ、その“人間らしさ”がより求められると思っています。