目次
複数案件の仕事をしていると、
「タスクが多すぎて、何から手をつければいいかわからない!」
「急な対応に追われ、予定していたタスクが終わっていない!」
「そもそも、どのタスクから手をつければいいかわからない!」
といったことに悩むことはありませんか?
タスクとは、仕事を構成する小さな単位の作業のこと。
同時進行する複数案件をこなすためには、「いつまでになにを用意する必要がるか」といったタスクの整理や「優先順位をつける」といったタスク管理が重要です。
1.複数案件を同時にこなすなら、マルチタスクをやめる
仕事を効率的に行う方法として、「マルチタスク」という言葉をよく耳にします。
マルチタスクとは、複数のタスクを短時間で何度も切り替えながら行うことです。メリットは、複数の案件を停滞させずに進められることですが、ミスやヌケ漏れが発生しやすくなるのがデメリット。効率的な作業方法として挙げられることもあるマルチタスクですが、私たちは一度に複数のことを考えるには限界があるのです。
アンデュ・ハンセンさんの『スマホ脳』(2020)に、「私たちは一度にひとつのことしか集中できない。複数の作業を同時にこなしていると思っていても、実際にやっていることは、作業の間を行ったり来たりしているだけなのだ。2つの作業の間で集中の対象をパッパッと変えているだけというのが現実だ。(中略)脳には切り替え時間が必要で、集中する先を切り替えた後、再び元の作業に100%集中できるまでには何分も時間がかかるという。」と書かれているように、複数のことを同時に考えることは集中力に欠け、作業の切り替えに時間がかかってしまい結果的には非効率であると言えそうです。
マルチタスクの対語にタスクを一つずつ行う「シングルタスク」があります。マルチタスクのほうが優れているように思われがちですが、1つのタスクをこなすのにだらだらと時間をかけすぎてしまわなければ、集中して取り組めるというメリットは大きいと言えるでしょう。確かに、しっかりタスクに優先順位を付けて、一つずつ消化していくシングルタスクほうが確実かもしれません。

マルチタスクとシングルタスクの違い
2.上手なタスク管理のポイント5選
1.最終ゴールと中間ゴール(マイルストン)を決める
まずは、案件における最終ゴールは何か?を確認しましょう。各案件における期日はいつで、何を納品しなければいけないのかを明確にします。その最終ゴールを見据えた案件全体のWBS(Work Breakdown Structure)を作成して各案件を管理しましょう。
複数案件を同時進行する場合のタスク管理では、最終ゴールだけでなく中間ゴール(マイルストン)も定めることがポイントです。どんな中間成果物をいつまでに用意する必要があるのかを決めます。その中間ゴールを見据えた上で、自分の稼働スケジュールを2週間ごとに切っていつどんなタスクを行うのか?を可視化します。
なぜ2週間か?というと、自分のワークを細かくイメージできるのはせいぜい10人日程度でしかなく、実際にはすんなりと予定通りに事は進まないからです。多くの現場で上長やチームメンバー、クライアントから横やりが入ったり、別件でトラブルがあったり‥とバタバタすることは必至です。あまり長く細かいスケジュールを引いても、どうせ引き直すことになるのです。
2.案件をタスク化する
タスク管理をするには、案件をタスクに分解する必要があります。これは、WBSを作るということと同義であると言っても良いでしょう。自分やチームメンバーがタスクを見てすぐに取り掛かれる状態まで、全てのタスクの粒度を合わせ、できるだけ細分化してみてください。例えば「競合他社の比較表を作成する」というタスクがあった場合‥
- 表の横軸=比較対象になる企業をリストアップする
- 表の縦軸=各社の情報収集をしながら比較すべき項目を決める
- 比較表を埋める
- 比較項目における特徴をマーキングし、まとめる
- 各社の特徴を明確にする
- 結論をまとめる
- 上司とのMTGを設定する
- 結論とプロセスが合っているか確認してもらう
‥といったように、具体的に何をやらなければいけないのか?を洗い出すことで、作業のイメージが湧き、すぐに取りかかれる状態になります。
3.それぞれのシングルタスクの大目的を認識する
また、細分化した各タスクは「準備」→「思考」→「仕上げ」の段階のうち、どれに当てはまるのかを意識しておくことも重要です。
●準備段階のタスク:データの収集、調査内容のまとめ、アンダーレイ取集、ファクトファインディングス‥など考えるために必要なものを用意すること。
●思考段階のタスク:課題や施策の策定、構成案やコピー、UX/UI設計など、具体的な内容を詰めること。
●仕上げ段階のタスク:パワーポイントでまとめたり、プレゼン資料をつくったりといったように、考えた内容をアウトプットしたり、コミュニケーション相手に瞬時に理解いただけるように整えること。
しっかりと準備ができていないと考えられませんし、考えがまとまっていないで仕上げようとしても中身のない資料となってしまいます。万が一タスクがうまく進まない場合は、「準備・思考・仕上げ」にまたがって、タスクをつくっていないか?もしくは、タスクの流れを「仕上げ→準備→思考」というようにしていないか?確認してみましょう。
4.優先度を決める
複数案件をタスクに細分化できたら、それぞれに優先度をつけましょう。無計画に手をつけてしまうと、タスクのヌケモレ・ダブりが発生し、スケジュールが守れなくなります。タスクが多ければ多いほど、優先度をつけて確実に消化するようなスケジュール設計が重要です。
優先度のつけ方としては、「一番遅い納品物かつ一番難しい案件のタスク」をプライオリティ1にすべきです。ややもすると、「提出が先の案件」や「難しい案件」は後回しにされがちですが、そうすればするほど作業時間が削られてしまいます。困難な案件のアウトプットは早めにイメージしておき、リスクヘッジを心掛けましょう。チームメンバーの精神的負荷も大きく低減するはずです。
優先度がつけられたらそれぞれのタスクにかかる工数を予測して、無理のないように2週間単位のスケジュールに組み込みましょう。1週間ごとに振り返り、予測した工数と現実の工数のギャップを見ておくと、工数見積もりのスキルも上がるはずです。

複数案件のタスクを整理する
5.シングルタスクに集中する
いざタスクに取り組む時は、マルチタスクではなくシングルタスクで一つずつ片付けましょう。1~2時間の集中タイムを設けて一つのタスクに取り組むことが重要です。悶々と数時間も考え続けるのは止めましょう。
また、できるだけ集中力が続くように環境をつくりましょう。メールやメッセージツールから通知が来ると内容を確認したくなりますが、その対応をしていると集中が切れてしまいます。集中する!と決めたら、通知をオフにするなど意図的に外部との繋がりをシャットアウトして、一つのタスクを効率的に消化することが重要です。
ここでは「2.案件をタスク化する」で触れた「集中」「思考」「仕上げ」のどのタスクをやっているかを意識しながら進めましょう。もしうまくタスクをこなせないようであれば、もう一度案件のタスク化の段階に立ち戻ることが大切です。
集中タイムが終わったら、メールなどのレスポンスを行う時間も設けましょう。1~2分で応えられるものはすぐに対応し、時間がかかるものは一次受けのメールを返しておき、自分宛に来ている通知は全て既読にします。顧客満足度を高めるためにも、できるだけボールを持たないようにすることが肝要です。
6.スケジュールを早めに調整する
2週間のスケジュールは、途中で進捗を確認して調整することがポイントです。金曜日に次の2週間のスケジュールを決めた場合、まずは週明け火曜日(スタートして2日目)には進捗を確認しましょう。週の前半で一度確認することで、上手く進んでいない場合でもその週を立て直すことができます。
そして、1週間が終わる金曜日の時点でもう一度進捗を確認します。スケジュール通りいかなかった場合には、「4.優先度を決める」に立ち戻って次の2週間のスケジュールを立て直すといったサイクルを繰り返しましょう。このように実際には2週間のスケジュールを立てても予定通りいかないことが多く、都度変更していく必要があります。
その際、チームメンバーそれぞれが、タスクの消化状況を把握し、誰か1人にタスクが集中してオーバーワークにならないようにコミュニケーションを取り合うことが重要です。個々人はシングルタスクで集中して作業することになりますが、実はチームとしてマルチタスクをしているという状態が望ましいのです。