経験のすべてが“今”につながる——藤﨑さんが歩んだキャリアと営業の哲学(2)

最後の3年より、これからの10年で選んだキャリア——NECからパーソル、そして独立へ

これまでのキャリアについて、改めて教えていただけますか?

大学を卒業して最初に就職したのは、NECの子会社であるNECコンピューターシステムです。最初の7年間は、主に埼玉の製造業向けにソリューション営業をしていました。ただ、実は仕事のかたわらアメリカンフットボールにも力を入れていまして、選手としての活動が中心だった時期でもあります。

アメフト!藤﨑さんらしいですね。

はい。29歳でアメフトを引退して、次のキャリアをどうするか考えた時に、「今までの経験をもっと活かしたい」と思ったんです。ちょうどその頃、ITと人材のニーズの高まりを実感していたので、「この2つが交差するような仕事ができたら」と思っていた矢先、たまたま立ち寄ったコンビニの雑誌で「テンプスタッフ(現パーソル)」の求人を見つけました。

コンビニでの出会いだったんですね(笑)

そうなんです。ちょうど「IT経験者を募集」と書いてあって、「これは自分に合うかもしれない」と。そのまま応募して、駆け出しの技術派遣部門に入社しました。当時はまだ社員も300〜400人くらいの、小さなベンチャー感のある会社でした。

それが、27年も在籍されたんですね。

はい、パーソルでは大きく2つの業務に関わりました。前半は技術者派遣やIT領域の受託ビジネスの立ち上げ。そして後半は、M&Aでグループに加わった企業の統合支援、いわゆる「PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)」を担当しました。

PMIって、難しそうなイメージがありますが……。

たしかに、買収先の会社に1人や2人で派遣されるような、なかなかハードな仕事でしたね(笑)。行くと「この人、何しに来たんだ?」みたいな空気がある。でも、敵ではなく仲間として信頼を築きながら、会社の強みを見つけて、それをどう活かしていくかを一緒に考える。そういうスタンスでやっていました。

「できてないことを直す」のではなく、「強みを伸ばす」んですね。

そうです。一般的には、コスト削減や人員整理といったネガティブな施策が先行しがちなんですけど、私たちは逆に「この会社のいいところはどこか?」を一緒に探していくようなかたちでした。これはすごくやりがいがありましたし、楽しかったですね。

その後、独立されて「コルディアル社」を立ち上げたのは、どんな経緯だったんですか?

パーソルがどんどん大きな会社になっていくなかで、個人の裁量で新しいことをやるのが難しくなってきたんです。「もうすこし自由に、自分のやりたいことをやってみたい」という思いが強くなって、57歳で独立を決意しました。

「あと3年いれば定年なのに」と思う人も多いと思いますが……

それよりも、好きなことに迷わずチャレンジしようと思って。とはいえ、家族にはちゃんとプレゼンしましたよ。1か月かけて事業計画とキャッシュフローをつくって、妻に説明しました。「これは相談じゃないよね」と怒られましたけど、最後は理解してくれました。

無謀と言われながらも、新しいことにチャレンジするのが好きなほうだった。

起業後、最初は大変だったんじゃないですか?

そうですね、最初の半年は正直かなり不安でした。仕事も、問い合わせもまったくない。でも、BtoBは仕込みに時間がかかるので、粘り強く準備を続けて、徐々に軌道に乗っていきました。いまは「やってよかった」と心から思えています。

今は独立されて1人で事業をされていますが、何か問題が起きたときはどうしていますか?

困ったときは、人に聞きます。調べることもしますけど、結局は信頼できる仲間に「こういう案件なんだけど、何か知ってる?」と相談することが多いですね。とくに、同業の方と話すことが多いです。一緒に働いたことのある人や、以前から関係性のある方に聞くのがほとんどです。

日頃からよく相談されているんですか?

実はそんなに悩まないタイプなんですよ(笑)。基本的に、自分で考えて、自分で「こうしよう」と決めて動くスタイルなので。だから、「誰かに聞かなきゃ」と困る場面はあまりないかもしれません。でも、いざというときに頼れる仲間がいるというのは、すごくありがたいですね。

お仕事は楽しいですか?

楽しいですね。特に、人との出会いが面白い。独立してからは特にそう感じます。新しい人と出会って、その人の考え方や価値観に触れるのは本当に刺激的です。たとえば、若い方に研修をすると、思いもよらない視点や質問を受けて、「そういう考え方もあるんだな」と新鮮な気持ちになります。年代が違うからこそ学べることがあるんですよね。そして、自分なりに考えた営業戦略やアプローチがうまくいって初受注につながった時は、もう何にも代えがたい喜びがあります。

一方で、難しさを感じるのはどんな時ですか?

これまで27年間、人材業をやってきましたけど、やっぱり人って難しいなとも思います。たとえば、「この仕事、条件もいいし、キャリアアップにもなるし、絶対合うだろう」と思って提案しても、あっさり断られたり、「もっと違う仕事がいい」と言われたり。「人は計画どおりに動かない」と痛感する場面は多々あります。

確かに、物と違って人は感情も背景もあるので、計算どおりにはいかないですよね。

そうなんです。どれだけ経験を積んでも「人はコントロールできない」という謙虚さを忘れないようにしています。「これは絶対合うはず」と思っていた人材マッチングが、まったくハマらないこともある。環境やタイミング、本人の心境の変化など、いろんな要因が絡むので、本当に難しいんです。でも、それがあるから人の仕事は面白いとも言えるのかもしれません。