『商品企画が上手い人 提案が通らない人』藤井円工さんインタビュー(1)

事業会社でさまざまな企画職をご経験の方にお話を聞く「ClientView」。今回は、大手電機メーカーで商品企画に30年以上も携わってこられた藤井円工さんにお話をお聞きしました。藤井さんは『商品企画が上手い人 提案が通らない人』の筆者でもあります。専業プランナーのみなさん、プランナーを目指す学生さん、多くのマーケターのみなさんの参考になれば幸いです。

【聞き手:株式会社シンクジャム代表|国本智映】

“なんでもやらなアカン”状況で企画力を磨いてきた

商品企画が上手い人提案が通らない人

現在、大手メーカーの商品企画職のマネジャーをされていらっしゃるということですが、どのような経緯でそういった部署に配属されたのか教えていただけますか?

私から望んでなったわけではなく、メーカーへの入社時にたまたま配属された部署が新たな事業というか、新商品を立ち上げたばかりみたいなところで、そこの商品開発課に配属されたんです。立ち上がったばかりの状況だったので、まだ組織も確立されておらず、商品を考えて設計するだけでなく、製造部門に「何故この商品を作らなければいけないのか?」を説明したり、商品の組み立て手順などを考えたり、営業やユーザーに対しても商品の使い方を説明したり‥と、とにかく何から何まで全部やらなくてはならなかったという環境でしたね。

もともと商品企画職を目指してなったというわけではなく、配属されたところがたまたま‥

そう。「システムキッチン」という新しいカテゴリーの事業をやり始めたときだったのです。

会社としてもかなり挑戦的な取り組みだったんですね。

そうですね。新事業スタートというところで、メイン商材から担当者を何人かこっちに移して、新しく立ち上げているような状況ではあったので、とにかく人手がいるみたいな状況でしたね。「何でもやらなあかん」という感じで、新入社員もベテランもないみたいなところがあって。

当初、何名くらいいらしたんですか?

商品開発は、当時うちの直属の課長入れても、5人ぐらいでしたよ。

すごく貴重な体験ですよね。

会社に入るときも「これがやりたい!」というのではなく、「とにかく何でもやります!」みたいな面接の教育を受けて入るというような時代でしたね。

黙っていても、ジェネラリストを目指さざるを得ないような状況ですね。

「会社に入ったら何でもやる」みたいな雰囲気でした。学生時代は建築を勉強していたので、「インテリアか照明かみたいな部門に行けたらいいな‥」くらいのざっくりとした希望はありましたけどね。

そこには何年くらいいらしたのですか?

最初の部署は20年いたんです。我々みたいな大きい会社は、ある程度年数経つと異動があるのですが、これは珍しいパターンです。この部署がシステムキッチン商品部になり、カテゴリーごとの商品部ができて、さらに事業部に拡大、工場も建ち、ちょうどバブル時代でもあったので、働き方は“24時間戦えますか?”(注:1991年に放映された健康ドリンクのCMの歌詞)状態でしたね。ブラック以上のブラック企業だったかもしれません(笑)。その分楽しかったですけどね。そういう状況の中で気がつけば20年やってたと。

アイデアのスタートは、固定概念を覆すことから

商品企画が上手い人提案が通らない人 藤井円工さん

20年間、たくさんの商品を企画されてきたと存じますが、その中で特に印象深い商品はありますか?

まあ、いろいろありますが、商品企画部の課長をやってる時に発売をした “動かせるキッチン”の印象が深いですね。もともとキッチンって固定されているものですけど。

新商品を生み出す時のアイデアは、どういうプロセスで出てくるものですか?

基本はね、妄想することなんですよ。あり得ないって言ったら言い過ぎなんですけど、「こんな風になったらいいな」って。ドラえもんみたいな感じでね。ちょっとまあ、おふざけも入ってもいいんですけど、言葉で言うと妄想なんです。そういったものをまずはちょっと考えてみる。「そうなったら、楽しいな」というような雰囲気が出てくるかどうかですね。一般的にはAとBを足すとか、AからBを引いてみるとか、真逆のAとZを足してみるとか‥ですが、私の場合はどちらかというと妄想ですね。少し妄想的に行くと面白くなってくるので。

自分がユーザーだったら「こんなことがあったらいいな」みたいな、発想からアイデアがでてくる感じですか?

そうですね。もっと言うと「そうなったらいいな」の前に、まず一旦逆説的なことに振ってみるんです。例えば、普通は固定されているものを敢えて動かしてみる。何の意図もなく。それで動くというなら「じゃあ、こんなことができるよね」っていう方法なんです。どちらかと言うと、ニーズは後からついてくる

アイデアの生み出し方としては、少し難しい方法なのでは?

誰でもできることですよ。何か欲しい物を考えると偏ったりするだろうし、自分の経験値の中でしか出てこないので、ある意味幅が狭くなりますが、縦の物を横にするとか、四角いものを丸くするって誰でもできるじゃないですか?

でも、新しい切り口を出すには、ひとひねり必要じゃないですか?

私が言いたいのは、まずそのきっかけ、制約条件を取っ払うということなんですね。そこを“人に言われるか?自分で考えるか?”なんです。丸を三角にしたり、縦を横にまず一回してみなさいと。そうすると「だったら~みたいになるね」というふうにアイデアが出やすくなる。縦のまんま考えてると、ここからどうしても外れていかないですよね。ちょっと横にするだけで、横にしていいんだったら、こうじゃない?みたいなことが出てくる。

それは、一人で考えることが多いのですか?

そうですね。基本、妄想は一人でするものですし(笑)。私と一緒に仕事をしていた部下が、ある研修でちょっとテーブルみたいなキッチンカウンターを試作したんです。「藤井さん、これどう思う?」みたいな話が来たので、「そうだなぁ‥テーブルだったら動かせるよなぁ。動かして見るか!」から始まっただけなんです。なんの調査もしないで

「キッチンカウンターを動かせるかもしれない」ということを最初に考えるのは、すごいなと思うのですが‥

テーブルだと動かせるじゃないですか。じゃあこれに蛇口、シンクとガス、電磁調理器を付けてしまえばキッチンになるわけですよね。最初、テーブルから入ると「動かせる」っていう方向に考えるようになる。じゃあ、あとは水と火をどうするかって、今度はそっちに思考が行くんですよ。

仮に動かせたとしても「ダクトとかどうするの?」って、否定的な意見がすぐでてきますよね?

そういう課題にぶち当たった時に、水は「給水コンセント」という形で、水のコンセントを考えればいいですし、ガス機器はやめてIHヒーターにすれば良い。ダクトは、換気扇メーカーが空気清浄機との合わせ技の機器を開発してきましたね。こちらからアイデアを出すと、いろいろ相手も変わっていくんですね。

明確な課題を解決するための商品ではなく、「こうしたらもっと良くなるかな?」といった発想を大事にしながら、 固定概念を少しとっぱらってみると、アイデアってすごく出てくるなってその時は実感しましたね。

人がやる以上、事業会社にはコーチングが必要

商品企画が上手い人提案が通らない人 藤井円工さん

長年、商品企画に携わられてこられましたが、外部のコンサルタントやプランナーなどに支援を求めることはありましたか?

はい、ありましたね。

そういう場合、ご自身との役割分担はどのように考えていますか?

当時は、我々の知見ではないところを求めてみたり、あるいは単純に我々のキャパでは足りない部分を補ってもらったりという認識でしたね。

最近思うのは、我々事業側のマーケターというのは、事業を考える時のメリットを優先できる立場かなという風に考えています。ある事業を考える時には、メリット・デメリットあるんですけど、結局我々が事業を進めるのでメリットを優先できる。コンサル側には、逆にデメリットをきちんと示すという風にして頂ける方がいいなと感じています。

しかし、実際はコンサル側がやられてることは逆じゃないかな。クライアント側の気に入るようなものを出してくるってコンサルが、やっぱり多かった。そうするといいことばかりなんですよね。我々だって「そうできたらいいね」って思いますから。

でも、我々事業者側っていうのはリスクを怖がっているんです。コンサルには「これやるならこんな危険性がありますよ、デメリットありますよ」っていうことを、きちっと言える人ってなかなかいなかったですね。そこをきちんとロジカルに語っていただく方が逆に信用度は増しますよ。

「できること」は自分たちでも考えられるから、それに対してどういうリスクやデメリットがあるか?という、見えてないところや見たくないところを言ってくれと?

きちんと「こういう風なことに対してこういうリスクが伴いますよ」っていうことを言うほうが、その案が生きてくるし、要するにデメリットさえ理解しておけば、対策が事前に打てるし、成功する確率が上がってくることになりますね。事業側の意思決定を司るのはそこにあると思う。

ある案のデメリットをしっかり理解して、最終的に判断されているわけですね。

成功確率って、いろいろな尺度があるとは思うけど、最大値はどれくらいで、中間値どれくらいなんだっていうことを第三者から聞いておくことは必要です。少なくともここには、必ずデメリットがあるって言うことだけを分かっていれば、大きなケガはしませんから。

リスクは、わからないからこそのリスクであって、ある程度わかっていると、すでにそれはリスクではないようにも思えますが‥

いや、特にこの時代は知りたいですね。高度成長、バブルの時っていうのは同じようにリスクはあったんですけど、それを超える勢いがあったので、あんまり気にしなかった。今はリスクを知って、それを何でカバーしていくかっていうことを常に考えないといけないですね。リスクを担保できていない、あるいは分かっていないところは結構ケガしてますよ。

社内で絶対やらなければいけないこと、社外に任せてもいいよということは、どのように決まっているのでしょうか?

社内でやらなければならないと私なりに思ったのは、コーチング。アイデアとかそういうものはちょっと置いといて。常日頃そっちに向かえるような指導、あるいはそのサポートをする人がいないと、結局、若い人であれ年寄りであれ、それをずっとやり続けられないんですよね。これを社内でもやらないといけないし、社外の人にもやってもらいたい。

言ってみれば、「ライザップの指導員」が必要なんですよ。どうやったら痩せるかなんて、誰でも分かってるんです。糖質を制限したりとか、すごくシンプルなメニューなんですね。でも、それを続けられないんですよ。続けられないから、続けられるようにきちんと毎日、食べなかった?とか、運動した?とかを、ずーっとやっているから結果的に2か月後痩せられるわけですよ。僕は、企業の商品開発も一緒だと思いますね。そこをやっぱりアドバイスしたり確認したりっていうことを、社内でも必要だし社外でやっていただけるといいなと思いますね。

コーチングというのは、基本的に答えはその人の中にあるという考え方ですよね。答えはその事業会社の中にきっとありますよね?

そう。実は分かっているんですよ。これをやったらいいとか、やらんほうがいいとか、分かってるんです。それがいろんな固定概念と既成概念があって、なかなかそこに行こうとしないんですよ。責任者であっても。

「本当にあなた痩せたいですか?2か月後痩せてどうするんですか?」っていうことを聞いてあげないとダメなんです。なんとなく痩せたいなぁ~じゃ絶対無理ですよ。「売上はなんとなくじゃ上がりませんよ。2か月後上がってなかったら、どうなるんですか?」みたいな問いかけをする。「じゃあ、こうしましょうよ」っていう風にはしていく人が必要であるということですね。

つまり「ああせい!こうせい!」じゃないんですよ。「2か月後に売上上げろ!」ではなくて、それは痩せろと言ってるのと一緒ですからね。「痩せたかったら、食べなかったらいいやん」っていう話なんだけど、それができないから、苦労するわけですよね。どうしても目の前のものを食べてしまうんですよ(笑)。コーチングの内容や分野はいろいろありますけど、私は長いこと仕事をやってみて、人がやる以上はそこが重要だなとは思いますね

管理して欲しいではなく、導いて欲しいという感覚でしょうか?

そうですね。管理者(上司)に、そういう感覚がないと自分一人で自分自身をきちっとやるっていうのは、かなり難しいと思ってますよ。「3年後こうするんだ」「会社は変わらなきゃダメだ」「みんなの考えを変えなきゃダメだ」って言うんだけど、「明日考えればいいやろ」っていうね。そういうことが、どうもずっと横行してるなっていう気がします。

『商品企画が上手い人 提案が通らない人』藤井円工さんインタビュー(2)に続く

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