行動を重んじ成功に導く|森角敦さんインタビュー(2)

これまでのキャリア(成功体験)

今までのお仕事で印象的だったことについて、いくつか具体的なエピソードを教えていただけますか?

食品宅配サービス会社で言うと、野菜ジュースですね。食品宅配サービス会社では、カートカンっていう紙で作られた容器で販売しているのですが、どうしても原価が高い。それに紙だと、賞味期限が短いのです。なので、販売したらしっかりと利益が出る商材かつ、あまり世の中になさそうなものを探して、整腸作用がある「難消化デキストリン(食物繊維)」に目をつけ、最終的には機能性表示食品マークを会社ではじめて取得しました。

商品名とかパッケージの図案をその当時の商品開発担当者と、土日や休日でもずっとやり取りして。いくらで販売するかや、ベンチマーク選定にするかも全部策定し、販売するに至りました。

既に売り上げが100万本行ったタイミングで、当時の株主の経営者がたまたま表敬訪問してくださった時に、「新商品のジュースです」ということで飲んでもらったら、気に入っていただき「これを全部営業所に置け」と言ってくださった辺りで一気に広がって。その時、経営的に結構きつい状態だったんですけど、株主企業が購入してくれて利益がすごく出たんですね。

チームで成し遂げた達成感は大きかった

そこまでいけて、お客様にもしっかり売れたっていうところがあり、達成感がありましたね。会社から与えられたミッションではなくて、現場のマーチャンダイザーと私、メンバーの3人だけで作ったっていうところが、なおさら達成感がありました。ちょっと否定された時に悔しさみたいなのがありながら、それを変えられた時の、「それ見たことか」的なことができたのは、すごく面白かったと今でも鮮明に残っています。

反対もありながら、ご自身でいろいろと考えて決めたことが実ったというご経験ですね。

それが成功体験になって、先ほどお話させていただいた価値観のマーケティングサービスだとか、何をしたい、何をすべきか」を言えるようになったっていうのが、自分の中の仕事のやり方にとってはいい転機だったというふうに思います。

その野菜ジュースも、本来であれば会議とかに出て、「それはカタログのどこに載せるのか」というのを決める手順があるのですが、その時、私は販売促進、カタログの統括をしていたので、チラシの計画が作れるんですよ。ですから、なかば勝手にチラシを作って、でかでかと目立つようにして売っていくっていうことができました。

あと、リブランディングの一環で、食品宅配サービスの企業ロゴとかも作らせていただいたりしました。それも所属していた商品部以外の案件でディレクションを一任されたので‥。既存のロゴ書体が手書き風だったんですが、雑誌のVogueとかに使われている、昔ながらの書体を活かすなど、とにかくコンセプトをしっかり固めて進めたんです。見た目はそんなに変わらないけれど、洗練しているかたちを提案した時に、その際は全社の誰も否定しなかったっていうのはすごく嬉しかったですね。

企業ロゴ変更という大役も、実績があるから任せられたのですね。マネジメント面では何かありますか?

数字の面で言うと、特に買収先の傘下に入る時は経営的に厳しかったので、原価改善というかたちで業務に携わらせていただきました。原価が1%改善するだけで、1億円程度改善できるんです。

食品って、どこも1~2%、スーパーとかでも結局3~4%しか純利益が残らないくらいじゃないですか。そこに対して利益改善をしていく時に、毎週毎週売上と利益と原価は結果が出ますが、カタログの制作には2ヶ月かかるので、結局週ごとでは変えられないですよね。でも、なんでこの原価であったのか、野菜の仕入れがどうしてこの価格だったんだっていうところに対して、日で見るようにしていったんです。

そこで、自社と買収先の両企業を見た時に何が売れているのか、どこに仕入れのお金が一番かかっているのかという全部の比較ができた。通常はお米の原価が高いものなのですが、自社は果実の仕入れが特に高かったので、まず桃やメロンなどから原価改善に着手しました。

「今週の原価率はなぜこの結果になったのか?来週は目標原価率にするためにどうするか?」というところを考えていきました。例えば、50%を49%にするという目標を指示するのではなく、「どうしたらそうなるか?」というふうに行動ベースで考えました。そうしたら、Plan、Do、Check、Actionの「Action」を、ようやく理解できた。Actionに対しては結果の数字が出てきて、それからどうするっていうPlanのサイクルをしっかり回せたので、当初半年の改善指示が3ヶ月で終わったんです。PDCAの回し方っていうのがきれいにできたなっていう自分の中の成功体験でもあり、今の仕事にも強く生きています。

Actionという重要なところをご自身で実感したのですね。

はい。やってみたことによって、PDCAって企画して実行して、数字見てその次また考えていたら、「ActionじゃなくてまたPlanじゃん」と思って。単純に日本語で言うとActionって行動ですよね。それよりも芸人じゃないですけど、「からの?」というふうに考えた方が、チームにも刺さったんです。そういうかたちでずっと問いかけていくと、チーム全体が「からの」をちゃんと考えるので、大きくActionの大事さが伝わったっていうことですかね。

部下に任せるのが森角さんの立ち位置だと思いますが、自分でやってみるというのも大事ですか?

出てきたデータを僕ともう1人で分析して、何回もいろいろ並べ替えして見ていくと、傾向が見えてくるようになりましたね。あそこで自分でデータを腹に落とさないと、おそらく行動まで行けなかっただろうと思います。

仕事の面白さ・難しさ

森角さんが考える仕事の面白さと難しさとは?

自分よりできる人と会った時には、面白いなとは思います。それと、設定した目標を達成したことに対しての充実感、達成感っていうのも、とても面白いですね。

「この人こんなにできるんだ」を目の当たりにすると面白い

私は、「似てる人が嫌」っていう感じが少しあって。例えば、企画屋と企画屋では合いづらいなと思っています。アナリストってなると自分とは職種が違う。カメラマンってなると自分とは職種が違う。デザイナーとなると自分とは職種が違う。職種が違う人とお仕事させていただいて、こう撮ってくれたんだとか、こういうデザインにしてくれたのかと、予想を超えてきた時はすごく面白いなって思います。そうすると、次に何が出てくるかがワクワクしてきますよね。デザイナーさんとかクリエイティブの方、ライターさん、プランニングの方とか、違う職種の人であれば、それは自分の会社の中でもそうですし、支援していただく会社さんの中でもそうだなって思います。

それこそ経営に特化した人とも話したりすると、私は管理職の立場ではあるけども、経営をしているわけではないので、視座の違いっていうのが面白いな、そりゃそうだわなっていうふうに思います。今の立場だと、経営という立場の人とは全然視点が違うので、そこの部分のギャップっていうのを埋められるのか、埋められないのかっていうところを考えるのは、興味深いですね。

自分と結構違う職種の方の実力を感じたり、そういう方と話したりするのが面白いんですね。

そうですね。反対に難しいのは、感情の扱いですかね。やっぱり仕事って冷静にやるべきものだとは思うんですけど、どうしても感情に左右されることがあるので、そういう時にすごく落ち込みますよね。例えばクライアントからご意見をいただいた時だとか、メンバーに対してそこ違うんじゃないのっていう時、なんでこんな言われなきゃいけないんだろう‥みたいな感情になったり。感情に流されたりとか、たまに誰かを気遣いすぎて上手くいかなかったりとかする時は、すごく反省することはあります。どんな時も1回感情を落ち着かせるっていうのは大事ですね。

努力は絶対報われるとは思っていますが、努力がその時に報われない時があるっていうことも難しいですね。頑張ってやっていたのに、失注してしまった時のむなしさっていうか、虚無感っていうのは結構きついなとは思います。

でも、基本的に日和らないでやるって気持ちでやります。例えば、誰かに言われて、その通りにやってしまって失敗するっていうこともあるかもしれないですよね。私も管理職で、自分がデータを作ったりするわけではないのですが、メンバーのワークを鵜呑みにしてしまった時、後から「これ違ってる!」こともあります。しっかり聞いて自分も納得できる状態にしようなど、自分のちっちゃいルールを作ったりもしています。

感情コントロールや人とのやり取りみたいなところで、結構難しいなと思う局面があるようですね。

そうですね。コミュニケーションがどうしても上手くいかない時とかは大変ですよね。自分が今までやっていた仕事って、ディレクションです。編集だったり、商品開発だったりは工場に依頼したり、デザイナーさんに依頼したり、企画会社に依頼したりしていただけで。どの人たちとどういうかたちでやることによって、どういうアウトプットが出て、それをどう販売していくか、どう伝えていくかを考えていく仕事が中心です。そうなると一番仕事として重要なのは、人とのコミュニケーションになるのかなっていうふうに思います。

すべて順調にいけばいいですけど、絶対にトラブルが発生しますし、どこかで圧力をかけなければいけないっていうことにもなってきます。今は若いメンバーがいるので、自分がそこでファイアウォールにならなきゃいけない時もあるんですよね。その時の説明の仕方、圧力のかけ方、一手で終わらせなきゃいけないみたいなところもコミュニケーションなんだと思っています。そういう意味では、コミュニケーションでご飯を食べているけれども、一方ではコミュニケーションが一番嫌いだなと思う時も正直ありますよね。

意外ですね。コミュニケーションには相当長けてらっしゃるように思えますが。

いえいえ。コミュニケーションは、多分完成しないんだと思っています。ただ、今の若い人たちは優秀です。だから、どんどん仕事を振っていきますし、分析だとか、企画だとかも半分スポーツみたいなところもあるので、早め早めに筋肉鍛えてもらう方がいいのかと。そこは自分のマネジメントの方針を、ちょっと前に変えました。30代の時とかは私も若かったので、自分がやりたいっていうのがありましたが、40代になって、やってみてもらって、そこからチューニング役、質問役だとかっていうかたちでしていくようにしています。仕事の分け方を変えてみたのと、メンバーを信じてみるようにしました。自分の方ができると思っていた時期もありましたが。

事業会社と専業会社の違い

どちらもご経験された森角さんに伺いたいのですが、事業会社と支援会社におけるマーケティングに対する違いは何ですか?

事業会社は、課題の解決というよりも事業をどうするかっていうマーケティングだと思います。市場をつくるっていうのがマーケティングの根本。そこのために何をするか?となりますね。一方コンサルティング(支援)会社の場合は、マーケティング課題の解決になります。そこが大きく違うのではないでしょうか?もしかしたら、わからない課題を解決することも、コンサルティング会社がよく支援する領域かもしれません。

なるほど。何をやっていいかがわからないという課題も、確かにコンサルティング会社の担うところではあります。

ロイヤリティ マーケティングではコンサルティング、事業とコンサルティングのハイブリッドみたいなことをさせてもらっているので、そういう意味でも、よくコンサルティングとか、支援会社の苦しみだとか楽しみもわかりますし、事業会社の苦しみもわかるという感じです。

どちらにしても、「何のためにするんでしたっけ?」っていうところが、とっても大事だろうとは思います。事業だろうが、支援だろうが目的が歪んでくると、結局出来上がったものが違うんだよなっていうところがあるので。

あとは、人間関係的にいうと、事業会社の場合はやっている人が誰を通せばいいのかっていうのはすぐわかる。支援会社側は、目の前の人とコミュニケーションすることが多いじゃないですか。本当にそれを求めているのが経営者や上席なのか、誰の意思なのかがわからない部分が、支援会社の辛いところですね。結局、解釈の仕方がそこにいる担当者と、上席や経営者と違っていた場合、そこのズレをコンサルタントが気づけない場合は、最終的に内容がひっくり返ることが多いので。

目的設定と、意思決定者やキーマンを見極めるのが大事ですね。

私のイメージだと、事業会社の方が、どちらかというとやっていることは、業界を深く掘るっている感じです。事業会社だと、毎回毎回違うデータを見ながらも、自社のデータなので、そのデータの解釈の仕方が同じです。

コンサルティング会社の方が、業界は広く見られるところがあり、やっていることは深く掘れるんだろうって思います。そういう意味では支援会社の方々にコンサルティングとか、課題の解決をお願いするのは、違う視点で見てほしいからというのもありますね。解決の仕方とか手法だとか、そういうところを求めていく方が、事業会社としても成功の近道なんだろうと思いますよ。

行動を重んじ成功に導く|森角敦さんインタビュー(3)に続く

すべてのデータを、 コンテンツへ。

シンクジャムなら、多能工型のプランナーが データ分析からコンテンツ制作まで ワンストップでサポートいたします。

サービスページへはこちらから! 事例ページへはこちらから!