「営業はナビゲーション」プロフェッショナルの心構え|村上彰さんインタビュー(2)

リアルが価値になる時代

今後の営業はどうなっていくとお考えですか?

どんどんネットが発達していくでしょうから、リアルの割合は減っていくとは思います。ただ、本当にネットだけの情報でお客様が安心感を持って、お買い上げになられるかというと、違う感じもしています。安いものや、どこでも手に入るようなものはネットでいいのですが、例えばコンサルティングにしても、いろいろなシステムにしても、高額なものは、リアルで会ってみないと踏ん切りが付かない。どうしてもリアルの営業がいないと安心感が得られないお客様や、そういう性質の製品もありますので、その世界はかえって営業が大事になります。

リアルの営業の役割はどうなるのでしょう。

やはり、傾聴してお客様をナビゲートするという役割は変わらないと思います。ネットを検索しても出てくるような情報を話しても意味ないでしょう。そうではなくて、お客様はどこに不安を感じておられるのか。あるいは、どういうことで背中を押して欲しいのか。お客様がものを検討した背景を聞かないと、背中を押せないではないですか。だから、傾聴が大事になるわけです。営業パーソンは、いろいろご相談されたいわけです。そのときに、ネットに書いてあるような情報しか伝えられないようでは意味がない。そういうときに、自分の経験などを加味しながら、自分でなければわからないような情報や、きちんとした情報を言えるかどうかがリアル営業の大切なポイントなのです。

また、いろいろな物事を解釈する力も重要です。ネットに出た記事をそのまま持っていくのではなくて、自分で解釈して伝えなくてはいけないのです。こういうふうに書いてあるが、実はこれにはこういう意味があります、と。世の中のことを自分なりに解釈して、確かな情報としてお客様にお伝えする、「語る力」や、お客様の不安な気持ちを上手く支えて、背中を押してあげるような「人間性の高さ」。それが大事になると思います。精神的に薄っぺらい人から、ものを買いたくない。なぜなら、情報はネットで得られるわけですから。ネットで得られない情報以外のものとは、人間力の部分です。

難しいですね。人間力は、どうやったら育てられるのでしょうか?

手前味噌の売り込みになってしまいますが、私のワークショップではいろいろな学び会をしていますので、そこで考えてもらっています。よく題材にするのは、例えばコミュニケーションですね。コミュニケーションが大事だということを一貫して言っています。コミュニケーションなんて、人に時間を取られて、面倒臭いばかり、とおっしゃる人もいますが、何がいいのかを考えてもらい。感じてもらう。教えてもらって身に付くものではないのです。

あらゆる可能性を信じて動く

新しいお客様との関係構築はかなり難しいと思うのですが、そのあたりコツなどありますか?

まず顧客志向です。なんのためにやっているかというと、お客様のためなのです。もちろん、腹の中では自分の数字を上げたいとか、業績を伸ばしたいというのもあるのですが、それだけを全面に出していくと、お客様は心が離れてしまいますよね。お客様のためにというのが、一番大事。

二つ目は行動主義です。いいプランだと思っても、行動しなくては駄目。お客様のために行動しなくてはならない。三つ目は、結果主義です。これには数字が大事だという意味もありますが、もう一つの意味合いは、結果からさかのぼって考えていくということです。例えば、年度末までに、このお客様に契約してもらいたいが、どう行動していくかということです。

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この三つは要素に過ぎないので、その底流に流れる、一番大事なものは何か一言で言いますと、先述の通り、やはり「あらゆる可能性を信じ抜くこと」です。あらゆる可能性を信じて、そこへ向けて手を打つことです。世の中は、すべて変化しています。万物は流転するという有名な言葉がありますがその通りで、すべて物事は変化していくのです。私たちも変化するし、マーケットも変化する。お客様の心も変化していきます。変化していくということは、今日までは全然相手にしてくれなかったお客様でも、明日は相手にしてくれるかもしれないということです。変化しなかったら一生変わらないのですが、変化するということは、可能性があるということなのです。一番大事なのは、それを信じられるかどうかなのです。

ここでも、信じることの大切さが出てくるのですね。

あとは、これも繰り返しになりますが、「傾聴すること」が大事です。お客様と関係を作っていくには、お客様に的確に質問して、お客様のお話を聞くことです。お客様がものを検討した背景を聞かないと、背中を押せないではないですか。だから、傾聴が大事になるわけです。なので、新しいお客様には、あまり長々と自分たちのサービスやプロダクトの話をしない。しっかりお客様の話を傾聴して、その思いを受け止めることが大切です。

そして、「約束を守ること」です。お客様との関係がある程度進むと、何か宿題を預かります。恐らく、何か調べてわかったら教えてくれますか、というような小さな宿題です。その小さな約束を、いかに守るかです。例えば、帰社後にすぐわかることであれば、今日中にメールしますと答える。しかし、今日中と言っておきながら夜の8時になってしまったので、明日でもいいのでは、どうせ今日も明日の朝も変わらないとなり、明日の朝一で送るとなる。実は、そういうところでも、お客様はちゃんと見ていらっしゃる。そのことを意識して宿題を預かってほしいですね。大きな宿題はあまり来るものではありませんから、小さな宿題をきちんとやることです。

外部企業とは、目的感を共にしたい

外部の会社ともたくさんお付き合いをされていると思うのですが、コミュニケーションで大切なことはなんでしょう。

自社の担当者と、相手の担当の方との一体感や、コミュニケーションの良さですね。いい会社さんだと、一体感があります。逆に、本当にそれをして業績が上がるのですかと聞いたときに、実は自信なさそうな顔をする会社さんは、あまりいいとは思えないです。

外部の会社に期待することはありますか?

外部の会社にはワーカーではなく、パートナー的存在になって欲しい

目的の共有です。例えば、リーフレットの制作会社の人も、Webマーケティングの会社の人も、「自分たちはこれをやりました」、「見栄えのいい営業リーフレットを作りました」、「非常に中身の濃いホワイトペーパーを作りました」とご助力いただくわけですが、残念なことにそれで終わってしまう会社が多いわけです。営業部門、マーケティング部門の責任者から見ると、それがどれだけ価値があるのか、やってみないと本当のところはわからないと思います。どんな見栄えのいいリーフレットを作っても、中身の濃いホワイトペーパーを作っても、それでお客様から注文をもらえなかったら、何の意味もありません。その目的感を共有できているかどうかということです。

逆に、社内で気を付けることはありますか?

自分たちで決めることは決める。これは重要ですね。自分たちが何のためにやっているか、あるいはどうしたいのか、本質的な意義を自分たちで考えるべきだと思っています。やる意義を深く掘り下げていくと、大体取り組む方向感が見えてきます。そこまでは自分たちが考えることなのです。

逆に、自分たちだけで解決できない仕事は、社内でも社外でも、専門家や、知見を持っている方にアドバイスいただくしかないと思います。特に若手は仕事に慣れていないので、どんどんいろいろな人にアドバイスをもらうべきですよね。

関係をつくり、タイミングを逃さない

なかなか声をかけづらいとか、相談しづらいとか、いつ相談していいかわからないみたいなことが結構あると思うのですが。

特に若手の方がアドバイスを求めるときに、大事なことが二つあります。一つは、アドバイスや助言をもらおうという気持ちがあるかどうかです。人に聞けばもっとグッと進む話を、自分の仕事だからと意固地になり、素直に聞かなければそこで停滞してしまいます。どんないいアドバイスを周りが持っていても、それを受け入れる下地がないと、受け入れられないといけません。やはり、その素直さが大事だと思います。

もう一つは、アドバイスをもらえるような関係を日頃から作っているどうかです。例えば、毎日顔を合わせても、ろくすっぽ挨拶もしない人に、いきなり、これどうしたらいいですかと聞かれても答えるでしょうか?部下からの相談なら、上司の務めとして相談に乗るものの、本当は10ある話が3程度で終わってしまいます。

私のワークショップでもよくお伝えするのですが、営業パーソンはとにかく自分から声をかけろ、自分から挨拶しろ、自分から雑談しかけろということです。それができないと、口を開けて仕事を待っているだけになってしまう。たとえ声をかけたタイミングが悪くても、私であれば、「お忙しいところ声をおかけして申し訳ありませんでした」と。相手にそこまで余裕がなさそうであれば、とりあえず、「すいませんでした」とだけ言います。後でもう一度声をかけると、どんな人も悪気を感じて案外素直に教えてくれます。なので、再び聞きに行けばいいのですが、残念ながら2回目に聞きにいく人はほとんどいません。

このように、スキル、テクニック的にはいろいろあります。相手が忙しそうかどうかを見なくてはいけませんね。ちゃんと観察して、タイミングを見極めることが大事なのです。営業パーソンは、声をかける訓練をしないと、タイミングを見られないのです。営業のテクニックにはきちんと相手の表情を観察して、タイミングを見計らって声をかけるというのがありますし、もう一つテクニカルな話をしますと、いきなり聞いてはいけません。唐突に、「これを教えてくれませんか」、ではなく、「今、ちょっとお声がけしてもいいですか」、「ちょっとお話しいいですか」、とまずうかがうことです。

とにかく、いろいろな人と会おう

仕事の面白さと難しさについて、お聞かせ願えますか?

目標設定をして、達成したらさらに高い壁にチャレンジしていくこと。一つ壁を乗り越えたら、それで満足してしまわないことです。自分はこれできた、よかった、ではなく、また高い壁を目指して欲しい。これを永遠に続けて欲しいのです。それが仕事の難しさだと思います。ですが、それを乗り越えていく中で、自分としての可能性を広げていくことに喜びを見出せるので、楽しさでもあると思います。最初は難しいけれど、やっていく中で自分の力を付けて、次々とどんな壁も乗り越えられるようになるという、そこで成長実感が得られるわけです。

学生さん・若手社会人に向けてアドバイスするとしたらどんなことがありますか?

見聞を広げましょう。いろいろな人に会って、世の中さまざまな人がいると知ってほしいですし、それを知ることによって自分自身がよく見えてきます。周りを知らずして、自分の考えに固執していると、おそらくだんだんと限界が見えてきますよね。でも、いろいろな考え方を知ったうえで、自分の考えはこうだとわかっている場合には、自分がよく見えているはずです。ということは、自分が得意なこと、あるいは自分でなければ、この世の中で果たし得ないことが見えてくると、私は思うのです。そういう自分を深掘りするためにも、いろいろな人の価値観に触れて、いろいろな人に会って欲しいと思います。

村上さんが今後やりたいことは何でしょう?

私が培ってきた営業のヒントなんかを活用して、人に伝えていくことです。できるだけ多くを皆さんにお伝えしたいと思っています。村上の話を聞いて売れるようになりましたとか、業績が伸びましたとか、あるいは本当にお客様に感謝されるようになりましたとか、そういう言葉を、本当にたくさん聞きたいと思っています。

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