『商品企画が上手い人 提案が通らない人』藤井円工さんインタビュー(2)

事業会社でさまざまな企画職をご経験の方にお話を聞く「ClientView」。大手電機メーカーで商品企画に30年以上も携わってこられた藤井円工さんにお話をお聞きする第2回目です。

【聞き手】株式会社シンクジャム:代表|国本智映
商品企画が上手い人提案が通らない人

“自分がやりたい感”がないと、良いアイデアも形にできない

商品企画が上手い人提案が通らない人 藤井円工さん

お書きになられた本の中に社内調整の話がありましたが、そこで最も重要なことは何ですか?

言葉で言うのは簡単ですが、一番は熱意だと思うんです。熱意がないと、いくら良いアイデアであっても多分もたない(形にならない)。あとは最近で言うところの「ロジカルコミュニケーション」、論理的に語れるスキルですね。

ロジカルシンキングとは、またちょっと違うのですか?

ロジカルシンキングが当然ベースにはありますけど、それで伝えるということです。

数値的にきちんと裏付けをもって人に説明したり、言っていることに矛盾がなかったり‥というスキルですか?

そうですね。あとはまあ、責任感。特にいま必要なのは理屈ですね。私の言葉で言ったら“屁理屈”なんですけど(笑)。そこがないと、なかなか社内調整はしにくいでしょうね。

熱意を持って自分事化して、周りにロジカルに伝えられなければ、アイデアは形にならないということですね。

熱意という言葉がいいかどうかわからないのですが、“自分がやりたい感”がないと途中で止まるんですよ。「いやもうデータないから無理や」と。「数字で語ろうとしてもデータないし、これ以上ロジカルに語れないなぁ‥」で止まっちゃうんですよ。しかし、やりたいっていう熱意があれば、自分なりに確からしい仮説は作っていけるんですよ。

数字は嘘をつかないもののだと思われがちですが、切り取り方によって、いかようにもできますよね。

私も本に書いたかな?結局10人にアンケート取って、1人が「絶対欲しい」って言うと、これ10%って数字に変わりますよね。でも嘘や捏造でもないじゃないですか。これを10倍にすると、100人のうち10人。10パーセントっていうのは変わらないですよね。「いま日本の人口は〇〇人で男女とか年齢別に10%で見れば、このぐらいの人数になります」っていう理屈だけは立つ。それを頭の固い人は「いや100人も1,000人もアンケート取れないし‥」っていうところで止まっちゃうんですよ。何人っていうボリュームを作りたいが故に、1,000人も2,000人もアンケート取らなきゃって発想になっちゃうんだけど、僕は10人でいいわけですよ。

現実的にn数をどこまで増やせるか?っていう話になりがちですね。

そっちに行っちゃうじゃないですか。でも、10人の中身がきちんとしてることが大事なわけです。その内1人の「買う」「欲しい」っていう意味合いが取れる方が絶対大事じゃないですか。なんとなく○とかなんとなく△とかでは、1,000人とっても全然意味がないですよね。そこが、マーケティングの一番の肝。n数ではなくて。ロジカルに10%って言えばいいわけですよ。

ローデータをしっかり確認することは、重要ですよね。

私も捻くれているから、例えばある回答が7割〇っていう話になった瞬間に、その3割×の内容聞かせろとか、そっちに関心がいく。「その他」は、なんやねん?っていうところを知りたい。私は、そこがデータを見るうえで大事な視点だと思います。

マーケットイン・プロダクトアウトどちらも大事

マーケットインとプロダクトアウト、どちらに寄りがちですか?

どちらも重要だという認識です。普通マーケットインですよね。だけど、我々メーカーは当然モノづくりをする。最終的には、モノで商売を成り立たせている中では、バランスの問題っていうのが、一番正しいかなと思うので、どっちも大事にしています。プロダクトもちゃんとできないと駄目ですからね。どっちかだけっていうのが一番ダメなんだと思います。マーケットインって言い続けてきたけど、プロダクトアウトのベースがあるから言えることであって、無いところでそんなこと言えないですから。

企業の方によって考え方が違うので、ちょっとお聞きしました。

先ほど私が言った印象的な商品(動くキッチン)も、実はプロダクトが先ですからね。モノができそうだとなり、じゃあどうやって、どういう人に向けて‥というのは全部後付けですから。

ロジカルシンキングが嫌いな人は、マーケター向き

藤井円工さん国本智映さん

著書には「マーケターに向いている人」が定義されていましたが、やはり“新しいものが好きなことは重要なスキルですか?

飽き性で、好奇心がないとダメでしょうね。結局は好奇心なんですよ。子どもって好奇心あるっていうじゃないですか。初めて見るものばかりで、その感覚はすごいものがある。でも、大人になると感動とか衝撃っていうものがだんだん無くなってしまう。

それでも、何かにつけて新しいものに興味が湧くっていう資質を持ってるってことは、マーケターに向いていると思う。また、そういう人は、自分がそういう感覚を持っているということをわかっているんですよ。

だから、自分が普段使わないようなものでも、意識して新しいものを探すということができるんでしょうか?

そうですね。そもそも自分が使うわけではないけど、女性が好きそうなものを探したりしますね。小物とかね。なんかそういう目的でデパート・百貨店に行くのも好きですよ。流行りの食べ物なども、かき氷やらスイーツやら‥みんなを誘って行きますよ。別の言い方で言うとね、マーケターに向いている人っていうのは、ロジカルシンキングが好きではない人。ロジカルの対語としては、エモーショナル(感情的)とかインテュイティブ(直感的)と捉えていただけると良いと思います。

あれ?何か矛盾してませんか?

社内を説得するには、ロジカルシンキングは大事なんですけど、それが好きかどうかで言うと、僕は嫌いです。そんな理屈で物事全て行けるとは思ってないから。説得するためにはいるんだけど、それが好きな人はダメです。マーケターじゃないです。

数字が好きな人とかもいるじゃないですか。だからそういう人はマーケターではないと思います。いや、向いていない。

いろいろな数字を分析することに力点をおくマーケターもいますよね。

スティーブ・ジョブズのように世の中に無いモノを作ったりするような人をマーケターというなら、彼がロジカルシンキングできないとは言わないけど、ロジカルであることが重要とは思わないですよね。ロジカルシンキングが好きな人は、きちんとロジカルに組み立てをしないと気が済まないんですよ。そこから外れたものは嫌うんです。それは考えたら間違ってると判断しがち。だからその中からハミ出たものは絶対出てこないです。

いま新しいものは、ハミ出たものから生まれてきていますよね。 新しいものをやれって言うのであれば、ハミ出たものをやった方がいいんだけど、ロジカルシンキングが好きな人はハミ出せないので、枠の中に“ハマる”んですよ。絶対に失敗はしない。失敗はしないけど、大きく伸びることはない。

だからマーケターに向いてるか向いてないかって言うと、ロジカルシンキングが好きじゃない人の方が合っている。ただ、社内を説得するにはロジカルに伝えようということだけなんです。

『商品企画が上手い人 提案が通らない人』藤井円工さんインタビュー(3)に続く

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