事業会社でさまざまな企画職をご経験の方にお話を聞く「ClientView」。今回は、株式会社ロイヤリティ マーケティングで営業統括グループビジネスデザイン部を動かす森角敦さんにお話をお聞きしました。専業プランナーのみなさん、プランナーを目指す学生さん、多くのマーケターのみなさんの参考になれば幸いです。 【聞き手:株式会社シンクジャム代表|国本智映】
現在はリサーチ・分析コンサルティングに従事
いま、森角さんはどんなお仕事をされているのですか?
現在は、弊社(株式会社ロイヤリティ マーケティング)のデータである「Ponta」のデータを活用し、さまざまな業務を行っています。営業統括グループビジネスデザイン部というところで、基本的に業務として行っているのが、「リサーチ業務」と「分析のコンサルティング」になります。
リサーチ業務というのは、基本的にメーカーや小売企業などから受注するリサーチです。他にも商品開発の受容性や市場のニーズ調査といったところもやっています。
分析に関しては、Pontaを通じた購買データがありますので、キャンペーン分析、販売分析、ターゲットの抽出を兼ねた分析をしたうえで、オウンドメディアでのプロモーション配信を考えたり、SNSを通じたプロモーション配信のセグメント構築をしたりといった、デジタルマーケティング領域を専門的に行っています。
Ponta会員の行動データやリサーチデータをプロモーションや自社の商材開発に活かしているのですね。
はい。あとは「高速セグメント」ということもやっています。Pontaのトランザクションデータといわれる「どこで買ったのか、いつ買ったのか、どの提携社で買ったのか」といったデータから、推計をしていって顧客をセグメントしていくんです。
また、Pontaはリサーチ会員が200万人いますので、その方々の回答結果のデータをベースに、約1億人のPonta会員ではどうか?といったところを推計して、クラスターを充てていくということもしています。通常の方法ですと、人を介して分析していくので、早くて1週間、長ければ2~3週間かかるのですが、機械学習をベースに実施することで、だいたい1日でできるサービスを提供しようかと考えているところです。
200万人ものリサーチ会員がいらっしゃるのであれば、精度の高い推計ができそうです。
はい。リサーチ会員は200万人ですが、Pontaの会員自体は約1億人いますので、一応理論上は、ほぼ日本の人口をカバーできているという状態です。200万人のうち大体10%の人たちにリサーチに回答していただき、20万人の趣味趣向、ファッションだったり、釣りやバイクのアイテムだったり、そういう細かな設問の回答データを集計しています。それをスコア化し、その人たちと同じような行動をしている、同じような属性であるというところをPonta会員全体に推計していくかたちになります。
リサーチから導き出された分析を基に、商品開発も支援されているのですか?
そうです。商品開発に関しては、「価値観マーケティング」というものを開発して、販売しています。リサーチデータをベースに5万人ぐらいの少ない人たちになりますが、価値観に関することを細かくいろいろなことを聞いて、クラスタリング~プロファイリング化~ペルソナをつくり、推計して、約1億人に背番号のようなかたちでクラスターの番号を振っているのです。
今回のプロモーションには、どういう人たちが合うか?この新商品はどういう人たちに向いているのか?というところが見られるようになるわけですね。
現在は、基本的な価値観全体を示す「PERSONA+(ペルソナプラス)」という商品であったり、金融に特化した「+FINANCE(プラスファイナンス)」、保険業界に特化した「プラスインシュアランス」、投資関係は「プラスインベストメント」 であったり、といった特化型のものも作っており、ようやく軌道に乗ってきたかなという感じです。
ペルソナを使った価値観マーケティングのサービスなのですね。軌道に乗せるために、大変だった部分はありますか?
認知度ですね。あと、営業先(クライアント企業先)に「占い」と同じようなものと誤認されてしまうケースもありました。わかりやすい説明用トークスクリプトや資料、事例集を準備したり、ウェビナーを何回も行ったりすることによって、ようやく受け入れられてきたところです。
新しいところでは、不動産関係です。各住宅に住んでいる人たちに関する分析のために、価値観のクラスターをデータとして付与させていただいて、デベロッパー企業の社内ポータルで確認できるように支援しています。このような感じで、最近はいろいろな企業様に活用していただいています。
価値観マーケティングのサービスを出した時は、5万人から得た230設問の回答結果を基に価値観を判別していましたが、その後4設問33個の選択肢をやるだけである程度、価値観クラスターを判別できるサイトも作りました。まず、クライアント企業の担当者様が実際に回答し、納得いただくことで、少しずつこのクラスターのサービス開発が間違っていなかったということを実感しています。
最近は、どの企業でもデータ活用が重要課題です。相当、追い風になっているのではないですか?
そうですね。ですが、今まで使えていたCookieだとか、個人情報の扱い方というのがだいぶシビアになってきていますので、消費者保護の観点からセキュリティ面で対策をしっかりとったうえで、どういう営業アプローチをしていくかが重要になっていると思います。
クリエイター出身のデータアナリスト
森角さんは、新卒時代からデータを扱う仕事をされていたのですか?
私は、マーケティングのベンチャー企業に、はじめての新卒社員として採用されました。

最初に就職した会社は「アルバイト感覚」だった
そこでは、アルバイトでも何でも、使えるものは全部使うという環境でしたね。20人ぐらいの会社だったのですが、アルバイトにクライアントを付けてしまうのです。文章も書いたことないのに編集や企画をさせられるっていうかたちで業務にあたっていました。
音楽情報誌や、結婚情報誌の文章、コラムを書いていました。音楽情報誌の方は、毎月新曲が200枚ぐらい出てくるのですが、そのレビューのディレクションみたいなのをさせてもらっていましたね。
はじめは、ライターさん、ディレクターさんみたいな立ち位置でお仕事に関わっておられたのですね。
私は高校を卒業してからアルバイトばかりしていて、このままだと流石に駄目だと思って、カメラマンになろうと思ったのです。父親がカメラマンだったので。なので、カメラマンになるための勉強をずっとしていて、専門学校も行っていました。でもそこから編集の仕事に就いて、編集だとか企画だとかが面白いと思ったのと、自分でもできるんじゃないかと思うようになりました。
そして、就職後はいろいろなクライアントのお仕事をさせていただきました。それが3年ぐらい続いた後、最後のクライアントだったのが次に行く、食品の宅配サービスを展開する企業だったんです。会社を辞めた後にそちらの企業の方から「遊びに来てよ」っておっしゃっていただいたのですが、伺ったらなぜか偉い方たちがいて、面接が始まったんです。僕は私服で行っていたのに(笑)。そこで、「うち来ない?」と言われて、「バイトならいいですよ」と答えて、26歳からまたアルバイト始めちゃったんです。そこでは、カタログの企画などをさせていただいていたのですが、社員になってほしいと請われて、そのまま社員になりました。
そこでは、企画や毎週のカタログ、あとECサイトにも携わりました。特にカタログは、全部のディレクションをさせてもらいまして、単純にお肉の写真をきれいに撮るというところや、お客様に対してどういうふうな伝え方をしなければいけないかというところを考えていました。他にも、生産の背景を知るために生産者のところによく取材に行っていました。農家の方々とか、畜産業者、水産業者の方々ですね。そこで撮影しながら、取材もさせていただいて、原稿を書くというような仕事を10年ぐらいやっていました。
カタログ制作の中で取材も行かれていたということで、スケジュール的にはかなり大変だったのではないですか?
そうですね。デザイナーやライターなど、もちろんいらっしゃるんですけど、全部企画を立てて、サムネイルを書かなければいけないので大変でした。毎週毎週デザイナーにオリエンテーションしていましたし。
でも、どんどん売上が上がっていった時代でもありましたので、「去年と比べて、何をやることによって、どう売上が上がっていくのか?」とか、「何を売っていくのか?」とか考えながらものが作れて、やりがいは本当にあったと思います。例えば、土用の丑の日は毎年やってくるので、今年はどういうふうにうなぎを売らなければいけないのかを考えたりとか。そういうことがすべて売上に直結するので、売上が下がると社長が飛んでくるというくらいになりました。

1ページずつカタログを完成させていく仕事は、やりがいがあった
仕事を通じて多くのスキルを身につけてきた
売上に直結しているカタログを担当されていたからこそのやりがいですね。10年間そのお仕事をした後はどうされたのですか?
食品宅配サービス会社に入社してから10年経つ中で、親会社が変わっていったんですね。経営者が変わってから、より企業らしい言葉とか、計画の立て方とかを求められたので、すごく勉強になったと思います。年度の単位ごとの大きな経営計画で、商品計画とか、販売計画を立てていくだけでなく、カタログ商品の細かい数字の目標値を立てるということもやるようになりました。経営企画だとか、営業系だとか、いろんなところで数字を結構細かく見るようになったという感じです。
これまで、苦労されたことはありますか?
本当にカメラマンになろうと思っていたので、後になってから仕事で求められる知識の勉強をしたところが大変でした。デザイン学校に行きながら、デザイン会社にもう1回入ったり、Webの学校にもう1回入ったりしながらやっていました。
私が20代ぐらいの時は、ちょうどアナログのカメラからデジタルのカメラに変わる頃で、デジタルのカメラに変わっても、アナログと遜色がないって言われていたんです。ただ、どう見てもデジタルって、あの時はまだ解像度が悪いので、色がきれいに見えなかったのです。ちょっと墨っぽいというか。そこで、印刷会社のレギュレーションを変えていただくためにデザインの勉強もして「Photoshopのところの白は飛んでもいいから、もっと明るくしてください」と伝え方を工夫しました。デザイナーも、クリエイティブ会社も、システム会社もそうなんですが、仕事を進めるうえで相手の専門領域の知識もないといけないなと思っていました。
その他、例えば「なぜ自分たちが作っているカタログは、他社のカタログと比べて、写真のシズル感がないんだろう」と、その時のクリエイティブの方々と話し合ったりして、紙質の問題なのか?デジタル加工の問題なのか?など、いろいろ試行錯誤しました。青に近い紙と、赤に近い紙があって、これは赤に近い紙にして欲しいだとか、そういう細部までやりましたね。
クリエイティブなスキルは社会人になってから、身につけられたのですね。
そうです。ロイヤリティ マーケティングに入社する前は、リサーチや分析をそこまでしていなかったので、今度は新しい分野を学びながら仕事をしています。