『商品企画が上手い人 提案が通らない人』藤井円工さんインタビュー(3)

事業会社でさまざまな企画職をご経験の方にお話を聞く「ClientView」。大手電機メーカーで商品企画に30年以上も携わってこられた藤井円工さんにお話をお聞きする第3回目です。

【聞き手】株式会社シンクジャム:代表|国本智映
商品企画が上手い人提案が通らない人

適材適所を考えたマネジメントがないと、長続きしない

究極の質問かもしれませんが、藤井さんの中でマーケティングとはなんですか?

お困りごと解決。かなと。

誰かが何かで困ってることがあり、それを解決する方法を設けていくというのがマーケティングですか?

もっと大きく言えば、仕事ってそうなんだろうなって、思いますね。いろんな困りごとがあるのですが、それを解決できる何かを提供したりマッチングさせたりして、解決することが商売になり、仕事として成り立つんですよ。

マーケティングの仕事って面白いですか?

マーケティングが、というよりも仕事が面白いと感じる年代なりましたね。さっき言ったように、仕事=問題解決だと思っていますが、問題を問題として捉えるとしんどくなります。問題を課題として捉えると、“その人にとって問題であっても、僕にとって問題じゃない”となるので、若い頃のようにしんどくはなりませんね。

難しさを感じるときは、ありますか?

“難しさ”を感じるのは、自分にとって合わない仕事をしている時なんですよ。ただ、それが自分でよくわからない。何が合っていないかわかれば、もうこの仕事はいいですって言えるんだけど、自分にとって合わないってことがまだわからない時に、それをやっていることに“難しさ”を感じますね。

我々の会社の中にも、適材適所という言葉があって、やっぱり十人十色でそれぞれ得意不得意ありますよね。でも10人いるからその幅が広がるんです。野球9人でやるとか、サッカー11人でやるとかもそうなんだけど。それをちゃんと組織で組み立てさえすれば、「この人はこれしかできない」とか「この人はこれが不得意」とか全然かまわない。それが組織じゃないですか。

適材適所に当てはめていないとやっぱりちぐはぐさが起きるし、本人も能力発揮できないし‥ということは起こりますね。メージャーリーガーの大谷君みたいな二刀流で、どっちもできるって言うのがいいけど、滅多にいませんから。でも結局そういうことを会社が求めてしまうところはあるでしょうね。

得意領域を一生懸命磨いて、そこを強みにすれば良いということですよね?

そう、それがマネジャーの仕事だし面白いところだと思います。「新人だから、これしたらあかん」ってことはないですよね。阪神の佐藤くんはバンバン打っているじゃないですか。ああできないとダメですね。会社は、新入社員でいきなり4番で出させるなんてしないじゃないですか。やったらいいやんっていう話なんですよ。

適材適所とはいうものの、食わず嫌いにならないで、ちょっとでも経験してみないとダメですよね。

最初からハマってればいいのかもしれないですけど、最初が合っていない人はやっぱりいろいろ経験してみないとわかんないし、会社も変えたりするじゃないですか。いくつか経験して比較できるようになって、ようやく「こっちよりは、こっちかな?」みたいなことになるので、“経験を積め”という大切さは、そこにあるのかなと思います。

最初から、やりたいことが決まっていて、そこにたまたま配属されるのは幸せだと思うのですが、そうではない人もたくさんいますよね。

最近の新入社員は「これをやりたいです!」ってハッキリ言う人は多いのですが、逆にそういう人が辞めていくケースも目立ちますね。

結局、求められていることができなくて辞めていくのですか?

結果的には、できないんでしょう。「できない」し、「思ったのと違う」ということを体感するから辞めるようですね。それでも自分でこう組み立ててやっていこうという人もいますけど、どちらかと言えば、実は自分がその仕事に合っていないことがわからなくて、「この会社は私が思ったのと違う」って、周りを全否定することになってしまうんですね。「環境が違う」って思っちゃう。だから環境を変えるために転職してしまう。それは、間違いではないけどでも、ひょっとしたら自分がそういう仕事や環境に合っていない可能性があるよということは、あまり考えていないかもしれません。

合う・合わないは、比較がないと難しいですよね。

だから一旦辞めて、「次の会社行ったけど、また同じやな」という場合、「じゃあ前の会社もそうだったから、今度は私が変わってみよう!」とかっていうことになれば、それはそれでいいことかなと。

マーケターを目指す学生は、実体験で仮説検証を繰り返すこと

マーケターになりたい学生さんから「学生のうちに学んでおくべきことはありますか?」という質問がよくあるのですが、藤井さんならどう答えますか?

最初に話をした妄想もそうなのですが、仮説検証をとにかくやりまくる。おそらく、いろいろ失敗すると思うので、失敗に値しない若いうちに「こういう仮説やこういう妄想でやってみたけど、ダメか‥」みたいな実体験を積むことですね。教科書に書いてないし、絶対自分に残るし。経験ほど強いものはないと思います。

例えば、自分がこの製品のマーケティング担当だったら‥みたいな感じで、仮説を立てて検証してみるとか?

そういうのでもいいですよね。学生2人ぐらいで企業立ち上げて、なんか作って世に出してみてエライことになった‥でもいいんですよ。別にそんな大したことないんだから。でもそういうのを早い時期に経験しているほど、強いものはないかなと思います。学生だから、いま起業しちゃダメなんてないし、小学生でやってあかんってこともないんだけど、ビジネスは会社に入ってからやるもんだみたいな感覚があるようですが、別に商売やったらいいやん、お金借りてでもやったらいいやんってって思いますね。いくらでも後で修正効くから。それを、やってる人とやってない人は、全然違うと思うな。

経験した人は、就職したときに会社という環境を使えるわけなんですよ。その時に、「こんなに人いるの?こんなインフラあるの?こんなにお金使えるの?」っていうことから入ってくはずですよ。やったことがない人からすると、言われたことしかできないじゃないですか?そこは全然違うと思います。

学生のうちに起業する人って、どう思われますか?

どんどんやるべきですね!僕らの時はそういう発想すらなかったし、そういう世の中でもなかったけど、今は小学生の頃から教育やそういう機会や知識を与えていけば、もっと面白くなっていくと思います。今は、ネットでいくらでも情報は取れるから起業もできちゃいますよね。勉強も大事ですが、実体験に勝るものはないと僕は思うし、いきなり起業なんてできないって人は月並みですが、たくさん本を読むことをお勧めします。

本を読まれない方は結構増えてらっしゃるので、私も同じアドバイスを学生さんにします。

私がこう言うようになったのは、ある人から2つのことを教えられたのがキッカケなんです。1つは本を読めば、他人から経験を手に入れられるということ。自分の人生って1回しかないけど、本を読んだら経験はできなくとも「こういう考えで、こうなったんだな」っていうことも薄っぺらいなりにわかる。特に自分とは違う価値観の人の本を読む方が良いですね。全く真逆同士の否定的な意見っていうのも、読んでみたら「ああそういう考え方なんだな」みたいなことがわかりますから。趣味として好きな小説を読むということとは、また違いますね。

ほっといても、小説は読みますよね。

もう一つは、分厚い本とか買って「よし読もう!」ってなったとしても、挫折することがありますよね。そんな時、「それ全部読もうとしてるやろ?」って言われて。「そうじゃなくて、まず目次見るんだ」と。「まず、目次見てなんか見出しで興味ありそうなことを書いてあったら、そこから読めばいい」って言われてね。小説じゃないので最初から読まなくてもいいんですよ。「そこの見出しの百何ページのところだけ読んだってかまへん。でも興味のある所から読むと、次々読みたくなってくる。だからランダムに読んだってかまへんやん」って。それから本を読むのに抵抗がなくなりましたね。

確かに、仕事の本はそういう読み方をしますね。

少なくとも、本を読むときの抵抗感は減ると思いますよ。紙が嫌だったら、電子書籍もありますしね。活字がダメなら、漫画でもいいから、とにかく知識を入れることですね。資格のために本を読むでもいいと思いますよ。

資格取得も、結局は「資格を取る=勉強する・知識が増える」ここが一番大事なんです。「こんなん持ってますよー」って言ったところで、多少役に立つんでしょうけど、大して役に立たないじゃないですか。そこを勘違いしなければ、資格は取ることが目的というよりは、勉強する事を目的にしたらいいと思います。

テクノロジーは進むが、割と物事は回帰する

いま、マーケティングもデジタルが主流になってきていて、今後もさらに変化していくと思いますが、どんな風に変わると考えていますか?

まずは、AIを利用した分析とか根拠づくりっていうのが流行るんでしょうね。瞬時にしていろんな分析ができて、分かりやすい結果が出てくる。そういうものを利用していますっていうコンサル会社が、たぶん出てくる。しかし、全部同じようなものになるんじゃないいかと。問題はそのAIで差が作れるか?ってことになるでしょう。そうなると、結局いま以上に人による差が重視されてくるんじゃないかと考えています。割と物事って回帰してくるので、どちらかに行き始めると、レベルはちょっと変わるんですけど、結局前の話が出て来たりするんですよね

言い方は新しいけど、本質は以前やってたことと同じだね?ということはよくあります。

結局はn値の問題で、少ない方の希少価値が求められたりするので、まずはAIが流行って、一般的にスタンダードになってきたとするなら、やっぱり人っていう話になるんだろうなっていう気がしませんか?

シンギュラリティが予想されていますが、人にしかできないことって残ると思いますか?

そうですね。人が人から受ける影響と、AIから受ける影響がどう違うのかっていうのはちょっとまだわからないので、なんとも言えないですが

今後、藤井さんが個人的にやりたいことはありますか?

最近思うのは、分野は特に商品企画でなくても構わないのですが、コーチングをしたいなと思っています。コーチをした方から「参考になりました」とか「聞いて良かったです」とか、「少し考え方変わりました」という話が出てくると、それは自分の嬉しさに繋がりそうだなと思っています。いま体系立てて話せる状況にはないですけど、ある程度自分の中でも体系が作れて、的確にそのアドバイスができるようになれば良いですね。

お書きになられた本のターゲットは、どのあたりなのでしょう?

どちらかといえば、入社3年目以降、10年目くらいの中堅社員ぐらいでしょうか。ちょうど会社の仕組みもわかって、スキルも身について、自分で仕事を進めることができるようになった人が、ある壁にぶち当たったりするんですよ。仕事が面白くないとかね。そういうふうに感じてる人がいいかなと思います。

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