創造的マーケティングの思考方法|前田英人さんインタビュー(3)

優秀な社会人になるための秘訣は、絶えず考え、体験することにありそうです。

ものを知ることは、絶えず考えること

学生のうちに身につけたいスキル、資格は?

マーケターはInputが大事と申しました。ですので、いろいろな人、物に興味を持ち、いろいろな情報を取得する訓練を意識的にしておいたほうがいいと思います。先にも言いましたが、優秀なプランナーって情報量がすごい。その膨大なInput情報を自身の言葉でOutputできる能力があるので仕事として成立している。同期でプランナーはたくさんいますが、入社時に彼らが天才かと思ったかというとそうでもなく、でも十何年も経つと一部は優秀なプランナーになっている。特徴はよく勉強していて、物を知っている。得た情報を企画書作成なりプレゼンなりでOutputし続けているので、Inputの重要性を理解実践しているイメージ。これは意識すれば誰でもできることだと思います。凡人がそこそこ成功できる良い方法論かと。

例えば、具体的にどういうものですか?

私のような古典マーケターに、CVR最大化のために動画を有効に使い、CTRを上げ、CPOがいくらでROASがいくらです‥みたいな提案があった時、そもそもEC育ちではないし、3文字熟語がわからないので会話として成立しません。なので提案を受けた後、わからなかった言葉を調べて、意味を聞き、自分の理解しやすい言葉に置き換える‥みたいなことをやります。議論を成立させるためには知識が必要で、そのうえで自身の事業に翻訳しないといけない。だから常に新しい情報を持っておき、準備しておきなさいという話だと思います。

でも「常に」って疲れますよね。

そこが習慣化されているかどうかじゃないですかね。習慣って趣味みたいなものなので、その域に達すれば苦にならないと思います。

そもそも考えることが好きな人は、いますね。

いますね。情報感度が高いというか知的好奇心旺盛というか。こういう人は人脈が広いし、いろんな人から情報を得ることが上手です。なので若い人に伝えるならば「コミュ障だと損しますよ」っていうことです。

また英語で、face to faceコミュニケーションができるようにしておいたほうがいい。転職市場において圧倒的に有利です。いまのご時世、無料YouTubeでも有料ですが英語の双方向コミュニティーチャットもある。英語でface to faceコミュニケーションできる人は少なくないですが、ディスカッションできる人は本当に少ない。日本のビジネス現場にいる中国人や韓国人は本当に英語が上手。文法が間違っているとか日本人は気にしますが、外国人は気にしません。新卒の会社にいたアメリカ人上司もたまに文法、間違ってましたよ。意味が分かることが大事なので細かいことは気にしないことです。マーケティング本を読んで専門知識をつけるのも大事ですが、優先順位は英語とコミュ障克服のほうが高いと思います。

ありますね。コトラー読んどけとか?

存在を知っていて、振り返りで辞書として使うのは大事と思いますが、個人的にはNice to haveですね。

スキルとかも、資格とか要らないですか。

例えばTOEIC800点も書類上の価値はありますが、居酒屋で隣にいる外国人と即興で5分話せて、奢ってもらうスキルのほうがレアです。だって結局、仕事は対人コミュニケーションで動くので。

いまの自分が正解だと思えばいい

前田英人様|販促ツール

「どうしたら前田さんみたくなれるか?と聞かれても、私の経験はほとんどが個人的なものなので、そのまま教えられるわけではないですよ」

普段の生活の中で意識している事や行動はありますか?

2つあって、1つ目は健康。オンラインが主になって太ったのと、目がしょぼしょぼし始めて。なので、毎日1万歩歩くようにしてます。またいままで信じてなかったサプリを比較しながら飲んでます。サプリは、モノによっては薬と同じように成分が血中移行し、組織に移行し、それなりの効果がある製品もあるので。単純に心の安定剤程度に思ってましたが、意外にまともな製品もあるな‥と。

2つ目は若手育成です。どうしたら前田さんみたいに…なんて真剣に相談されるけど、私は私、あなたはあなた。今の自分が正解だと思えばいい。私含め他人の経験が普遍的なものだったらいいんですが、応用不可能な個人的なものだと思います。だから自己の経験を部下に語るとき、それが普遍的なものか、個人的なものか分けて伝えるようにしてます。そうでないと「同じようにやったのにできなかった」という呪いにかかりやすいです。私の経験を基に語るよりもコンピテンシーと呼ばれる7-8個が指針としてあるので、それを基に足りているところ足りないところに分けて指導してます。世間の管理者がみんなやっていることですね。

前田さん愛用のサプリ類

一般的に言われるコンピテンシーは、だいたい決まってますよね。

企業によって呼び方は違えど、内容は同じで全網羅されていると思います。完成形ではないでしょうか。そこに個々人の得意不得意、出来ることできないことに分けて、足りないコンピテンシーを愚直に埋めていくしかないと思います。

ユーザーとして使ってみよう

専業プランナーが、クライアント以上に商品を理解するためにはどのようなことが必要だと思いますか?

身銭を切って1ユーザーとして使ってみれば、いろいろ見えてくると思います。使用後に詳しい人、もしいれば関係者に裏側を聞いてみるといいですね。その製品の意図と現実のずれがきっとあるはずで、そういう話は面白いです。個人的には書き込みを見て、次にその製品を扱う広告代理店や現場の開発者、それを売るバイヤーに話を聞きます。SNSで誰かしらとつながってるご時世なので、辿ったらすぐリーチできます。

デジタルマーケは、過去のマーケと考え方や手法がどのように違いますか?

少し視点が違うかもしれないけれど、デジタル×コロナで最も変わったのは、情報入手経路のYouTubeへの移行。今までは報道各社の主義バイアスが入ったTV情報から得ていましたが、今は特定のノンバイアスなYouTuberにリーチできますよね。個人が情報発信できる時代になったのはデジタルマーケの大きな変化だと思います。私の業界でも、新手術手法や薬物有効性など、本来クローズドな学会で発表されるべき情報が医師YouTuberにより発信されている。YouTubeなので問い合わせもできます。PVが何十万あるので、もはや広告媒体。むろん、メーカーが製品に絡めて関与するとステマになりますし、医師法、薬機法、公競規など法令違反リスクがあるので媒体としては見てませんが、このような新たな認知チャネルをどう使うか、は興味ある領域。

メディアの形が個になってきているよっていうことですよね。

そうですね。発信者も個人なら、受け手も個人。それをビジネスにしたのがECですよね。名簿さえ持っていれば「切手代+α」でCRMできちゃうし、動画媒体ならDM送れば済む話。TVのような売上閾値に到達する速度と規模は出ませんが、速度と規模が出れば置き換わります。手法研究が必要な領域です。

体験したことは忘れない

リモートワークで、マーケターの働き方はどう変わってきたと思いますか?

コロナ禍の2年、オンライン下での意思決定や組織マネージメントはできちゃうことが証明され、ビジネスもほぼ影響なしだったので、「オンライン主、オフラインたまに」という感じで進むと思います。当社はWork from Anywhereで、通信環境が担保されていればどこで働いてもいいので、冬は北海道、夏は宮古島も可能です。新たな環境に身を置くと気づきも芽生えるだろうし。不必要な移動や惰性飲み会も減ると思います。face to faceや出張は自由にできるので、人との接触機会を必要に応じて選択すればいいわけです。

現場に行くことでしか得られないものってありますか?

それは人と人との触れ合いみたいな話です。どう考えたって3次元の情報のほうが深いでしょって話ですよね。空気感や雰囲気などsmell of the placeの話ですよ。

メタバースはどうですか?

インプットとしての手法としてオンラインっていうのはあると思います。私の業界では手術の練習などVRでできます。ただ、VRしか経験ない医師に自分の手術を任せられるか、というと感情論ですがまだそのレベルには達していないと思うので、本当にリプレースできるかは技術の進歩次第といったところでしょうか。

実体験に勝るものもないっていうことですよね。

そうですね。VRだと画面上では3Dですが、やはり2Dなので。実体験だとその時の空気感やにおい、温度、周りの人の雰囲気など含め深い情報になる。五感含めた複合記憶って情報量が多いので必然的に深い記憶として残ります。でもメタバースは手順を覚えるなど練習にはいいと思いますよ。YouTubeで旅客機飛ばして上空でエンジン火災起こすけど着陸までもっていく、みたいな動画をよく見ますが、見すぎてボーイング777の着陸手順覚えちゃいました。操作学習にはいい手法ですよね。シミュレーション系はこの数年ですごい進化したので、あと数年でどこまで近づくのか、テック系の方たちのクリエイティビティーを期待してます。

前田さんの共著「新製品・新事業開発の創造的マーケティング」も、ぜひお読みください。
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