推し活とは
「推し」とは、熱狂的に応援する対象のことを指します。
この言葉は、2010年にAKB48の『チームB推し』という曲が発売され、アイドルとファンの関係性を表す言葉として定着。現在では、アイドルだけでなくアニメキャラクターや歴史上の人物、刀剣、仏像など自分が好きで応援するものすべてを「推し」と表現します。
LINEリサーチによる高校生を対象とした「好きな人やキャラクターなどの“推し”」についての調査(2021/6/18~6/21に実施)によると、「いま推しがいる」と答えた割合は79%であると分かりました。こうした「推し」を熱量高く応援する活動を、最近では「推し活」といいます。
推し活による消費
推し活では、積極的に消費行動する人が多いようです。2021年6月に発表された電通GIRL’S GOOD LABとzzz.inc.の共同調査では、「アイドルやアニメなどの『推し』のためなら応援の気持ちで買い物をしてしまうことはありますか?」という質問に対して、73%が【ある】と回答しました。さらに、63.9%が【推しのためなら金額を気にせずに購入する】と回答しています。
全く同じグッズを複数個購入する人も少なくありません。【収益に貢献することで応援している実感を強く持てる】とのこと。単にグッズ自体を手に入れたいだけでなく、「応援しているという実感を得たい」というニーズが、リピート購入につながるのかもしれません。
映画「鬼滅の刃~無限列車編~」が興行収入400億円を突破した背景には、ファンの間で、「煉獄さんを400億の男にする」という共通の目標を掲げ、劇場に何度も足を運んだ人が多数いたといわれています。これはまさしく、応援している実感を得たいという行為そのものと捉えられます。
推し活のマーケティング展開
推し活への熱量が高いファンをターゲットにする企業も増えています。
1|池袋パルコ『推し活しか勝たん』キャンペーン
期間限定(2021/8/3~8/22)で実施した池袋パルコの「推ししか勝たん」キャンペーン。ペンライトフォルダーやうちわケースといった推し活に使えるグッズや、推しのイメージカラーのアイテムなどを取りそろえ、各ショップ店内と池袋パルコ公式SNSにて紹介しました。まさに推し活を応援するイベントとなっています。
リアルでの展開
推しへの愛をぶつける特設メッセージボードが登場。メッセージの内容は、企業が今後の企画・タイアップの参考にします。自分の推しの活躍に貢献できる機会のため、沢山のメッセージが寄せられました。
SNS上での展開
Twitter上では、池袋パルコの公式Twitterが「あなたの推しへの愛を投稿してください!」とツイート。推奨ハッシュタグである「#推し活しか勝たん」「#池袋パルコは推し活を応援しています」がTwitter のトレンドに入りました。

https://ikebukuro.parco.jp/page/oshikatsu/
2|ロート製薬「プロポ プロテイン」×IDOLiSH7コラボ商品
ロート製薬は、女性を中心に支持を集めている2次元アイドルグループの「IDOLiSH7(アイドリッシュセブン)」を商品のアンバサダーに起用しました。これに合わせ『IDOLiSH7×プロポ プロテインコラボセット』(プロテイン1袋とメンバーそれぞれのオリジナルカードが付いた通常セット/プロテイン5袋と全メンバーのカードとA5冊子が付いたコンプリートセット)を発売。
「プロポ プロテイン」がつぶやいたアンバサダー就任についてのツイートには3万件の「いいね」が付き、「IDOLiSH7を起用してくれてありがとう」という感謝のメッセージも寄せられました。そのなかには、好きなメンバーを選んで買えることに感激する声も多かったといいます。商品にカード等の“景品”が付く場合、中身を選べないようランダム形式で販売する企業が多いなか、この商品ではあえて好きなメンバーを選んで買えるようにしました。

推し活マーケティングのポイント
ロート製薬の事例では、中身の“景品”を選べるようにしたことが成功のポイントかもしれません。推し活では、中身の選べない形で商品を販売するブラインド商法は、嫌われる傾向にあるからです。Twitterでは、ブラインド商法に関するネガティブな意見が多くみられます。
例えば、
●オタクはブラインド商法を嫌がっており、ブラインドだと買い控える人をどの界隈でも見るようになった
●3倍くらいの値段でも選択して買える商品のほうがいい
というツイートが散見されるほか、
●オタクは、『楽しい対価』としてならいくらでも課金するが、『搾取されている』と感じるとすぐに引く
というツイートに共感の声が多数寄せられています。
推し活をするファンにとって、金儲け感が出てしまうグッズやコラボは逆効果。コラボの場合、ファンが企業自体にネガティブな印象を持つこともあるでしょう。グッズやキャンペーン施策などのコンテンツ自体に磨きをかけ、企業がファンと一緒に推しを応援する姿勢を見せることが大切です。