すべてを顧客起点で考える|逸見光次郎さんインタビュー(3)

デジタルは仕組みであって、マニュアル作業でのミスを減らし、従業員満足度を上げてくれるツールでもあります。いいサービスを提供できるようになるから、顧客満足度もおのずと上がってくるようです。

外部プランナーに求めること

より良い顧客体験は、どのようにして考えることができますか?

shopifyやBASE等でECを始められますが、お客様から注文を頂いたら、約束通りの納期に出荷しなきゃ駄目なんですよね。注文いっぱい入っちゃったんで、在庫と倉庫作業が追い付かなくって、1週間出荷が遅れますって…あり得ないことですからね。でも、往々にしてそんなことがいま発生してます。ですから、よりよい顧客体験とは、顧客の目線で、顧客起点でスタートしていくだけで、そこを徹底的に考えるしかないわけです。

徹底的に顧客視点に立たないとうまくいきません。

「自分がユーザーだったら」と突き詰めることでしょうか?

まず、それは必要です。会議でも、それぞれがユーザーの立場だったらいろんな視点が出るはずです。それと、マネタイズの観点を横に並べて話し合うことです。

事業会社にいるときは、自社のサービスを使わない人が提案をもってきても、信用しませんでした。「うちのサンプル使った?」「お店見てくれた?」「別に買わなくてもいいから、ECちょっと見てくれた?」って言うと、黙っちゃう人とかいますからね。それじゃあ話を聞いて欲しいと言われても。。。

外部プランナーの正しいコンサルテーションとは?

そもそも正解はないんです。一緒に考えるんです。私の場合は、いろんな会社でいろんなやり方を見てるから、そこにたどり着く手段を、多分いろいろ知ってるだけで、解はチームワークで導き出すというのが、正しいコンサルティングです。その時の共通認識は、常にお客様の目線で考えるということです。

事業会社内部でも、わかっていないことが多い

事業会社側では、しっかり課題を把握できている?

コンサルティングする立場になり、クライアント企業のメンバーと議論しているときのことです。参加するメンバーの方が、既存の業務フローなどをベースに「自社のことはよくわかっています」と、あたかも自社の業務を全部見える化したつもりになっている事がよくあります。「じゃあ、ちょっと業務の流れを追って書いてみましょうか」って言って書き始めると、15分ぐらいで正確な次の業務が言えなくて、止まってしまうんです。

実は、自社の業務フローの詳細がわからない

eコマースの場合、まず「バイヤーはどのタイミングで商談を始めているのですか?」「その商談が終わった後に画像コンテンツとか、いつ入手しているのですか?」「商品マスターはCSVで回っているのですか?」「倉庫の納品タイムは1日何回ですか?」「その伝票のデータは、EDI経由で前日もらったデータなんですか、それとも紙を入力して起票してるんですか、端末で読み取ってるんですか?」って聞くと、説明できないわけです。業務フローが分かっていないのに、何を改善するのか?となりますね。意外と自社のことは分かったつもりになっているケースも多いのです。

自社の現状と顧客のニーズのギャップを把握すべき

「あっ、全然分かってなかった!」って、すぐに改善できちゃうケースもあります。スマホで完了する時代に、過去の成功体験を引きずって考えてしまうベテランの方々の「思い込み」が邪魔していただけなのです。そうした方々は仕事そのものは非常によくわかっていらっしゃるので、市場の変化について説明すると「そうかもしれねえな」と理解をいただく場合もあります。一方で「それでは今までの売り方が間違っていると言うのですか?」という人もいます。抵抗勢力と呼ばれる方々ですね。

業務改善には、抵抗勢力がつきものですか?

それはありますね。「今まで習ったこと、間違ってます?」みたいなことになってしまう。「今までは今までで良かった。でも、お客様が変わってきているので、こっち側も変わらなきゃいけないって言ってるだけで、一言も昔が間違ってるなんて言ってませんよ」ということが伝われば、ハードルが下がります。私のことを「コンサルタントの先生」という体で迎えられると、「何が正解か?」「答えを教えて欲しい」というふうにとられてしまうのかもしれません。最初から正解がわかれば苦労しません。そんな簡単なら中の方々がさっさと気づいて取り組んでいるはずです。だからこそ最初から「一緒に考えましょう」とは言っているのですが。

明確な答えがないものを、いかに確からしいところに近づけるか、ということですか?

ただし、結果として指標は正確に出ますので、全部つなげていく必要があります。売上目標が100億と設定されたら、既存のお客様に買ってもらって達成していくのか、新規のお客様を増やすのか。その割合は7:3なのか、9:1なのか。

既存のお客様が5万人いらっしゃるうちの4万人がもう一つ買ってくれたら?と仮説を立て、過去の購買データを見て、この時期にきっとこれを買ってくれるに違いないと思えば、該当商品をお勧めするとか、新規の客単価や年間の購買金額が、既存の6分の1ぐらいしかない場合、1人でも多くの新規を集めることが得策なのかどうか‥など、いろいろ数字で考えることが必要になります。こうして数字で経営指標と紐づけられた施策であれば、デジタルの話でも経営者はうなずいてくれます

経営者が言いがちな施策はあるのですか?

LTVのデータを見て、「これまで離反したこの顧客を、もう一回、呼び戻そう」とか言われるのが怖いです。その時は「離反客のIDとひも付けて、コールセンターのクレーム開けてみましょう。そうすると何人か大クレームになっていたはずですから、その後経営側で考え直してください」と言いますね。経営者は、なんとなく離反に対策を打てば、戻ってくると思っている方もいらっしゃるのですが、こうして丁寧に段階的にアクションしないと大問題になります。

オムニチャネルの今後

デジタルの道具を使えば買い物が面白くなりますが、働く人サイドの作業をどんどん減らし、楽しく働けるようにすることも同時に意識する。だから、EXが非常に重視されるようになると思います。労働人口が減るのですから当然です。時給にとらわれず、働きたいところで働き続けられて、評価される方が幸せだと思います。適材適所ですね。バックヤード側もそうやって変わっていかないといけないと思います。

良い従業員体験(EX)を提供し、従業員満足度(ES)を上げていかないといけません。

今までのオムニチャネルでは、働く人の環境は語られてこなかった

書店時代、客注取るのが嫌で仕方なかったですね。一般書を発注すると納期がだいたい10日から2週間。お客様には“だいたい”って言えないですよね。本の取次の都合で、注文分で箱が埋まるまで、客注分は出荷されません。一番小さい箱が大体4冊とか、5冊だったかな。これが埋まるまで出荷されないのです。だとしたら、それをデータで見える化し、電子受発注でつなぐのでメーカーの出荷日もデータで返してもらう。

急かしているわけではなく、メーカーや卸の出荷日から入荷日を案内してお客様の不安を解消したい。本来ECであればメールや電話はうっとうしいので、マイページで納期ステータスが確認できるようになればいいということです。こちらが嫌なことは、お客様も嫌です。好きでクレームしているわけではなく、好きで電話かけてきて入荷日を聞いているわけではないやはり、働く環境とお客様の環境と並行して変えていかなければならないです。でなければ顧客利便性だけが優先され、働く人がますます作業が増え、つらくなってしまう。そこに顧客満足など生まれません。

もっとロイヤリティ層のことを考えるべき

モノを売った後も、メンテナンスのサービスなどリテール側がきちんと考えていくことが大切です。もしくは、店に来た時の利便性を上げる。妊婦やシニア専用の駐車場などだけではなく、たくさん買ってくれる人に専用の駐車カードを作り、デジタルで管理すれば誘導する警備員も必要ありません。結果、みんなが満足します。値引・割引とかではないロイヤリティの応え方というのはあります。

例えば、店舗接客をデジタルで置き換えてみる

例えば、コロナ禍で来店客が減り店舗販売が芳しくなく在庫があふれている。そこでライブコマースをやることになったが、店舗の運営とライブコマースと両立させるサポート体制はどうするのか、撮影の場所はどうするのか決まっていない。結果、売上は落ち、販売員は必死でライブコマースをやったが成果が出ず怒られてしまうわけです。これでは頑張っただけ損だと誰もが思ってしまいます。

しかし、働く人の側からも、サービスをつくっていかなければならない。デジタルを活用して販売員の接客する仕組みをどう構築するかです。私は、非対面でレベルの高い接客訓練を受けたコールセンターのメンバーこそ顔出しでライブチャットに登場したらどうかなと思います。きっと人気が出ます

売り方全体の構造を新しく捉え直さなければいけません。食い散らかしたデジタルを整理して、現場に定着させていくこと。従業員体験を改善し、顧客満足につながる事。誰もが顧客の立場に立って社内で考える事。それが評価される事。これらを経営が考えられるようになると良くなっていくと思います。

すべてを顧客起点で考える|逸見光次郎さんインタビュー(4)に続く

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。