近年、「snaq.me」のようなパーソナライズフードや「FUJIMI」のようなパーソナライズサプリなど、さまざまな「パーソナライズ商品」を見かける機会が増えました。中でも、自分だけにマッチした化粧品として注目を集めているのが「パーソナライズ化粧品」。2019年の市場規模は130億円(2015年比3倍)と、急成長中の分野です(富士経済の調査)。
パーソナライズ化粧品には、オンライン診断などによって使う人それぞれのニーズや肌状態、ライフスタイルなどに合わせてカスタマイズされたパックやリップ、シャンプーなどがあります。
AI・IoTが市場拡大を後押し
どうして、いまパーソナライズ化粧品が人気なのでしょう?
Webマーケティングを中心に行う「ワザモノ」が2018年に行った調査によると、「スキンケア化粧品を選ぶ際に最重視しているものは何か」という質問に対し、「肌に合う、使用後に問題が起こらないこと」と回答した人が32.3%、「効果・効能」と回答した人が30.4%、という結果がでています。そもそも、消費者ニーズとして、効果や効能以上に、自分の肌に合う(=パーソナライズされた)化粧品へのニーズが高いと考えて良いでしょう。
そういった背景に加えて、「現在の肌状態を見て何が問題で、今後どのようなお手入れが必要になるのか?」といったことを分析・提示できるAI・IoT技術の発達が、市場拡大を後押ししているかもしれません。
オン・オフでの販路づくり
2つのパーソナライズ化粧品をご紹介しましょう。
1|オンラインのみ
スパーティー(Sparty)社の「ホタル パーソナライズド(HOTARU PERSONALIZED)」は、スマホで撮影した写真をもとに行う肌状態測定と、12項目の設問をもとに約11万通りの肌診断結果から使う人に合った商品を提供する、オンライン完結型のパーソナライズ化粧品サービス。診断によって、季節や体調に合わせたローション化粧水とモイスチャライザー美容乳液が届きます。

(https://hotaru-personalized.com/)
2|オン&オフラインの組み合わせ
オルビス(ORBIS)社が提供する「カクテルグラフィー(cocktail graphy)」も、ホタル パーソナライズドと同様に、肌状態測定と13項目の設問をもとに、数100通りの診断結果から使う人に合った商品を提供する、オンライン型のもの。利用者は、オルビスが独自で開発した「スキンミラー」という測定デバイスを用いて診断を行ないます。

(https://www.orbis.co.jp/cocktailgraphy/)
前述したホタル パーソナライズドの相違点は、サービスをオフラインにも進出させているという点。カクテルグラフィーを実際に試すことができる場として、期間限定で体験型店舗「b8ta」に出店し、顧客との接点を作り出しているのです。
オフラインへの展開メリットは、オンラインでは得られない来店者の行動や会話データを収集できることです。b8taには、スタッフから声をかけられることに抵抗感がある来店者でも気軽に立ち寄ることができるよう、最小限のスタッフしか配置されていません。そのため、来店者は商品の横に設置されたタブレットを用いて、商品を理解します。
このときオルビス側は、「どのような説明がどの程度見られたのか」「どんなことを話しているのか」といったデータをリアルタイムで収集し、その内容をもとに商品を改良したり、マーケティングに活用しているようです。
また、なんとなく興味を持っていたけれど購入に踏み切れない来店者も、気軽に体験することで、商品について詳しい情報を得られる、といったメリットもあります。