車が空を飛ぶ未来はすぐそこに
現在「電動」「自動(操縦)」「垂直離着陸」などの特徴をもつ空飛ぶクルマの開発が盛んに進められています。
空飛ぶクルマはドローンと同様の仕組みで、プロペラが回転した気圧差によって生じる揚力を使って、高度100~250メートルの飛行が可能なものや、EV(電気自動車)にプロペラや自動制御システムを備えたものなど、さまざまな種類が開発されています。

(https://s.response.jp/article/img/2021/08/17/348619/
1660143.html)

(https://techview-research.com/2021/03/04/volocopter-seriesd/)
日本では、2019年6月に閣議決定された「空の移動革命に向けたロードマップ」に基づき、必要な技術開発や安全基準をはじめとする利用制度の整備が進められており、2023年からは、事業者による事業開始が目標に掲げられています。
先行して活躍するドローン
国土交通省や地方自治体では、「自由な空の移動という新たな価値提供」と「都市や地方における社会課題解決」の実現のため、主に人・モノの移動や観光面に注力して、空飛ぶクルマの利活用を検討しています。同様の目的で先行して導入しているドローンの事例をまずご紹介しましょう。
1|空飛ぶ宅急便で買い物支援
長野県伊那市では、少子化・高齢化の影響で物流や交通機能が衰え、日用品などの買い物が困難な高齢者が増えていることが課題になっています。そこで、2020年より市が中心となり、ケーブルテレビで注文したものがドローンで届く買い物サービスを開始しました。月額1,000円でひと月に何回でも利用することができるこのサービスは、2年経過しても地域の人に活用されています。

(https://www.inacity.jp/shisei/inashiseisakusesaku/shinsangyougijutu/dronekatuyou/174kija2021111716.html)
使用されているドローンは、全長1.6mほどで、最大5kgほどの荷物が積載可能。午前11時までに注文を受けた商品は、同日の夕方には自宅まで届けられます。2021年には、配送可能な距離を10kmに伸ばし、利用できる地域も広がりました。
2|ドローンで地域の魅力を上空から発見
兵庫県では、令和元年より「ドローン先行的利活用事業」を開始。自分で小型ドローンを操作し、思い通りの風景を見られるオンラインツアーの実証実験を、株式会社阪急交通社と連携して実施しました。

(https://drone-hyogo.jp/interview/interview-149/)
参加したお客様からは「鳥の目で観光できました」などの声が上がり、観光地の魅力再発見につながったようです。事業化した場合、旅行に行きづらい方も、より手軽に観光地を楽しめるでしょう。
空飛ぶクルマで、災害や交通のリスク回避へ
今後、サービス展開が期待される「空とぶクルマ」の国内事例をご紹介します。
1|地上の渋滞回避のために
株式会社SkyDriveが2020年に公開した最新モデルでは、最高速度40~50㎞/hで、最大飛行時間5~10分を実現しました。今後は、地点間を移動する交通手段であるエアタクシーとしての実用を検討。将来的には、コンビニの駐車場に置けるほどの大きさで、地上も走行できるような機体を目指します。

(https://skydrive2020.com/archives/13866)
SkyDriveのCEOは「中長期的には、今タクシーを利用している人の多くが利用するようになると考えています。なぜなら、eVTOL(空飛ぶクルマ)の自動運転が一般化すればコストがタクシーとほぼ同等でありながら、4~5倍のスピードで飛んでいけるからです。」と発言しており、交通渋滞で困っているアジアの国々への需要も見込めると予測しています。
2|「救急空白地」を救うために
株式会社プロドローンは、救急用のドローンを開発。空飛ぶ救急車としての実用を目指します。搭乗可能人数は1名とコンパクトな機体で、折りたためるため車両積載も可能です。

(https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service
/air_mobility/pdf/005_01_04.pdf)
山間部が多い地域では、救急搬送で片道15分以上かかり、生命を救える可能性が低下するとされる「救急空白地」が課題です。空飛ぶ救急車という新たな移動手段により、救急搬送時間の短縮や搬送中の医療措置の充実などが期待されています。
実装に向けた課題
事業導入への期待が高まる一方で、環境整備面で多くの課題が存在します。「空の移動革命に向けたロードマップ」では、安全性基準や制度の設備だけでなく、社会受容性や環境整備など様々な課題が挙げられています。
環境整備面における課題一覧

まず認知度を高める必要があります。空飛ぶクルマに関する社会受容性アンケート(2020年8月)によると、空飛ぶクルマを知らないと回答した人は67%。さらに、空飛ぶクルマの認知度と受容できる飛行頻度には相関関係がみられ、空飛ぶクルマをよく知っている回答者ほど頻繁な飛行を許容する傾向がありました。
空飛ぶクルマと同様社会受容性が低い「車の自動運転に関するアンケート」(参照元:自動運転の社会受容性を高めるために何が必要だろうか?)によると、自動運転の社会受容性を高めるためには「教育や啓発、広報活動が必要」と答えた人が全体の57%いました。現在空飛ぶクルマに関する報道は、技術開発に関することが中心です。技術面だけでなく、利用者視点に立ち、社会にもたらす利益や安心・安全性、さらに万が一事故が起きた際の責任などを分かりやすく正しく伝えることが求められるでしょう。
また、自動運転の「試乗の機会」については、「触れる機会は重要、おそらく最初は怖いはず。また厳格な安全性の提示も必要」など、重要性を評価する意見が出ています。現在、空飛ぶクルマの試乗は不可能ですが、VRなどによる模擬体験により空飛ぶクルマを広める活動も広がってきています。
空飛ぶクルマの公的な使用を実現させるためには、今から正しい広報活動を積み上げていく必要がありそうです。