病み加工

「原宿系」、「猫系」というように、「〇〇系」という形でファッションや性格を形容することがありますが、「病み系」というキーワードをご存じでしょうか?2019年12月17日(火)~ 12月18日(水)に、TT総研によってLINEリサーチプラットフォームを利用して行われた「現役女子高生の2020年トレンド予測および2019年下半期トレンド」に関する調査において、「病み系」と言われる女子高生たちがブームを牽引していることが明らかになってきました。

「病みカルチャー」今昔

「ピープス女子」というワードが「2020年JKトレンドキーワード」にランクインしたことで話題になっています。「ピープス女子」とは、サブカルストリートファッションブランド「ピープス」のアイテムを取り入れたコーディネートをした女子を指す言葉です。このトレンドの中心に存在するのは、病み系と称される女子高生たち。彼女たちのメイクは、白い肌、赤系リップとアイシャドウが特徴ですが、一方でファッションは黒を基調としたサブカルストリートが主流となっています。

暗めな雰囲気を醸し出すスタイルは、ファッションの領域だけではなく、インスタグラムなどのSNSの画像加工においても人気となっています。一部の病み系女子の間で、「暗め加工」という画像加工が人気になったことから加工がエスカレートし、新たな加工術が出現しました。それが、「病み加工」です。

病み加工とは、写真やイラストをあえて暗い雰囲気にして不健康に見える雰囲気にしたり、いわゆる心が病んだような台詞をつけたりする画像加工のことです。「インスタ映え」といえば、絶景スポットや流行グルメ、ペットとの写真などの要素が頭に浮かびますが、病み加工は、インスタ映えとは全く異なる志向を持っていると言えるでしょう。

病み加工をしたInstagram画像
@muta.2003さんのInstagram投稿画像から
出典 (https://www.instagram.com/muta.2003/)
病み加工をしたInstagram画像
@hina_sutaguram_さんのInstagram投稿画像から
出典 (https://www.instagram.com/hina_sutaguram_/)

このような病みカルチャーは、江崎びす子さんがTwitter上で発信を始めた「メンヘラチャン」から本格的に広まり始めたと考えられます。「メンヘラチャン」は、パステルカラーを基調とし、うさぎや星などのファンシーなイメージを持つ少女のキャラクターですが、しばしば傷や刃物、病院など心の闇や毒っ気を持ったモチーフと併せて描かれることから、「病みかわいい」という評価を得ています。

メンヘラチャン
「メンヘラチャン」公式Twitterから
出典(https://twitter.com/5623V2/status/1261938387574943744/photo/1)

病みカルチャーのこれから

病み系を好む人々が、SNS上で病み加工を施すだけでなく、リアルの世界へ出て来ることで、病みカルチャーの消費が促進される余地がありそうです。例えばアパレルメーカーのACDC RAG。2020年5月21日現在、公式サイトに「病みかわいい特集」を展開しています。このように、病みをモチーフにしたファッションやコスメは最もわかりやすいマーケティング事例の一つとなるでしょう。

病み加工では心が病んだような台詞をつけることがあるため、ダークな雰囲気の作品とのコラボも受容されやすいと推測できます。アニメや漫画とコラボすることで、もともと病み系を知らない人に興味をもってもらえたり、逆に病み系が好きな人にコラボ商品を「使ってみたい」「着てみたい」と思ってもらえれば、アニメや漫画のファンでなくてもコラボ商品を手に取ってもらえたりする可能性があります。ただ、既存ターゲットだけで閉じてしまう商品展開にならないように留意することは必要でしょう。具体的には、商品によって「病み」の程度に差をつけたり、アニメや漫画モチーフの目立たせ方を変えたりして、幅広い層を取り込むことがカギになりそうです。

また、「映えスポット」ならぬ「病みスポット」を取り上げれば話題になり、集客効果が見込めます。例えば雰囲気のある廃墟や、人が少ないゲームセンターやカラオケなどの施設を貸し出したり開放したりすれば、撮影目的の人や穴場好きな人がやってくるかもしれません。「病み展」のようなイベントを開催したり、病みをコンセプトにしたカフェを出したりといったことも考えられます。

共感とマーケティング

今回のキーワードである「病み」は、特に女子高生の間で広がっており、ファッションの領域まで巻き込むブームとなっています。なぜ病みカルチャーはこれほど多くの人に受け入れられているのでしょうか。

病みかわいいの文化を形作ったキャラクターである「メンヘラチャン」作者の江崎びす子さんは、自身のブログで次のように述べています。「人は感情が備わってる以上、心を病まずにはいられない生き物だと思うので『病み』は人間と切っても切れない永遠のテーマだと思ってます。『病みかわいい』がここまで成長したのは『ゆめかわいい』ブームに便乗したところもありますがそもそもは人間が共感しやすい要素を含んでいるからだと私は思ってます。」

今回取り上げたように、病みカルチャーは確かに広まっています。このことを鑑みると、一般的にネガティブとされるテーマにもマーケティングのヒントがありそうです。

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