N1(エヌワン)とは?
N=1、Number=1、つまり「統計的処理」をする人数が一人ということです。統計とはある集団についてその特性を数量的に測って得られる数値なので、実際には統計的処理というのは間違いで、1名の行動や意見、想いなどから仮説を確かめたり、仮説をつくったりするような方法のことを指します。
ちなみに、N数とは調査のサンプルサイズ(sample size)を示します。サンプル数(群数)とサンプルサイズの関係、さらに割り付けという概念も覚えておきましょう。

仮説立案やターゲット心理を確かめるときにN1を使う
量的なデータをはじめ、プランナーの実体験や人から聞いたこと、記事などから仮説を立てるのはとても重要ですが、実際の顧客の行動や心理はどうなのか?を確かめてみる必要があります。通常の案件であれば、ターゲットをしっかりセグメントしたデプスインタビューなどが用いられますが、まずはターゲットにあてはまる人に尋ねてみることが重要です。
しかし、恥ずかしいのか聞けるほど人脈が少ないのか、自分が立てた仮説が覆されてしまうのが面倒なのか、経験的にはキャリアの浅いプランナーほど意外と人に聞かないように見受けられます。「こうかな?」と思ったら、まずはターゲット層に近い人に「どう思う?」と聞くことで、具体的な施策へのヒントが見えてくるはずです。
この時、もう少し具体的な仮説を用意し、自分は何を解決したいか?そのためには誰に聞けばよさそうか?を考えて、ヒアリングシートを用意して聞いてみると、さらに効果的です。その際に、(N=1ではなくなってしまいますが)できれば明確に比較(例:ロイヤル客VS非ロイヤル客など)できるクラスター同士で聞くとさらに使える内容になってくると思います。
ジャーニーマップをN1で作ってみる
ジャーニーマップを考える際に「多分こうじゃないかな?」と考え、最初から実在しないペルソナと呼ばれる顧客像をベースに作ってしまうと、議論のタタキにはなるものの、どこまで議論しても机上の空論に終わり、関与者を説得できる明確な材料がないため、使いものにならないことがよくあります。
それよりも、N1に「どう行動したのか?」「なぜ、その時そう思ったのか?」を具体的にヒアリングし、きちんと行動と心理を1枚の絵として描いたほうが、今後の打ち手に活かせます。さらに、顧客をセグメントして、「まだ1回しか購入したことのない人、複数購入経験者、アドボケーター」などに分けたりして、N2、N3‥と増やしていくことで、より確からしい像(施策に使える顧客像)が見えてくるでしょう。
これまでの経験だと、B2Bマーケティングの企業において企画担当専門職の人が「当社の顧客はこうだろう」と考えたペルソナありきで話を進めてしまい、形だけのジャーニーマップとなってしまうことがよくあります。我々のような専業プランナーには、そういったクライアントが起こしがちな問題をしっかりフォローしてあげることが求められますので、クライアントが考えたことも尊重しつつ、より確からしいものを提示できるように努力すべきです。
お金を払ってでも聞く価値がある
会社の同僚、友人知人、家族、地域住人を探しても、ターゲットと合致するN1がいない場合やB2Bマーケティングのターゲット顧客を調べる場合は、ビザスクやクラウドワークス、などのようなマッチングサービスを使ってみましょう。ネットや教科書などに書かれていない重要なことが、よくわかります。
ビザスクやクラウドワークスなどを活用すると、特に全く知識のない業界のサポートを求められた際に、ピンポイントかつ短時間で必要な業界情報を得ることができ、仮説を立てるのにも非常に役立ちます。案件費用として今後回収できるのであれば、多少のお金を払ってでも聞くべきだと思います。
N1だけで企画は通らない
このように書くと、すべてN1だけで企画を作ってしまおうとする(いわゆる俺理論)ツワモノというか横着モノがいます。しかもその「N1=自分」だったりすることがあり、客観性が欠けることはお構いなしに、「実際に使っているんだからこうあるべき」という理論を振りかざしてきます。
自分自身がクライアントであれば、自身でリスクをとるためそれでも構いませんが。専業プランナーがクライアントに納品するものとしてはとうてい認められません(まず、MECEが感じらないものはクライアントは受け入れてくれません)。俺理論もいいですが、最初の仮説だけにして、できる限りの定量的な裏付けを用意して社内MTGに臨んでください。