多機能ロッカー

近年、ネットショッピングの普及により、物流業界では個人宅への配送が増加しています。その影響を受け、物流センターから個人宅への輸送範囲である「ラストワンマイル」ではあらゆる問題が起こっています。このラストワンマイルの問題に対しJR東日本グループは、「予約、預入、受取、発送」の機能が備わった多機能ロッカーの導入を発表しました。この取り組みは駅を物流拠点にするものであるとして、注目を集めています。

ラストワンマイルの問題

①物流業界の現状

昨今の新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、家にいながら買い物ができるネットショッピングのニーズが高まっています。それに伴い2008年度は約32.1億個だった宅配便の取扱個数は、2021年度には約49.5億個と増加しています。

②ラストワンマイルとは

ラストワンマイルとは最寄りの物流センターから届け先である個人宅までの区間を指します。たとえば、大手のネットショッピング事業者は顧客に近い場所に配送拠点をつくることでラストワンマイルを縮め、翌日配送などのスピーディーなサービスを実現しています。

ネットショッピングの普及により個人宅への荷物の配送が年々増加していることから、この「ラストワンマイル」においてさまざまな問題が起こっています。

③ラストワンマイルが抱えている問題

1つ目は、再配達によりドライバー業務が非効率になっていることです。国土交通省の調査によると、令和3年10月の宅配便の再配達率は約11.9%でした。数年前と比べると在宅時間が増えたことや宅配ボックスの設置の増加により、数値は改善されています。しかし依然として10個の荷物のうち1つは再配達の対象となっており、ドライバー業務がひっ迫する一因となっています。

2つ目は、個人宅への配送はBtoBと比べると貨物量が少なく積載効率が悪いということです。ネットショッピングの普及により個人宅への配送が増大しているので、ますます業務の非効率化が進んでいると考えられます。

ロッカーの多機能化で駅を物流の拠点に

①1台4役のロッカー

このラストワンマイルの問題をうけ、JR東日本グループは預け入れが主な用途のロッカーについて、Webアプリ上での空き状況の検索を充実させる他、「予約、預入、受取、発送」の一台4役の機能を整備するなどロッカーの多機能化を進めることを発表しました。

今後首都圏にて3年間で約1,000台(約30,000口)導入される予定の新型ロッカーには冷蔵機能も搭載される予定で、多様な商品の受け渡しに対応できる環境が整備されます。

②各店舗と連携した商品の受け取り

多機能ロッカーでは、列車荷物輸送「はこビュン」を活用した産地直送の商品の受取が可能になる他に、クリーニングや薬局などとの連携を通じて商品の受け取りを推進しています。  

また、将来的にはエキナカ・駅ビルなどの商品も取り扱うことを想定しています。営業時間外の受け取りが可能となるため、これまで営業時間に間にあわず利用をあきらめていた人でも、商品を購入できるようになります。

今回実現するサービスの概要図

https://www.jreast.co.jp/press/2023/20230509_ho01.pdf

ロッカーの多機能化により駅を物流拠点にするこの取り組みは、個人宅への配送による積載効率の悪さや、再配達によるドライバー業務の負担を軽減することが期待されます。

多機能ロッカーの課題

しかし、多機能ロッカーには課題もあります。多機能ロッカーは無人での荷物の取り扱いとなることから異常事態への対応を即座に行いづらいため、常に安定した稼働が要求されます。  

特に多機能ロッカーには冷蔵機能も備わっているため、冷蔵庫内の温度をどのようにモニタリングするのかも重要です。冷蔵庫内の食品が危険に晒されたり、品質を損ねるという起こりうるリスクを予測し、有事の際には即座に対応できる体制を準備しておく必要があります。

安定した稼働を追求し、さらに有事の際の対応を準備しておくことで返品の削減を図るとともに、利用者には商品が高い品質で届くという満足度の向上にもつなげられるでしょう。

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