効果的な広告クリエイティブのつくり方

  1. 広告クリエイティブの考え方
  2. 広告クリエイティブ作成で押さえるべき3つのポイント
  3. 2024年 広告に求められる「体験価値」

現在の広告市場では、ソーシャルメディアをはじめとしてデジタル広告需要が年々高まっており、私たちが目にする広告も多種多様になってきています。

そのような中で、人の目に留まる、態度変容に繋がる広告を作るのは簡単なことではありません。そのようなマーケティング効果を発揮する広告の共通点として、クリエイティブになんらかの意味/意図が含まれていることが挙げられます。

優れたクリエイティブの例として、スバルの「Your story with あなたとクルマの物語」というテーマのTVCMがあります。こちらは、車の性能ではなく人生における車の立ち位置にフォーカスした内容で、金曜ロードSHOW!のCM枠で放送されていました。その理由として「毎週放送される映画により視聴者が変わるため、広い層にブランドを認知してもらえる」、「映画仕立てのストーリーで視聴者との距離を縮め、本編と切り離さない自然な流れを作った」と製作者サイドが言及しています。

このように、クリエイティブは「その商品やサービスをどう見せたいのか」といったブランディング要素を背景として多様に変化するものであり、クリエイティブの内容によって広告効果は激変します。

より大きな効果をもたらす広告クリエイティブを生むために、特に押さえるべき3つのポイントをご紹介します。

広告クリエイティブ作成で押さえるべき3つのポイント

  • 「商品特長と利用シーンの整理」

まずは、その商品の特長を考えられるだけ挙げます。

ただし、列挙する際、他社商品との比較によって特長を挙げないことが重要です。他社商品がまだ訴求していない意外な利用シーンなど、同様の他社商品が見出していない商品特長/訴求ポイントが見つかる可能性を秘めているため、まずは広い視野で考えましょう。

先ほどのスバルのCMを例に挙げるとすると、スバル車の特長として「ブレーキの安定感」などの性能面を挙げるだけでなく、「そもそも車って?」という点から考えられています。

このように、クリエイティブを作る際には商品特長を挙げる工程が初めの一歩であり、非常に重要なポイントとなります。

  • 「詳細なターゲット選定」

次に考えるべきは、列挙した各特長/訴求ポイントに関心を持ってくれそうな「ターゲット選定」です。

広告クリエイティブのターゲット層を考える際、Z世代/30代以上の女性など非常にアバウトなセグメントに留まってはいないでしょうか?

仕事で疲れている人なのか、家でお酒を嗜むことが多い人なのか、セグメントしようと思えばいくらでも詳細にできます。商品の訴求ポイントから、どのような人に響きそうなのか、逆にどういった人に利用してもらいたいのかを、年齢/性別/行動/趣味趣向などを詳細に決めていくことが重要です。この点を曖昧にしていると、クリエイティブも実施する施策も曖昧なものとなり、期待する効果が生まれにくくなります。

  • 「ポジショニングによる競争優位性の確立」

最後に考えるべきポイントは、「どの市場の中でどういったポジションをとれそうか」です。

まず、競合調査をする際などに同業他社だけを見てはいないでしょうか? そもそも、飲料メーカーの商品の競合は他飲料メーカーの商品でよいのか?というところから疑うべきです。

同業他社が既に発売している同内容の商品のポジションを奪うには、圧倒的な質の違い以外には価格を下げるほかありません。

訴求ポイントとターゲットから、競合とは別のポジションを見出すことで競争優位性を持ち、その商品にしか出せない切り口をクリエイティブに用いることができ、さらには無駄な価格競争に陥ることもなくなるでしょう。

参考となる優良事例

≪意外なハーゲンダッツの競合とは≫

ハーゲンダッツの競合商品といえば、何が思い浮かぶでしょうか?

同じくコンビニに売られているアイスクリームでしょうか?それともGODIVAのチョコレートでしょうか?

ハーゲンダッツは、商品を「仕事帰りの、頑張った自分へのご褒美」「夜、家で1人まったり食べるもの」と位置づけ、一見関係のなさそうなサントリーのプレミアムモルツを競合と据え、TVCMやデジタル広告を展開しました。

「高級なアイスを食べたくなるのはいつ、どんなとき?」ターゲットの生活に着目し、アイス市場において他商品とは異なるポジションを確立した参考となる事例です。

ハーゲンダッツTVCM「本日、とろけ曜日。」篇、『ショコラ デュオ』本気ショコラ篇より(https://www.youtube.com/@HAAGENDAZSJAPAN/videos

≪YOLUが切り開いた新たな市場ポジション≫

ドラッグストアで目にすることが多く、他社商品とは少々毛色の異なるパッケージのため記憶に残っている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

ヘアケアブランドであるYOLUは、驚きの成分が入っているといった特長はない中、“コロナ禍でのおうち美容の高まり”に目をつけ、夜間美容(ナイトケア)というキーワードで他社が乗り出していないポジションを獲得しました。商品パッケージから広告までそのポジションを存分に使ったクリエイティブとすることで一気に消費者の注目の的となりました。

YORU広告デザイン

このように、

  • 商品で訴求できるポイント、利用シーンの洗い出し
  • 各訴求ポイントに関心を持ちやすいターゲット属性の抽出
  • 訴求ポイント&ターゲットを踏まえた、いまだ他社がタッチしていないポジション選定

この3点を押さえることで、効果的な広告クリエイティブへと変貌していきます。

2024年 広告に求められる「体験価値」

クリエイティブを完成させたのち、広告をより効果の高いものへ進化させるためには「体験価値の付与」が重要です。

体験価値の付与とは

広告というものは通常、自然と目に入る/流れてくる受動的なものですが、目に入ったのち「ん?なにこれ?」「誰かにシェアしたい」と思わせられる広告は、消費者意識である「体験」に紐づき、能動的なものへと変化します。

体験価値の付与として、「広告にスマホをかざすと何かが起きる」「広告を撮影しSNSへ投稿することで参加できるキャンペーン」などの類も、シェアを誘発する仕掛けとして頻繁に活用されます。

2024年は「体験」×「デジタル」

2023年中頃からアフターコロナへ移行し、消費者の意識や行動に「内から外へ」「体験を求める声の高まり」といった、コロナからの跳ね返りと思われる変化が生まれました。

2024年も引き続き、消費者が求める「外、体験」と時流である「デジタル」が融合したコンテンツが好まれる傾向にあり、OOH市場が現在盛り上がっている理由にも同様のことが言えます。

まずはクリエイティブの観点で「どのようなポイントを、どういった人に、どのように捉えてほしいのか(購買してほしいのか)」を検討し、実際に施策に落とし込む際には「気になる、誰かにシェアしたくなる」、このような能動的な体験感をもたらす仕掛けを施すことで、充分に効果的な広告クリエイティブとなっていきます。