SHIRO「みんなの工場」

SHIROが観光施設「みんなの工場」を新設しました

SHIROは、北海道砂川市生まれのコスメティックブランドで、自然環境や社会に配慮したエシカルな取り組みが、たびたび話題となっています。そのSHIROが、創業の地である砂川市に「みんなの工場」をオープンしたことをご存じでしょうか。

「みんなの工場」とは、2023年4月28日に開業された観光のための施設です。コスメの製造工場に、ショップ、カフェ、キッズスペースやラウンジなどを併設した構造をしています。製造工場と他の空間はガラスで仕切られており、SHIROのものづくりをすべて見学できます。オープンして間もなくのゴールデンウィークには、砂川市の人口1.6万人を超える2.2万人の来場を記録した人気の施設です。

本記事では、新設された「みんなの工場」がSHIROブランドにおいてどのような役割を持つのか、マーケティングの視点から分析していきます。

「みんなの工場」のマーケティング的役割とは?

豊かなCX(顧客体験価値)の提供

野村総合研究所によると、CXは『2000年ごろから注目され始めたマーケティングや経営戦略のコンセプトで、商品やサービスの機能・性能・価格といった「合理的な価値」だけでなく、購入するまでの過程・使用する過程・購入後のフォローアップなどの過程における経験「感情的な価値」の訴求を重視するもの』です。企業がCXを重視することで、顧客にとってその商品・サービスの価値は上がり、他社との差別化を図ることができます。

本記事では、顧客が受けとる感情的な価値の定義として、『経験価値マネジメント』の著者であるバーンド・H・シュミットが整理した分類を用います。

野村総合研究所が作成した感情的価値の分類表

https://onl.sc/W6c5KgY) 

「みんなの工場」は、顧客に豊かなCXを提供することでSHIROブランドの価値を高めていると考えます。具体的にどんなサービスが訴求を強化しているのか、シュミットの分類に基づきながら見ていきましょう。

①Sense(感覚的)価値

Sense価値とは、顧客の五感を刺激する経験から生まれます。「みんなの工場」では味覚を伴う「カフェの利用」や、嗅覚・触覚を伴う「香水の手づくり体験」が当てはまるでしょう。「美味しい」「いい匂い」と顧客が思うことで、SHIROブランドへの感情的価値が高まります。

②Feel(情緒的)価値

観光に特化した施設では「楽しかった」「居心地が良かった」と顧客が思うことでFeel価値が高まります。「みんなの工場」では、工場見学・手作り体験・カフェ・キッズスペース・自然豊かな広場がそろい、顧客が自分に合った過ごし方をできる工夫が当てはまるでしょう。

③Think(知的)価値

Think価値を高めるには、顧客の知的好奇心を満たすことが大切です。コスメの製造工場見学は、まさにこの欲求に答えたサービスといえます。製品が自分の手元にやってくるまでの道のりを見学した顧客は、SHIROの製品・ブランドへの愛着を深めるに違いありません。

④Act(行動、ライフスタイル)価値

Act価値とは、顧客が新しい体験をすることで高まります。「みんなの工場」は、通常の順路に沿って進む工場見学とは違い、カフェやショップのすぐ隣にガラス張りの工場がある開かれた構造をしています。特有の構造を持つ施設での見学・観光は、顧客にとって新しい経験となり、Act価値を高めます。

⑤Relate(社会的)価値

Relate価値は、ある集団への帰属意識を持つことで高まるものです。帰属意識とは、顧客が他者と学びや価値観を共有し集団の一員の自覚を持つことで生まれます。このRelate価値を高めるために有用なのは、環境配慮や地域貢献の訴求です。これらの訴求方法は、特に「ソーシャルマーケティング」と呼ばれます。

Relate価値を高める「ソーシャルマーケティング」

株式会社リブ・コンサルティング によると、「ソーシャルマーケティング」とは「企業による社会貢献や非営利目的の運動を認知させ、共感を得ることを目的としたマーケティング手法のことです。企業はソーシャルマーケティングを実施して社会的利益に重きを置いた活動をすることで、消費者からの好感度を高められるため、自社の商品やサービスに興味を持ってもらいやすくなります。」とあります。SHIROは以前から、コスメのパッケージ廃止など、ソーシャルマーケティングに合った活動をしていますが、「みんなの工場」によって、その取り組みをより多様に訴求することが可能になりました。

  • 環境配慮の視点から

「みんなの工場」に設置された広場は人工の芝生でなく、自生している在来種の草から作られています。また、カフェの調理・化粧品の製造過程で出る生ごみを堆肥に利用したり、施設からの排水をきれいにして石狩川へ流す浄化池の設置も行っています。

SHIROはこれまで、コスメのパッケージ廃止などを行い、環境配慮の姿勢を示してきました。「みんなの工場」によって、顧客が製品を購入する前からSHIROの環境配慮をさらに体験できるよう変化したと言えます。

これらの体験で、顧客はよりブランドのエシカルな姿勢に共感できるようになったのではないでしょうか。

  • 地域貢献の視点から

SHIROは、各地域の産業で生まれる廃材をコスメに再利用し、地域貢献を進めてきました。たとえば、日本酒を製造する時に大量に廃棄される酒かすを化粧水やせっけんの原料として使用しています。SHIROは、酒かすをコスメだけでなく「みんなの工場」内のカフェの食材として発展させ、顧客への訴求力を高めています。

カフェでは、酒かすを利用したパスタやパンケーキを食べることができます。また、廃材でなくとも、北海道で育てられた素材を積極的に使用し、地産地消を実現することで地域産業に貢献しています。

カフェを利用することで、顧客はコスメ利用のシーン以外でも、ブランドの地域貢献を体感することが可能になりました。

 

以上のように、「みんなの工場」は豊かなCXを提供し顧客にSHIROブランドの価値を訴求しています。今後も、新しい取り組みを積極的に進めるSHIROから目が離せません。

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