1|自動販売機(以下自販機)のこれまで
自販機は、24時間いつでも飲み物を買えるという点で人気が高まり、1960年以降急速に全国へ拡大しました。ピーク時の設置台数は2000年時点で約560万台にも及ぶほどでした。
しかし、同時期に省スペース、24時間営業のコンビニが普及したことに伴い、徐々に自販機の設置台数は減少していきました(2020年時点で約404万台)。また、サントリーやコカ・コーラなど飲料大手の2020年自販機用飲料の売上高は、コロナ禍で外出自粛が進んだ影響を受け減少しています。
このまま自販機は減少し衰退してしまうのでしょうか?
この状況に新しい一手を打つのが、「不特定多数の人びとや公共の物と接触を避けたい」という時代のニーズに合った“非接触に特化した自販機”です。
2|非接触に特化した自販機
自販機に触らず購入完了
富士電機の「完全非接触自販機」は、自販機のQRコードをスマホで読み取り、専用ページから商品を選択できるというもの。商品購入過程で直接触るのは自分のスマホのみで、自販機のボタンに触れることはありません。もちろんキャッシュレス決済で、支払いはスムーズです。
通常の自販機は取り出し口を自分で開ける必要がありますが、この自販機は取り出し口の開閉すら自動なため、その名の通り「完全非接触」で商品を手にすることができます。

人との接触機会を減らせるスタイル
顔認証で買えるダイドーの「KAO-NE」は、自販機に設置されたタブレットに顔を向けると自動で認証が始まり、パスコードを入力することで本人確認が完了。商品選択後は、クレジットカードで決済されます。購入するためには、あらかじめスマホ等の端末で顔画像とパスコード、クレジットカード情報を登録する必要がありますが、登録してしまえば人混みの中でも身体1つで素早く購入できます。
「KAO-NE」はちょっとした移動が多いオフィスや、異物混入に厳しい製造工場など、財布やスマホをあまり持ち歩かない、持ち歩けない場所でも今後の導入が期待されます。

https://www.dydo.co.jp/jihankiconsul/facerecognition/
3|これからの自販機の形は?
顔認証を行う「KAO-NE」は、マスクを着用しているときでも個人を判別できるような改良を進めています。購入時、最小限の接触で済むこと、マスク着用時も本人認証が問題なくできること、この2点を両立できれば、飲料以外の商材を販売する場所でも自販機の活用が進むかもしれません。
例えば、不特定多数の人が集まる病院。薬局などで処方薬を受け取る場合、顔認証から自動的に個人のデータ照合に進むことで、スムーズな会計や薬の受け取りが可能になります。また、大学病院など大量の患者情報を管理している大型病院の場合、病院内での待ち時間を短縮できるという効果も期待されます。
さらに、病院側にとっては、患者個人に割いていた受付業務にかかる時間の軽減や薬の在庫管理がしやすくなる、といったメリットも挙げられます。非接触の重要性が認知される今だからこそ、人や物に触れない購入スタイルは浸透しやすいといえるでしょう。