クリーンミート

培養技術が生んだ代替肉

ある代替肉(肉の味や食感を再現した食品)が、SDG’s推進のために国内外で話題です。代替肉は、大豆などの植物由来の原料をベースにしたものと、家畜の細胞を取り出して培養したものに大別されます。なかでも、いま注目を浴びているのが後者の「クリーンミート」。クリーンミートは動物の飼育と殺傷をせずに、細胞の培養によって生産されます。2013年、オランダの科学者Mark Post が細胞培養肉を使ったハンバーガーを初めてデモしたことを皮切りに、人々の関心を集め始めました。

社会的合理性の高さが特長

食肉を食べるよりも健康と環境に良いといわれるクリーンミートは、SDG’sの推進にも貢献することから、市場への拡大が急がれています。

健康に良い

・食肉よりも、低脂質でコレステロールフリー
・ウイルスの感染経路を阻止

環境に良い

・動物が排出するメタンなどによる大気汚染防止
・家畜用の餌の生産・水や土地などの環境資源が不要
・培養による大量生産で、人口増加による食糧不足を解決

膨らむ期待

1|高級レストランのメニューへ/ALEPH FARMS(アレフ・ファームズ)

イスラエルのスタートアップ企業ALEPH FARMS社は、3Dプリンターを使った細胞培養肉の生産に成功しました。
ALEPH FARMS社は、2021年までにクリーンミートの薄切りステーキを高級レストランで提供するのを第一の目標としています。価格は50ドルを想定しています。

ALEPH FARMS社が生産した薄切りのステーキ肉
ALEPH FARMS社が生産した薄切りのステーキ肉
出典:https://www.instagram.com/p/B-QLge4nlg4/

2|培養技術の発展へ期待をかけ8億円増資/インテグリカルチャー

クリーンミートを低価格で販売するため、独自開発した培養技術を核に日本で事業を展開するのが、インテグリカルチャー社です。インテグリカルチャー社は、細胞培養テクノロジーの研究開発のための資金として、2019年に事業会社や個人の第三者割当増資により8億円を調達しました。資金提供者には、「日本ハム株式会社」なども名を連ねることから、国内の食品業界からの期待も高いことがうかがえます。

CulNet System
特許取得済みの独自技術プラットフォーム『CulNet System』
出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000034252.html

「食肉レス」による影響

食肉消費の主な対象がクリーンミートに移行し、培養技術が他の商品の生産にも適用されていくと、変化を強いられる業界も出てきます。例えば、家畜の副産物である毛皮や革を取り扱うブランドは、製品やコンセプトまでも変えざるを得ません。家畜の餌生産を主な収入源としている第一次産業も影響を受けるでしょう。
また、培養技術は肉の生産以外にも洋服やコスメに活用され始め、家畜がいなくても代用品を立てられるよう、エシカル消費が推し進められています。
アメリカのModern Meadow(モダン・メドウ)社は、酵母培養を利用して、動物不要のレザーをつくることに成功しました。

モダン・メドウ社の商品ブランド『ZOA』のレザー製品
モダン・メドウ社の商品ブランド『ZOA』のレザー製品 出典:https://www.gizmodo.jp/2017/10/lab-grown-leather-zoa.html

消費拡大の課題

仮に、培養によって生産されたクリーンミートや商品を手軽に購入することが可能になったとしても、人々がそれらを消費するでしょうか。クリーンミートを主要な食肉として消費してもらうためには以下の課題があげられます。

安価に商品を提供すること

現時点で家畜の食肉より高価なクリーンミートの購入希望者は、高所得層よりも低所得層に多いということが明らかになりました。クリーンミートを求めている低所得者層が安価に商品を入手できるのであれば、購買行動へ踏み切ってくれるかもしれません。

消費者の理解を得ること

しかし、実際にクリーンミートを「食べてみたい」という人は、まだ3割弱。「食べても食べなくてもどちらでも良い」人と「食べたくない」人は、合計で約7割以上います。クリーンミートの合理性への理解が進む一方で、実際に「食べてみたい」という人はまだまだ少ないといえるでしょう。また、クリーンミートがSDG’sの観点から倫理的に良いという意見と、細胞を培養する生産方法は不自然だという論争が起きているように、消費者となり得る人たちの態度にはバラつきがあります。

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