観光産業の新しいかたちをつくる「観光DX」とは?最近の取り組み事例を交えてご紹介します

観光DXとは?

観光DXとは、観光産業における業務のデジタル化により効率化を図るだけでなく、デジタルによって収集されるデータの分析・利活用を目指す取り組みのことを指します。観光DXの推進によって、観光産業に関する企業のビジネス戦略の再検討や、新しいビジネスモデルの創出を促進することが期待されています。

現在、観光庁は令和4年9月から『観光DX推進のあり方に関する検討会』という観光DXの実現のための課題解決に向けた検討会を定期的に行っており、今後もDX推進に関係する取り組みは増えていくことが予想されます。

DX推進における観光庁の取り組み

観光DX推進に向けて、観光庁は4つの取り組み指針を設定しています。

旅行者の利便性向上・周遊促進

  • WebやSNS、OTA(オンンライントラベルエージェント)等による情報発信の強化
  • 宿泊、交通、体験等に関連する予約や決済のシームレス化

観光産業の生産性向上

  • PMS(顧客予約管理システム)とCRM(顧客関係管理システム)の導入、統合により業務を効率化
  • 過去のデータや顧客分析から予測を立てるRMS(レベニューマネジメントシステム)を活用して、顧客一人ひとり単位でサービスを提供

観光地経営の高度化

  • 訪問者の行動パターンや消費傾向のデータを分析した結果を基に、観光地経営の戦略を策定
  • インターネット上の情報を管理するDMP(データマネジメントプラットフォーム)の導入による誘客促進、消費拡大

観光デジタル人材の育成・活用

  • 観光地域づくりを牽引する人材のためのリカレント教育の推進

以上の4つの指針となる取り組みを基に観光DXを推進することで、観光客の消費拡大や再来訪の促進といった生産性の向上を図るほか、地域経済における貢献も大きいと考えられており、観光DXによる観光産業全体の最適化への変換が期待されています。

観光DXの運用に関する概要図。観光産業における多方面での活躍が期待できる。
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001736089.pdf

効果的な観光DXの推進事例

観光DXの推進が非常に効果を発揮している事例や、特徴的な事例について紹介します。

実例①|陣屋コネクト

陣屋コネクトとは、神奈川県秦野市の老舗旅館『陣屋』が独自で開発・導入したクラウド型旅館・ホテルシステムです。

陣屋コネクトの特徴として、業務の効率化に寄与できる点が挙げられます。例えば、陣屋コネクトでは予約情報や顧客情報を一元管理できるため、社内での情報共有が容易になります。また、スタッフの作業履歴管理や音声による接客指示をテキスト化して共有できる機能が備わっており、少ないスタッフでも効率的な運営が可能になります。業務の効率化によって人手不足の解消に繋がっていくと考えられます。

その他にも、予約や決済、チェッククイン、チェックアウトがスマートフォンのみで完結するシームレス化やIoT導入による車の入退場検知によって、待機ロス削減の実現とサービスにおける質の向上に貢献しています。

陣屋コネクトによって、「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」すべてにおいて、一貫して充実したサービスを提供することができ、観光体験の全体的な評価、つまりはCX(顧客体験価値)を向上させることができます。

『陣屋』の経営危機を救った陣屋コネクトは、現在600以上の施設で導入されている。
https://www.jinya-connect.com/

実例②|京都観光快適度マップ

京都観光快適度マップは、京都観光オフィシャルサイトの「京都観光Navi」にある機能であり、京都にある観光スポットの混雑状況をリアルタイムで発信しているサービスです。観光スポット周辺に設置されているライブカメラによって“観光快適度”を知ることができるほか、各エリアにおけるおすすめスポットやモデルコースの情報が掲載されています。

混雑状況を発信することによって、観光客の分散を促し、オーバーツーリズム解消に繋がります。また、観光客に対して快適な観光を提供できるとともに、当初の予定にはなかった観光スポットに訪れてもらうことで、新しい魅力を発見してもらう機会を創出できるサービスといえます。

現在は、国内外の観光客の位置情報ビッグデータを活用して快適度の精度向上を図っている。
https://ja.kyoto.travel/comfort/

実例③|LOCAL CRAFT JAPAN

LOCAL CRAFT JAPANは、モノづくりの体験をコンセプトにした「クラフトツーリズム」を観光商材とする観光プランを展開するプロジェクトです。主に観光地として認知されていない地域に根差すモノづくりの魅力を伝え、“クラフト”と“旅”を結びつけることで持続可能な地域経済の支援を行っています。

LOCAL CRAFT JAPANでは、クラフトツーリズムのDX化推進活動の一環として、日本工芸品を販売している海外のセレクトショップにおけるアバター接客技術の開発や触覚VRを活用した日本の工芸品をデジタル体験できるワークショップの開催などが行われています。

体験型のDX推進とモノづくりを通して、地域文化の魅力を伝えている。
https://localcraftjapan.com/

今後の観光DX推進におけるポイント

観光産業の回復に伴い、観光DX推進の重要性は高まっているといえるでしょう。効果的な観光DX推進を実現していくために、留意すべきと考えられるポイントを提示します。

観光地ごとにふさわしいDXの在り方を検討

観光地によって抱える問題は同じではありません。例えば都心部の観光地で大きな成果が表れたDX事例を、地方の観光地が取り入れたからといって、必ずしも成果が得られるとは限りません。各観光地の特性や求められているものを正確に把握した上で、その観光地と様々なDX事例との適合性を検討する必要があると考えられます。

観光客のデジタルリテラシーへの配慮

観光産業は、デジタル化によってCXが改善される側面もありますが、デジタルに慣れていない高齢者の方々や日本語が分からない海外の方にとっては必ずしも利便性を感じられないことがあります。DX推進のポイントの一つとして、デジタルサービスの多言語対応や分かりやすいUIの設計などを考慮していくことが重要だといえるでしょう。

観光産業全体のデジタル化を実現するためには、DX推進が目的化してしまうこと避け、達成したい目的を明確にしていくことが求められます。