ひろがる「家事シェア」
共働き世帯の増加や核家族化に伴い、従来は家庭内の無償労働だった家事労働のあり方の見直しに注目が集まっています。家事をするのに、サービスやツールを利用する「家事シェア」です。家事シェアはいくつかの種類に分けられます。
(1)プロとのシェア
まず、プロとのシェア。洗濯物をクリーニングに出したり、食事を外のお店でとったりすることで家での洗濯や炊事に費やしていた時間が空くうえに、プロによる質の高いサービスが期待できます。一方、あまりに利用が多いと出費がかさんだり、サービスへのアクセスに地域差があったりという課題があります。
(2)外部サービスとのシェア
次に外部サービスとのシェアです。途中まで完成している家事フローを引き継ぐ形で、「中食」や、ミールキットなどが例に挙げられます。コロナの影響で、この形のシェアをする人は増えたのではないでしょうか。仕上げを家庭で行えるので、素早くあたたかい食事を用意することができますが、プロとシェアするよりは手間がかかり、自分で調理するよりは非経済的です。
(3)家電とのシェア
また、家電とシェアするというパターンもあります。すべて手作業だった家事を一部家電に任せることで、効率的な作業ができます。例えば、材料を入れれば自動で調理をしてくれる電気圧力鍋がありますね。このタイプのシェアツールは一度買ってしまえば数年は使えますが、メンテナンスが必要だったり、自分に合ったものがなかなか見つからなかったりするのが難点です。
(4)得意な人とのシェア
そして、得意な人とシェアするという形です。サービスのプラットフォームを通してスタッフとなる人に自宅へ来てもらい、料理や掃除を依頼することができます。自分も家にいる場合は得意な人のハウツーを垣間見ることができますし、家を空ける場合は家事をするはずだった時間を他に充てられます。
「得意な人とシェア」が、いまどき
人気のある2つのサービスをご紹介しましょう。まず「タスカジ」ですが、掃除・洗濯・料理(作り置き含む)・整理収納・チャイルドケア(保護者同席)・ペットケア(室内)などのバリエーションから選んで依頼できます。スタッフを「一回のみ利用」できる機能があり、相性のいい人を探せる仕組みです。
次に「CaSy(カジー)」です。お掃除代行・お料理代行の他に、プロによるハウスクリーニングが依頼できます。2回目以降は指名制度を使えるので、同じスタッフさんに継続的に来てもらうことが可能です。

(https://taskaji.jp/?lang=ja)
いま家事シェアサービスに注目が集まっている理由として、まずサービス依頼側の需要が伸びていることが考えられます。背景には、共働き世帯や単身者が増えたことで時間的・精神的余裕を欲する人も増加していることに加え、少なからずコロナ禍の影響があるでしょう。
例えば在宅勤務中に家事代行を依頼しておくことで、セキュリティ面が安心(スタッフさん一人だけが家にいることがないため)なのに加え、仕事を終えた後の「セカンドシフト」からも解放されます。また、子どもとのおうち時間も増えたことで家事時間が圧迫されるために誰かに手伝って欲しいというニーズや、外食を控える代わりに家で料理してもらいたいというニーズも考えられます。
さらに昨今、社会情勢や経済的な理由により、主婦や飲食業従事者・有資格者がサービス提供者として「副業」するケースも見られるようになりました。家事を行う場所を自宅から他人の家に移せば有償労働になりますが、働き方には柔軟性を持たせられることが「副業」の大きな理由かもしれません。
代行業とマーケティング
代行サービスのジャンルは、家事代行から退職代行(EXIT)や結婚式出席代行・家族代行・観客代行(FAMILY ROMANCE)まで多岐にわたります。

(https://www.taishokudaikou.com/)

(https://family-romance.com/service/wedding.html)
ここまで代行サービスが市場を広げているため、やりたくないことやできないことをアウトソースしたり、シェアしたりするハードルが下がっています。つまり、代行サービスによって時間や余裕をお金で買えるようになり、自分でやらなくてはならないことが減っていると言えるでしょう。では、消費者は手に入れた時間や余裕をどう使うのでしょうか?
いわゆる家事代行は、一人暮らしや育児中世帯、高齢者など幅広い層が利用しています。例えば定期的に掃除を依頼し、子どもとゆっくりする時間を確保したり、休日のまとめ家事を依頼して趣味の時間をとったり。苦手な料理をお願いして食生活を改善する人もいます。ここに、マーケティングのヒントがありそうです。
「○○がしたい」という欲求を呼び起こせれば、消費者はそのための時間・余裕捻出のためにお金を払い、何かを「代行」してもらうかもしれません。カギとなるのは、欲求を引き出す気づきを与える情報提供です。「小さなゆとりで生活が変わる」というようなメッセージを発信するオウンドメディアや代行サービス利用者の感想などが、潜在顧客に対して「効く」のかもしれません。