「公式暴走界隈」の流行
TikTokでは近年、「公式暴走界隈」と呼ばれる企業アカウントの運用スタイルが注目を集めています。企業公式でありながら、一般ユーザーのようにネットミームや流行ネタへ積極的に乗っかることが特徴の投稿は、若年層を中心に支持を獲得しています。
この流れを受けて、大手家電量販店のヤマダデンキも2025年より同様のスタイルでTikTok公式アカウントの運用を開始しました。2026年6月時点でフォロワー数は7.5万人、累計の「いいね」数は230万件を超えており、多くのユーザーから支持を集めています。
「バズる=成功」ではないというTikTok運用の落とし穴
こうしたアカウントの成功を見ると、「TikTokではとにかくバズを狙うべきだ」と考えてしまうかもしれません。しかし、ここに大きな落とし穴があります。実は、「バズる=成功」とは限らないのです。
家電量販店業界のアカウントを分析すると、フォロワーを大きく伸ばしているアカウントと、商品購入を後押ししているアカウントでは、運用スタイルに大きな違いが見られました。
つまり、TikTok運用では「何を成果とするか」によって、取るべきアプローチが変わるのです。そこで今回は、TikTok運用を4つのスタイルに分類し、それぞれの特徴や得意とする成果について見ていきます。
TikTokにはどんな運用スタイルがある?
TikTok公式アカウント 運用スタイルマトリックス
TikTok公式アカウントの運用スタイルは、次の2つの軸で分類できます。
・属人性(高/低)
中の人の人格・人柄が出ているか、顔出しをしているか
・提供価値(エンタメ/情報・実用)
娯楽寄りか、ハウツー・豆知識・商品解説などの実用情報寄りか

それぞれの運用スタイルの概要とメリット・デメリット
タレント社員型(エンタメ × 属人性高)
社員や“中の人”を前面に出し、企業を身近に感じてもらうスタイルです。いわゆる『公式暴走界隈』はこの型に当てはまります。ダンス動画やネットミームへの参加など、ユーザー投稿との距離感が近い点が特徴です。
メリット
一般ユーザーの投稿とのギャップが少なく、視聴されやすい。ユーザーとの距離が近く、親近感を持たれやすい。
デメリット
再現性が低く、出演者のキャラクターに依存する。「ノリ」が主役になるため、モラルや規約の境界線を攻めすぎて炎上するリスクがある。

(三和交通@TAXI会社、Duolingo JAPAN)
クリエイティブ型(エンタメ × 属人性低)
ショートドラマや“あるあるネタ”など、企画力で視聴者を惹きつけるスタイルです。人ではなく、企画の面白さが主役になります。
メリット
ユーザー目線で投稿しているので見やすい。コンテンツの中で自然に商品やサービスを宣伝できる。
デメリット
毎回ネタを考えなければならずネタ切れしやすい。企画の当たり外れが大きい。

(きっと青春の1ページ、NTTドコモ公式アカウント)
専門家型(情報・実用 × 属人性高)
顔の見える店員や担当者が、専門知識を活かして情報提供を行うスタイルです。商品比較やおすすめ紹介を通じて、“相談できる人”というポジションを築きます。
メリット
信頼感を獲得しやすく、購買や来店につながりやすい。
デメリット
知識や経験を活かして説明できる人材が必要。動画の構図がマンネリ化しやすい。

(ファクトリーギア、@cosme美容部員)
カタログ型(情報・実用 × 属人性低)
商品情報を端的に伝えるスタイルです。人は利用シーンの補足として出る程度で、商品がメインです。
メリット
余計な情報が少なく商品についての情報が伝わりやすい。量産しやすい。
デメリット
差別化が難しい。広告感が出てしまい、もともと興味がないと見られない。

(MUJI無印良品、ドン・キホーテ【公式】)
運用スタイルの違いによりユーザーの反応はどう変わる?
家電量販店業界のアカウントをマトリックスで分類
家電量販店業界の公式アカウントを上記のマトリックスで分類し、ユーザーの反応を比較してみました。
タレント社員型|ヤマダデンキ裏アカ【公式】

(ヤマダデンキ裏アカ【公式】)
フォロワー数:75,700人 累計いいね数:230万
※フォロワー数、累計いいね数は2026年6月4日時点の数値です。(以下同様)
濃いキャラクターの店員を活かしたコンテンツやダンスといった投稿が人気を集めています。最もバズった月は1ヶ月で1万人以上のフォロワーを獲得。少ない月でも3,000人以上増加。投稿頻度は週4回程度。運用開始から1年足らずで、7万人以上のフォロワーを獲得しています。ただし、コメント欄では一部批判的な意見も見受けられました。
クリエイティブ型|(ヤマダデンキ裏アカ【公式】、家電とリフォームのエディオン【公式】)

(ヤマダデンキ裏アカ【公式】、家電とリフォームのエディオン【公式】)
ヤマダデンキ裏アカ【公式】、家電とリフォームのエディオン【公式】では、あるある動画やショートドラマといったクリエイティブ型の投稿を部分的に採用する事例が見られます。ただし、これをメインの運用スタイルとしているアカウントは見られませんでした。
専門家型|家電とリフォームのエディオン【公式】

(家電とリフォームのエディオン【公式】)
フォロワー数:107,800人 累計いいね数:74万
商品紹介や家電についての知識を提供する投稿が人気。毎月1,000人程度のフォロワーを安定的に獲得し、投稿頻度は週3回程度。
カタログ型|ビックカメラ【公式】、ヨドバシカメラ【公式】

(ビックカメラ【公式】、ヨドバシカメラ【公式】)
●ビックカメラ【公式】
フォロワー数:46,800人 累計いいね数:27万
自動読み上げ音声を使った商品紹介の投稿が人気。毎月800人程度のフォロワーを獲得。投稿頻度は不定期ながら平均週3回程度。
●ヨドバシカメラ【公式】
フォロワー数:27,300人 累計いいね数:4万
商品紹介の投稿が人気。毎月1,000人程度のフォロワーを獲得。投稿頻度は週3回程度。
「タレント社員型」が最もバズを生み出している
家電量販店業界の公式アカウントに対する反応を比較すると、「タレント社員型」が最もバズを生み出しています。
「専門家型」や「カタログ型」のアカウントが毎月1,000人程度のフォロワーを獲得しているなか、「タレント社員型」であるヤマダデンキ裏アカ【公式】は、多い月で1万人、少ない月で3,000人と短期間で爆発的にフォロワーを増加させています。
ただバズればいいわけではない
一見、「タレント社員型」が最も優れているように見える
一見すると、フォロワー数を大きく伸ばしている「タレント社員型」が最も成功しているように見えます。しかし、売上に実際につながっているかは別の話です。
「カタログ型」は購入を後押しする運用が行われている
「カタログ型」はフォロワーの伸びはあまりないものの、購入を後押しする運用が行われています。
実際に、ビックカメラの公式アカウントでは概要欄にECサイトへの導線を設け、動画を見たユーザーがそのまま商品購入へ進める環境を整えています。また、ヨドバシカメラの公式アカウントではTikTokショップを活用し、視聴から購入までをスムーズにつなげています。
いずれも、購入のきっかけとなる商品紹介を行うことで、フォロワー数以上に購買へ貢献しています。このことから、フォロワーを爆発的に増やすための運用と、購買につなげるための運用は、求められるアプローチが大きく異なることがわかります。
結局、どの運用スタイルを採用すればいいのか?
目的によって、合ったものを選択するべき
TikTok運用において、すべての企業に当てはまる”正解”は存在しません。重要なのは、自社の目的に合った運用スタイルを選択することです。
目的別に、適した運用スタイルを以下の表に整理しました。

「公式暴走界隈」はたしかに注目を集めるスタイルですが、それがすべての企業に適しているわけではありません。
どれだけ投稿しても、スタイルが目的とずれていれば成果は出ません。TikTok運用は“流行っている型を真似すること”ではなく、「誰に、どのような行動を取ってほしいのか」を設計することが重要です。
自社の目的に合ったスタイルを選択することで、TikTokは単なる話題作りではなく、事業成果につながるメディアとして活用できるようになります。









