リテールメディアとは?
リテールメディアとは、小売企業がもっている消費者の購買データ(=ファーストパーティデータ)などを活用し、広告を配信する仕組みのことです。今までの「メーカーが小売企業に商品を置いてもらう」から、「小売企業がメーカーに消費者に関する自社データを提供し、広告を出稿してもらう」へと、関係性の逆転が起きているという点で、リテールメディアは新たなビジネスモデルと言えます。
リテールメディアで使用する広告媒体は、ECサイトや店舗アプリ、SNS、デジタルサイネージなどさまざまです。アメリカではすでにリテールメディア市場が大きな広がりを見せています。

使用されているデジタルサイネージ
(https://diamond-rm.net/overseas/105357/)
リテールメディアが注目されている背景
リテールメディアが注目されている理由のひとつとして、個人情報保護の観点からサードパーティCookieの規制が始まっていることが挙げられます。日本では、2022年4月施行の「改正個人情報保護法」によって、個人データの取得に本人の同意を得ることが義務付けられ、消費者の興味関心や検索履歴などのデータをもとにした広告配信が難しくなってきました。
一方、会員登録をした消費者が商品を購入するなどして、消費者一人ひとりの購入履歴・ニーズをIDベースで管理できる今、消費者の行動データをさらに有効活用したいという企業が増えています。
こうした状況下で、リテールメディアは、小売企業の詳しい顧客情報を含むファーストパーティデータを活用し、より効果的なターゲティングや購買行動分析、販促の効果測定ができる広告として注目されているのです。
リテールメディアのメリット
リテールメディアには、主に「小売業者」「メーカー」「消費者」が関わっており、その三者にメリットがあることが特長です。
まず小売企業にとっては、自社データを活用し、メーカーの協賛を得て広告を打ち出すことができれば、店舗の利益を上げられるという利点があります。
またメーカーは、ターゲティング精度を高められることはもちろん、詳細な顧客データで効果検証がしやすく、PDCAサイクルを回すことができます。
消費者にとっては、リテールメディア広告でより自分の興味関心に沿ったお得な情報を得られる、という点がメリットです。

国内活用事例
こうした背景やメリットを踏まえて、現在国内でもリテールメディアを利用する企業が増えています。
セブンイレブン
セブンイレブンは、自社アプリ内でメーカー商品のバナー広告を配信。アプリユーザーは購入時に会員コードを提示すると、さまざまな特典を得られます。セブンイレブンはこのアプリからの情報をもとに、個人の購買データをIDベースで蓄積し、その購入履歴に応じて広告を配信、さらにその後の購買行動を追うことができます。特に、同アプリでは新商品の情報を届けるとともに、そのクーポンを配信することによって、購買を後押ししています。

アプリトップで会員バーコードやおすすめのクーポンが表示される。

さらに、セブンイレブンは自社顧客への広告配信だけでなく、メーカーに対して顧客の行動データを提供することにも力を入れています。広告配信を受け取ったものの商品を購入しなかった消費者に、その理由についてアンケートを実施し、結果をメーカーに共有。メーカーは購買結果だけでなく、消費者の行動理由も手がかりにしながら、精度の高い効果検証をすることが可能になっています。
ファミリーマート
ファミリーマートは店内にデジタルサイネージ(FamilyMartVision)を設置し、店頭の商品広告のほか、音楽、クイズ、お笑い芸人やインフルエンサーとのコラボなど、多岐にわたるコンテンツを配信しています。
FamilyMartVision最大の特長は、そのコンテンツの豊富さです。通常小売企業は、リテールメディアを販促目的で利用し、メーカー商品の広告を出すことで、店舗売上の増加につなげます。しかしファミリーマートでは、店内で販売していない商品(NETFLIX、Amazon Prime、生命保険など)の広告も配信。これらは、幅広い年齢層の消費者にリーチできるコンビニエンスストアの強みを活かして、広告を認知拡大目的で活用しているという点で、リテールメディアの新たな可能性を見出しています。
また、FamilyMartVisionは都道府県などの「地域別」、周辺環境に応じた「立地別」、来店者の属性に合わせた「ターゲット別」の広告配信も開始しており、より最適化されたコンテンツの表示も可能です。
マツモトキヨシ
大手ドラッグストアチェーンのマツモトキヨシは、メーカーと共同でGoogle広告(Matsukiyo Ads)を配信。マツモトキヨシが主体となって配信を行うことで、同社のポイントカードアプリと情報が連携され、広告を見てから来店・購入までの流れを検証することができます。

広告媒体にはディスプレイ広告、検索広告などもありますが、なかでもYouTube動画広告は、化粧品を実際に使用する様子などを視覚的に訴求できるため、相性がよいとされています。またGoogle広告の配信に合わせて店頭でもPOPを設置し、実際に売上増加の効果が見られています。

(https://www.thinkwithgoogle.com/intl/ja-jp/marketing-strategies/video/matsukiyo-ads/)
そのほか、Matsukiyo Adsは正式販売前の商品改善にも活かされています。花王「ビオレ」は日焼け止め製品のテスト販売をMatsukiyo Adsで訴求しました。その後、広告経由で商品を購入した消費者に対してアンケートを実施し、その内容から商品を改善、正式販売に至りました。この一連のスキームは、既存商品の販促だけでなく、販売前商品の改善にも利用できるというリテールメディアの新しい形を提示しているのではないでしょうか。
リテールメディアの3つの課題
オンライン・オフラインの両方で活用されているリテールメディアですが、その運用には多くの課題が残されています。
課題1|アメリカとの違い
まず1つ目は、リテールメディア市場がすでに成熟しているアメリカと日本では、小売企業の規模に大きな違いがあるということです。みんなのリテールDXによると、デジタルサイネージの活用で知られる「Walmart」を含め、アメリカの大手ハイパーマーケットは4社で98%以上の市場シェアを持っているのに対し、日本の大手4社(イオンリテール、イズミ、イトーヨーカドー、ユニー)はわずか6割程度にとどまっています。
それぞれの小売企業のシェアが小さいと、メーカー側が「広告をここに出そう」という決定がしづらく、広告出稿に至りにくいという問題点があります。ここで、メーカーの意思決定を促すには、小売企業が「自社に広告を出稿すると、どんな利益が得られるか」を明示する必要がありそうです。
課題2|発展途上のリテールメディア
リテールメディアでは、小売企業が広告のプラットフォームとしてその運用を主導する立場にあります。しかしながら、小売業者の中に広告に関する知見がなく、リテールメディアを効果的に運用できない場合があります。そのほか、小売各社で効果検証の方法などが異なると、メーカーは複数企業にわたって広告を出稿しづらいという問題もあります。
これらの問題を解決するには、リテールメディアに知見があり、出稿と効果測定を一括でとりまとめて行ってくれる広告会社などのサポートが必要かもしれません。
課題3|新たな試み
ECサイト広告を使ったリテールメディアの中には、早くも成果報酬型の料金体系を導入している企業もでてきました。
通常は、メーカーがキーワードの検索ボリュームなどを基に、そのキーワードにどれほどの価値があるかを精査し、広告費を設定します。しかし、広告がクリックされた分だけ費用が発生する成果報酬型なら、メーカーは少額から出稿が可能になります。また、広告費を固定としないことで、小売企業はクリックされた分だけ広告収益が得られるので、広告本来の価値を最大限に収益化できます。
上記のようなメリットがある一方で、この成果報酬型では、サイト訪問者と広告のマッチング精度で、クリック数、購入率、広告収入が左右されます。つまり、小売企業が持っているファーストパーティデータの内容とその活用でいかに精度を上げられるかが、この新体系のカギを握っているのです。
リテールメディアの今後
上記3つの課題から見えるのは、消費者に有益な情報を届けるだけでなく、メーカーにとって最適な運用方法を模索することが、今後のリテールメディアには必要だということではないでしょうか。小売企業はまず、メーカーが広告を出稿するにあたって、何がハードルとなり得るのか、それをどうサポートできるのかを考慮しなければなりません。また、広告を配信した後も、次の施策に活かせる有効な顧客データとは何かを見定める必要がありそうです。










