買わないお店「ショールーミングストア」

ショールーミングストアとは

ショールーミングについて

ショールーミング(showrooming)とは、買いものをする際に、実店舗で商品を見たうえで同じ商品をECサイトで購入する消費者行動を指します。

消費者の多くは、サイズや色味が自分の想像している通りか実際に確認してから買いたいと思っています。自宅に持ち帰る面倒臭さがあったり、ECサイトで購入したほうが安い場合にも、ショールーミングは起こりやすいです。

ウェブルーミングとの違い

ショールーミングと対照的な消費者行動をウェブルーミング(webrooming)と言います。ウェブルーミングとは、欲しい商品の口コミや価格などの情報をネット上で確認し、実店舗で商品を購入する消費者行動を指します。

ウェブルーミングが起こる背景としては、商品が手元に届くまでの時間がかかることや、配送料がかかることが挙げられます。

消費者行動を逆手にとったショールーミングストア

これまで小売店にとって、売り上げにつながらないショールーミングは悪とされてきました。しかし現在では、この消費者行動を逆手にとった「ショールーミングストア」が注目されています。

ショールーミングストアは商品の販売をしておらず、消費者が商品の試着や実物を確認することに特化した店舗です。商品の購入はECサイトやアプリ上で行います。

企業がショールーミングストアを活用する2つの理由

①資源の削減

ショールーミングストアは物流と販売が分かれた販売形態をしています。店舗では多くの在庫を抱えることなく運営できるため、在庫管理にかかる手間や場所、販売に要する人件費などを抑えられます。

②ブランドへの信頼度の向上

ECサイトのみの運営の場合、「サイズや素材感が確認できない」という理由で商品購入に至らないケースがあります。しかし、実際に商品に触れ、自分が欲しているものかどうか確認できる場を設けることで購入につなげることができます。

さらに、購入前に品質を確認できることは、ブランドに対する信頼感を高めることにも貢献するでしょう。

ショールーミングストアの事例

SHEIN

衣料品、雑貨、インテリアをECサイトで販売するSHEINは、2022年10月、大阪の難波に期間限定のショールーミングストアを設置しました。初日には、オープン前に約400~500人が列をつくり、大きな話題となりました。

店内にはフィッティングルームが9室あり、ECサイトでの販売では難しかった購入前の試着を可能にしています。

SHEINでは、幅広いジャンルの商品を安価に購入できるというメリットがある一方で、品質を気にする消費者も存在しました。この状況を受けてショールーミングストアを設けることで、実物を確認したいという消費者の要望に応えられました。

高島屋

高島屋は2022年4月、ショールーミングストア「ミーツストア(Meetz STORE)」をオープンしました。ミーツストアでは、国内外のD2Cブランドなど、約60ブランドの商品を取り揃えています。

また、ミーツストアのオンラインサイトでは、「ソーシャルギフト」の機能を搭載しました。ソーシャルギフトとは、LINEなどのSNSを経由することで住所を知らない相手にも贈ることができる機能です。この機能の搭載により気軽にギフトを贈ることができると、若い世代を中心に好評を得ました。

ショールーミングストアが抱える課題

①来場者数

ショールーミングストアでは、来店者が商品と出会う機会を提供しています。そのため来店者数を増やし、商品に触れる人の母数を増やすことが重要な課題となります。来店を促す施策を実施し、来店者数を増やす工夫が必要です。

事例:SHEIN

SHEINではショールーミングストアに7つのフォトブースの設置や、豪華賞品が当たるガチャを用意し来店を促す仕掛けを実施しました。ガチャは来店したら1回無料で回すことができます。さらにフォトブースで撮影した写真をSNSに投稿すると、もう1回無料で回すことができる仕組みになっています。

来店するだけで豪華な商品が当たるガチャに参加することができるという魅力が、来店を促すきっかけになっています。また、SNSへの写真の投稿が告知につながり、さらなる来店者数の増加が期待できます。

②「店舗で商品を見る→ECサイトで購入」間での離脱者が多い

ミーツストアでは来店者のうち購入に至るのは10人に1人と言われており、来店しても購入に至らないという問題が起こっています。背景としては、店で体験して「購入したい」と思っても、クールダウンするタイミングがあると購入に至りづらく離脱してしまうということが考えられます。

そのため、「店舗で商品を見る→ECサイトで購入する」という流れをスムーズに行うことができる仕組みをつくる必要があります。

事例:ヨドバシカメラ

ヨドバシカメラではすべての商品の値札にバーコードを掲載し、スマホで読みとるとヨドバシカメラのサイトに直接アクセスできる仕組みを導入しています。

商品のバーコードを読み込むと、ヨドバシ・ドット・コム内の商品ページにアクセスできる。https://www.yodobashi.com/ec/support/beginner/iphone/index.html

これにより利用者は即座に商品の口コミの確認ができ、そのままネット上で購入できるようになりました。また、自社のサイトに誘導することができるため、他の通販サイトに客が流れるのを防ぐこともできています。

ショールーミングストアの展望

ブランドや商品の認知と、そこからいかに購買につなげるかということは、企業にとって重要な課題です。

現代はさまざまなメディアで情報が拡散されます。その中で商品を体験する場を提供することは、「ブランドイメージ」を齟齬なく伝えることにも有効なのではないでしょうか。

その意味においても、ショールーミングストアのますますの活用が期待されます。