ビジネスの切り口

収益を獲得するためのしくみ(ビジネスモデル)を、目的別に21の切り口でまとめてみました。実現可能性、持続可能性などの観点も紹介していますので、参考にしていただければ幸いです。

1|広告モデル

人が集まっているなら真っ先に考えたいビジネスモデル

企業の宣伝活動を行い、広告費としての収益を得ます。ユーザーに無料でサービスを提供できる一方で、広告が多すぎるとユーザーが離脱するおそれがあります。また、大手広告主に依存するリスクもあり、塩梅のコントロールが難しいビジネスモデルです。例としては、Spotifyの無料プランが挙げられます。

2|レベニューシェア

初期コストを削減したいなら考えたいビジネスモデル

事業を企業間で協同して行い、お互いの合意の上で決めておいた比率によって収益を分配します。利益を独占することはできませんが、初期費用を抑えられるなどのメリットがあります。あべのハルカスでは、チケット発券機や入場ゲートなどの設備とシステムを一体にしたサービスを、パナソニックIS社が提供しました。

3|ライセンシング

強いキャラクターを持っているなら考えたいビジネスモデル

ディズニーに代表されるライセンシングでは、他社に自社ブランド(商標権)や知的財産権を有償で提供することで収益を得ます。ライセンサー側は、ロイヤリティによる収益が見込めます。しかし、ブランド価値を損なう危険もあり、ライセンシー選定に注意が必要です。

4|サブスクリプション

商材の安定供給が見込めるなら考えたいビジネスモデル

映像コンテンツ配信アプリなどでおなじみになったモデルです。ユーザーから定額料金を得る代わりに、継続的にサービスを提供します。将来の利益を試算できますが、収益化するまでに時間がかかります。相応の体力がないと、成功は難しいかもしれません。最近では、エアークローゼットのように、服などの有形物のサブスクリプションモデルも登場しています。

5|成果報酬

初期費用を抑えたい時のビジネスモデル

成果報酬モデルでは、発注者は規定の条件が満たされた時点で受注者に報酬を支払います。依頼側、代行側どちらも損をしないWin-Winの関係になるため、参入のハードルが低いです。事例として、GMOのインターネット広告が挙げられます。

6|部分所有

顧客がシェアすることで夢を叶えられる商材なら考えたいビジネスモデル

航空機・船舶・不動産などの高額資産について、部分的なオーナーシップ権を分割販売します。たとえばエクシブでは、ホテルの宿泊権を分割販売し、1室を14名で共同所有する「タイムシェアリング・システム」を導入しています。自分で別荘を保有する場合と比較して、維持費などが安く済みます。

7|従量課金

継続的な活用が見込める(例:ライフライン事業)なら考えたいビジネスモデル

電話料金の支払いモデルとして知られる従量課金は、一定期間におけるサービスの利用時間や利用量によって支払い額が変わります。支払い額に納得性がありますが、サービスを使わなければ安く済むので、利用控えが懸念されます。多用しても割安に感じられるような仕組みづくりが求められるでしょう。

8|アドオン

ベーシックな部分は差別化できないが、プラスして独自の価値を持っているなら考えたいビジネスモデル

アドオンは、オプションで儲けるシステムです。たとえばLCCは、フライト料金を安くする代わりに、手荷物預けなどの有償オプションをつけてもらうことで収益を上げています。上手に付加価値を生み出せれば、顧客獲得のしやすさから、利益を上げやすいモデルと言えるでしょう。

9|直接的内部相互補助

まず顧客の数を増やしたいなら考えたいビジネスモデル

一部の製品やサービスを無料・安価で売り、他の部分を有償にすることで収益を上げます。富士急ハイランドのように入場料を無料にすれば、新規顧客を獲得しやすくなります(利益は、アトラクションの利用で得る)。一方で、収支のバランスをとるのが難しいといった留意点が挙げられます。

10|三者間市場

広告料収益が見込めるなら考えたいビジネスモデル

第三者が費用(収益)を負担することで、二者が製品やサービスを無料でやりとりできるようになる仕組みです。民放テレビは、広告主が掲載料を払って広告を放送するため、視聴者は無料で番組を観ることができます。広告が気にならなければ、無料で利用できるサービスとして広く認知され、ユーザーを獲得できるでしょう。

11|フリーミアム

収益化まで持つ体力があるなら考えたいビジネスモデル

一部の有料会員からの収益で、無料会員を含むすべてのサービスを維持させるモデルです。ユーザー側の視点では、基本機能は無料で使用できますが、全機能を使用するには有料会員になる必要があります。レシピ検索サイトのCOOKPADはこのモデルを採用しています。利用者数は増えやすいですが、利益を出すまでに時間がかかる点が難しいポイントです。

12|非貨幣市場

とにかく認知度を上げたいなら考えたいビジネスモデル

製品やサービスを、対価を求めずに提供します。無料で使えるWikipediaは非貨幣市場モデルの代表例です。誰でも使用できる一方で、寄付依頼の表示や、信憑性に欠ける情報が掲載されるおそれといった留意点もあります。製品やサービスの存続も課題となるでしょう。

13|直接対価モデル

シンプルに収益を獲得したいなら考えたいビジネスモデル

製品・サービスを提供すると同時に代金を得るシステムです。小売り店などが代表的です。特にコンビニは、経営の自由度が高い反面成果を問われます。ニーズにマッチした製品・サービス展開をすれば、成功しやすいでしょう。

14|マージンミックス

目玉商品があるなら考えたいビジネスモデル

収益は二の次になっても、集客力がある商品で集客し、別の商品で儲けるモデルです。たとえばハンバーガーショップはバーガーで集客し、比較的原価が低いポテトやドリンクで収益を上げています。利益最適化をゴールにし、施策を検討していくことが重要です。

15|マルチセグメント

ファミリー層向けなら考えたいビジネスモデル

価格の異なるセグメントを複数設けて、高価格帯のセグメントで収益を上げます。動物園などの入場料が年齢によって異なるのは、高価格である大人の入場料で儲ける狙いのためです。さまざまなセグメントをターゲットにすることで、利益を最大化できるのがメリットです。

16|マルチチャネル

複数のチャネルを活用できるなら考えたいビジネスモデル

マージンが低いところで露出し、マージンが高いところで儲ける仕組みです。靴の修理で知られるミスターミニットは、駅での素早い修理で認知度を上げています。そして工場での修理など比較的価格の高いサービスで収益を得ています。

17|アディショナルレベニュー

継続利用が前提なら考えたいビジネスモデル

ジレットモデルとも呼ばれ、本体の継続利用に欠かせない消耗品で儲ける仕組みです。たとえば、コーヒーマシンに必要なカートリッジを購入してもらうことで収益を上げます。本体を所有する人がいる限り安定した収益を得られますが、安価な代替品が出てくる可能性もあり、注意が必要です。

18|投げ銭

顧客のエンゲージメントを高めたいなら考えたいビジネスモデル

SHOWROOMなどのライブ配信アプリで採用されているシステムです。製品やサービスに対する対価を定めず、顧客が払いたい金額を払うことで成り立っています。投げ銭をすると、認知してもらえたり、名前を呼んでもらえたりといった報酬が得られ、ファンの心理を突いたモデルと言えます。

19|ウィンドウイング

コンテンツ配信をするなら考えたいビジネスモデル

時期や媒体を変えて、ある作品を何度も公開し、収益を上げるモデルです。たとえば映画ビジネスは、劇場での公開、テレビでの放送、DVD化…などさまざまな形態で作品を公開します。収益機会が増えますが、それぞれの公開において、付加価値を生み出していくことが不可欠となります。

20|カスタマーロイヤルティ

顧客と継続的に優良な関係を構築したいなら考えたいビジネスモデル

製品やサービスの継続利用を促すために、購入金額などに応じて待遇を変える手法です。リピート率が上がるというメリットがありますが、顧客を囲い込むまでの印象形成などにコストがかかる点は注意が必要です。事例としては、マイレージサービスが挙げられます。

21|ピラミッド型

価格別のプランを用意できるなら考えたいビジネスモデル

ユーザーを囲い込み、高価格帯へ移行させることで収益を得ます。携帯キャリアは数種類の料金プランのうち低価格帯で顧客を獲得し、高価格帯で儲けます。一度契約すれば離脱のリスクは少ないものの、競合が安価なプランを打ち出してきた場合には要注意です。  


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