なぜ今、大手企業は「オリジナルコンテンツ」に挑むのか?
ファミマやJR東日本が挑む「オリジナル番組」
街を歩けば、いたるところで企業のオリジナル番組に出会う時代になりました。
ファミリーマートの『ファミマTV』、JR東日本の『TRAIN TV』、マクドナルドの『ミュージックバリュー』など、みなさんも一度は目や耳にされたことがあるのではないでしょうか。今や多くの企業が店舗や電車の車内を「自社メディア」として活用し、独自の番組や音声コンテンツを発信しています。
お買い物中や移動中といった日常のふとした瞬間に、こうしたエンタメ性の高い番組が流れているのは、今や私たちにとってすっかりお馴染みの光景になりつつあります。

【ファミリーマート「ファミマTV」(上段左)、JR東日本「TRAIN TV」(上段右)
ウエルシア薬局「MUSIC WELCIA」(下段左)、ダイソー「3時のヒロインプチプラに恋してる」(下段中央)
マクドナルド「ミュージックバリュー」(下段右)】
オリジナルコンテンツは売上増加に効果あり!
企業がこれほどまでに独自のメディア運営に力を入れるのは、一体なぜなのでしょうか。単なるファンサービスに留まらない、明確な狙いがあるはずです。ここからは、それぞれの効果について定量的なデータを見ていきます。
実績①:JR東日本『TRAIN TV』
広告中心だった編成を刷新し、全体の6割強を番組コンテンツに充てる「番組中心」の編成へとシフトしました。多様なジャンルのオリジナル番組を放映するようになったことで、広告売上は前年同期比120%超を達成しました。

実績②:ウエルシア薬局『MUSIC WELCIA』
オリジナルコンテンツの中で、薬局内で取り扱いのある商品のCMを放送する形式を取り入れ、CM放送ありの時間帯とCM放送なしの時間帯の対象商品売上金額や点数を比較した結果、以下の通り顕著な売上増加が確認されました。
- 対象ブランド「単体」: 売上金額 102%~117%に増加 / 売上点数 103%~123%に増加
- 対象ブランド「全体」: 売上金額 103%に増加 / 売上点数 103.1%に増加

実績③:ファミリーマート『ファミマTV』
店舗に商品を置いている企業の広告案件では、出稿企業の8割が売上増加を記録しています。中には「ファミマTV」で宣伝したことにより、対象商品の売上が40%以上も増加した事例もあります。
また、オリジナルコンテンツ放映後、視聴者の約4割が「ファミリーマートで商品を見た」「ファミリーマートで実際に商品を購入した」などの具体的なアクションを起こしています。

画像はファミマTV データライブラリより(https://gate-one.co.jp/datalibrary/ad_data/)
このような事例から、オリジナルコンテンツは売上に寄与していることが分かります。
では、なぜオリジナルコンテンツはこれほどまでに売上や広告に効果をもたらすのでしょうか。
オリジナルコンテンツが売上につながる”表と裏”2つの理由
オリジナルコンテンツがこれほどまでに高い売上・広告効果をもたらす背景には、店舗での商品販売を促進する「表」の理由と、自社メディアの価値を高めてマネタイズする「裏」の理由の2つが存在します。
【表】購買行動自体を促進できる
従来、店頭での音声放送やデジタルサイネージは、来店客にスルーされやすいという課題を抱えていました。なぜなら、多くの放送が「単なる商品CMのくり返し」になっており、番組としてのメリハリが欠けていたためです。買い物に集中している客にとって、単調な広告の連続は雑音として聞き流されてしまいがちです。
一方で「オリジナルコンテンツ」は、このコミュニケーションの壁を突破します。 番組内の日常トークといった「エンタメとしての文脈」の間に、店舗で販売されている商品のCMやPRコメントを自然な形で挟み込みます。
「好きなタレントの面白いトークを聞いていた流れで、おすすめのシャンプーが紹介される」といった形をとることで、来店客は押し付けがましさを感じることなく、自然と商品に興味を持ち、購買へと心が動くようになります。
【裏】媒体の視認率が高まり、広告を出稿する企業が増加する
質の高いオリジナルエンタメコンテンツを配信することで、来店客や乗客の視線を画面へと惹きつけることができます。
その結果、メディア自体のファンが生まれ、注目度が上がります。媒体としての認知度や注目度が高まれば、当然ながら「そこに広告を出したい」と考える広告主が増え、広告の出稿数や単価も向上します。
これにより、メディア自体の価値が中長期的に高まり続けるという、ビジネスモデルとしての「裏の強み」が生まれるのです。
売上だけではない!オリジナルコンテンツが持つ「2つの可能性」
オリジナルコンテンツの価値は、単なる売上金額や広告収入の増加だけに留まりません。売上増加以外にも、次の2つの効果を企業にもたらします。
① 新規顧客の獲得
魅力的なコンテンツを発信することで、出演しているタレントやアーティストのファンが、そのコンテンツを目当てに店舗を訪れたり、特定の移動手段を選んだりするようになります。
例えば「ファミマTV」では、オリジナルコンテンツ「O’CLOCK」を見るためにファンが来店・待機する現象が発生しました。さらに「TRAIN TV」のグルメ番組では、放映後にSNSで「番組を見るためにわざわざ電車に乗った」という声が寄せられました。
このように、コンテンツそのものが動機となることで、これまでにない新たな顧客層の獲得が見込めます。
② 店舗体験の価値向上
オリジナルコンテンツには普段の「ただ必要な買い物をしに行く」という日常的な行動を「楽しい体験」へとアップデートし、新たな付加価値をつける力があります。
実際、ファミリーマートでは2026年4月に店内サイネージを「ファミマTV」へ改称しました。その背景には、買い物の数分間を「楽しい時間」に変え、コンビニを「エンタメの入り口」にするという狙いが込められています。このように、企業も単なる物販を超えた「楽しい体験」の提供を強く意識し始めています。
こうした顧客体験の向上は、最終的には企業に対するエンゲージメントを高める可能性を秘めています。
オリジナルコンテンツが生み出す「三方良し」の関係
ここまで見てきたように、オリジナルコンテンツは「自社だけが儲かる仕組み」ではありません。関わるステークホルダー全員にメリットが行き渡る、「三方良し」の関係を築くことができます。

従来の「見せられる広告」から、能動的に「見たくなる・聴きたくなるオリジナルコンテンツ」へ。 関わる全員にメリットをもたらし、店舗というリアルな顧客接点を最大限に活かしたこの取り組みは、これからの時代における企業成長の極めて強力な一手となるはずです。









