「Booktok」とは何か?
Booktokとは、SNSアプリ「TikTok」上で本のレビューやレコメンドをするコミュニティのことを指します。2020年ごろから盛んになった行動トレンドであり、「#Booktok」をつけた動画の再生回数は2023年9月の時点で1,817億回を超える人気ぶりを見せています。加えて、Booktokは本の販売数にも大きく貢献しており、WordsRatedの統計によると、2021年におけるアメリカの書籍販売数のうち、約2000万冊の売り上げにBooktokが貢献したといわれており、この数字はその年の世界の総書籍販売数の約2.4%を占めているそうです。
「#Booktok」のタグが付けられている動画には、以下のような多様なバリエーションがあります。
- オススメ本をランキング形式で紹介
- 読後の感想やリアクション動画
- 本の読み方に関する提案 など
動画内での表現もユーザーごとに様々であり、例えば読後の感想動画では本の分厚さを見せつつ「数日で読破したほど面白い!」という形で内容の興味深さを強調する動画や、一切声を出さず本を読んでいるときの自分の心情を大きめなアクションだけで表現するといった動画も存在します。

(https://www.theguardian.com/books/2022/jun/08/lockdown-exploded-tiktok-books-revolution-booktok)
Booktokが流行した理由とは?
コミュニティの規模を拡大し続けているBooktokですが、どのような過程で誕生したムーブメントなのでしょうか?そこには2020年のコロナ流行が深く関わっていると、カルフォルニア州出身のジャーナリスト竹田ダニエル氏は述べています。
BookTokというコミュニティの概念が生まれたのは2020年頃。比較的新しい現象であるにもかかわらず、BookTokはアメリカの出版業界に多大な影響を与えている。あまりの人気ぶりに、2022年にはTikTokが公式の「BookTok読書クラブ」を立ち上げたほど。ロックダウンで時間と暇を持て余した若者たちが、(矛盾していると感じられるかもしれないが)オンラインでの情報摂取から離れ、よりアナログな「本」という媒体に注目し始めた時期と、TikTokで多くの若者たちが「心理的にセーフスペースであると感じられるコミュニティ」を形成し出したタイミングが重なったのだ。
引用:出版業界も注目 アメリカで起きている「BookTok」ムーブメントとは (竹田ダニエル)
コロナ禍による巣ごもり需要の影響で、室内で出来るコンテンツが求められるようになりました。ゲームや楽器演奏など、室内で出来ることはたくさんありますが、意図せず生まれた暇な時間を消費するために読書を始めたという人も多かったことが予想されます。
また、2020年は国内でも「リモート飲み」が流行したように、オンライン上で人とのつながりを感じられるコンテンツに需要が出てきた時期でもありました。そのような状況下で読書を通じて人と繋がれるBooktokというコミュニティは非常に重宝されたということが読み取れます。
日本にBooktok動画はある?
日本では、海外ほどBooktokが世間に浸透しているわけではありませんが、TikTokをはじめとするSNS・動画ストリーミングサービスではおすすめ本の紹介が多く投稿されており、徐々に「#Booktok」が付けられた動画も増えてきています。
また、TikTokで人気となり商品や楽曲がヒットする“TikTok売れ”のひとつとして、本が増刷されるという事例も出てきています。たとえば、小説紹介クリエイターである「けんご」さんがショート動画で紹介したことで増刷された書籍が多数あり、ダ・ヴィンチWebによると、「けんご重版」という言葉まで生まれているそうです。

「胸が締めつけられる物語」など、読後感によって分けられた章立てになっている。
Booktokが生み出したベストセラー作家
Booktok内で話題となった書籍は、TikTokの持つレコメンドシステムによってかなりのスピードで拡散され、あっという間にベストセラーとなった事例が少なくありません。本章では、Booktokによって誕生したベストセラー作家についてご紹介します。
サラ・J・マース
ファンタジー作家であるサラ・J・マースは“Booktokトレンドの象徴”と呼ばれており、Booktokで人気の作家の中で書籍販売数が最も多い作家です。出版した書籍は2024年の上半期で500万部ほど売れています。動画配信サービス「Hulu」で制作中のドラマ『A Court of Thorns and Roses』の脚本の共同執筆なども手掛け、その人気ぶりは衰えることを知りません。
コリーン・フーヴァー
コリーン・フーヴァーは“全米No.1恋愛小説家”と呼ばれており、販売書籍数が全世界で約1000万部を記録しています。また、コリーンの代表作『It Ends with Us』は累計2000万部の販売数を誇り、その販売実績から2023年のTIME誌によって「世界で最も影響力のある100人」にも選ばれています。
コリーン・フーヴァーは元々無名の作家であり、細々と執筆活動に取り組んでいましたが、ブックブロガーの口コミから話題となり、Booktokの誕生に伴って瞬く間に人気作家へと変貌と遂げた人物です。今やBooktokトレンドの中心的な存在といえるでしょう。

(https://news.yahoo.co.jp/articles/69fb7c5a3e1210a392c94f27ac9d69abf2283fac)
ロイド・リチャード
ロイド・リチャードは、弁護士の仕事を続けながら14年かけて『stone maidens』というスリラー推理小説を出版しましたが、11年たっても売り上げはほとんどない状況でした。それを見ていた娘のマーガレットさんが「#Booktok」のタグをつけた動画を投稿し、『stone maidens』の宣伝を開始し「父が14年かけて書いた小説の売上が伸びてくれたらうれしい」と紹介したところ、投稿は一気に拡散され、紹介動画は4000万回以上再生され、980万いいねを獲得しました。 投稿が話題になった後、『stone maidens』はAmazonのスリラー部門で1位を獲得し、ベストセラーになりました。まさに“Booktokドリーム”を掴んだ作家といえるでしょう。
Booktokから参考にできるポイントとは?
UGC施策やコミュニティマーケティング施策とは異なり自然発生的に生まれたBooktokですが、その影響力は大きく、今や海外の書店にはBooktokコーナーが設置されるほど世間に浸透したトピックとなっています。一体、Booktokにはどのような特徴・強みがあるのでしょうか?ポイントとなる要素をいくつかピックアップしてみました。
- ターゲットに響くトピック
Booktokで人気になる小説の特徴として、恋愛小説が多い傾向があります。これはTikTokの主要ユーザーである若い年代層の中でも特に女性を中心に共感を呼び、話題になりやすかったことが予想されます。明確なターゲットに対して確実に響くトピックが存在していることはBooktokの強みの一つといえるでしょう。
- 読書という取り組みやすいコンテンツ
読書が普段の生活に落とし込みやすいコンテンツであったこともBooktokの人気を後押ししていると考えられます。特別な能力を必要とせず、ちょっとした時間でも取り組みやすい読書は、気軽な気持ちでトレンドに乗れる良さがあったのではないでしょうか。
- コミュニティの一員としての実感
活動を盛り上げていくコミュニティの一員であるという実感が得られることもBooktokの魅力です。自分のおすすめ本をレビューすることによって作家を応援・宣伝することに繋がりますし、その作家の書籍がベストセラーになることもあります。自分の活動が作家の人気やコミュニティの拡大に一役買っているという「貢献感」がBooktokの特徴といえる要素だと考えられます。
自然に流行となる行動トレンドには、その時代の情勢にフィットした特徴や強みを持っていることが考えられます。今回のBooktokからもユーザーを響かせるヒントが見つかるかもしれません。ぜひ一度、Booktokを覗いてみてはいかがでしょうか?









