エージェンティックコマース時代に、AIO対策だけでは勝てない理由

AIが買い物を代行する時代、企業に求められるのは「AIO対策」とは限らない

すでにAIを活用した買い物は普及している

近年、AIを買い物で活用する動きが広がっています。博報堂の調査では、買い物でAIを利用している人は24.6%、AIを信頼している人は51.7%にのぼり、「ECサイトのレビュー(48.6%)」を上回りました。

現在は、商品検索や比較、候補の絞り込みなどにAIが使われるケースが多いです。株式会社エクスクリエの調査でも、買い物でAIを活用する場面として「自分に合う商品・サービスの絞り込み」が18.2%で最多となっています。

AI企業によるエージェンティックコマースの実用化が進む

そんななか、生成AIを提供する企業によって実用化に向けた動きが進んでいるのが、商品の比較検討・提案から購入までを自律的に行う「エージェンティックコマース」です。実際、OpenAIは2025年9月、ChatGPT上で商品の選択から購入手続きまでを完結できる「Instant Checkout」の提供を開始しました。

企業はAIO対策の検討を迫られるように

そこで現在注目されているのが、AIO対策です。AIO対策とは、AIが自社の商品情報を正しく理解し、消費者への回答や提案に取り上げやすくなるよう、マーケターが商品情報を整理・最適化することです。つまり、「AIが商品を選ぶ」ことが前提の対策になります。

しかし、エージェンティックコマースの普及後、すべてのマーケティング担当者がAIO対策を行えばよいというわけではありません。では、AIO対策をすべき企業と、ほかの打ち手を考えるべき企業の違いは何でしょうか?本記事では、その違いを解説したうえで、それぞれのケースでエージェンティックコマース時代にマーケターが取るべき施策についてご紹介していきます。

AIがすべての商品を選ぶわけではない

エージェンティックコマースの普及が本格化しているなか、なぜAIO対策はすべての事業者・メーカーにとって有効だとは限らないのでしょうか?それは、商品の特性によって「AIが選ぶ商品」と、「人が選ぶ商品」に分けられるためです。

商品は、次の二つの軸で四つに分類できます。

横軸は、購入時に重視される価値です。機能や価格などの「機能価値」と、楽しさや憧れ、特別感などの「体験価値」に分けられます。

縦軸は、商品の購入頻度と価格帯です。日常的に購入する低価格な「最寄り品」と、比較検討して購入する「買い回り品・専門品」に分けられます。

この四つの領域では、AIの関わり方も、企業が取るべき施策も異なります。

商品の特性によって「AIが商品を選ぶ」場合と「人が商品を選ぶ」場合に分けられる

「人が商品を選ぶ」第一象限|今後もAIの関与は少ない

ハイブランドや高級コスメなど、体験価値の高い買い回り品・専門品では、今後も人が選ぶ場面が中心になると考えられます。

消費者は商品そのものだけでなく、店舗空間や接客、ブランドの世界観を含めて購入を判断するためです。デロイトトーマツの調査では、富裕層は生活必需品をECで購入する一方、ラグジュアリー品では店舗購入を重視する傾向が示されています。

「AIが商品を選ぶ」第二象限|今後はAIが購入を担うように

白物家電やスマートフォンなど、機能や価格を比較して選ぶ商品では、今後AIが商品の比較検討を行うだけでなく、購入までを担うようになると考えられます。

商品情報を客観的に比較しやすい第二象限では、AIに候補として選ばれることが、購入機会に直結するでしょう。

「人が商品を選ぶ」第三象限|今後は初回購入を人が、継続購入をAIが全自動化

日用品や食品など、繰り返し購入しやすい商品では、現状は消費者が店頭やECで必要なときに購入するケースが中心です。矢野経済研究所の調査でも、食品をECで購入した経験がある人の77.3%が、定期購入ではなく都度購入を選んでいます。

エージェンティックコマースの普及後は、初回購入のみ人が商品を選び、その後はAIが在庫や購入履歴をもとに自動で再購入する形が広がると考えられます。

この領域では、AIに新商品を推薦してもらうこと以上に、最初に消費者から選ばれ、継続購入の対象になることが重要です。

「AIが商品を選ぶ」第四象限|今後はAIによる偶発的な出会いが増える

お菓子や飲料など、手頃な価格で楽しさや気分転換を得られる商品では、今後、AIによって偶発的な購買が生まれる可能性があります。

現在は店頭での衝動買いが中心ですが、AIが利用者の嗜好や購買履歴、利用シーンを学習することで、「自分へのご褒美」として、これまで知らなかった商品を提案してもらえるようになるかもしれません。

各象限でエージェンティックコマース普及後に予測される変化は異なる

商品特性によって、エージェンティックコマース普及後に取るべき対策は異なる

ここまで見てきたように、商品を選ぶ主体や、エージェンティックコマースの普及によって生じる変化は、象限ごとに異なります。そのため、すべての商品に一律でAIO対策を適用するのではなく、商品特性とAIの関与度に応じて施策を設計する必要があります。

「AIが商品を選ぶ」買い物では、AIO対策が有効

第二・第四象限のように、AIが商品を選ぶ買い物で有効なのは、AIO対策です。AIに認識され、候補として提示されることが購入機会に直結するためです。

ECサイト上で企業が特に取り組みやすい施策は、口コミへの返信に具体的な情報を盛り込むことです。

口コミは、第三者による評価としてAIが参照しやすい情報です。ただし、企業が口コミの内容を直接コントロールすることはできません。そこで、オーナー返信を通じて、商品名や特徴、利用場面などの事実情報を補足すると、消費者だけでなくAIにも商品の特徴が伝わりやすくなります。

「オフィスカジュアル」「ディナー」「お祝いごと」「キレイめコーデ」など具体的なキーワードを記載することで、
同じシチュエーションで探しているユーザーに提案してもらいやすくなる

「人が商品を選ぶ」買い物では、ブランドづくりと接点づくりが重要

人が商品を選ぶ買い物である第一象限・第三象限では、それぞれやるべき施策が異なります。

第一象限に分類されるハイブランドの買い物では、ブランド価値の向上が重要です。ラグジュアリーブランドでは、独自の世界観や希少性が「いつか手に入れたい」という憧れを生み出し、購買につながるためです。

第三象限では、初回購入につながる接点づくりが重要です。オンラインでは閲覧・購買データを活用した広告、実店舗では小売店アプリやクーポン、売り場での訴求などが考えられます。

mitorizの調査では、日用品の新商品の初回購入は68%が店頭で発生しています。まず店頭で商品を試してもらい、気に入ってもらえれば、その後の継続購入をAIによる自動購入へつなげられるでしょう。

継続購入には、顧客満足度の向上が重要である

AIが購入を代行するようになっても変わらず重要なのは、商品やサービスの品質です。

株式会社ネオマーケティングの調査では、ブランドのファンになった理由として「サービス・商品の品質」が75.3%で最多となっています。AIに選ばれる仕組みを整えても、利用者が満足しなければ継続購入にはつながりません。

加えて、購入後も情報配信や先行案内、会員向け体験などを通じて顧客との関係を維持する必要があります。既存顧客の満足度を高めることは、リピート購入に加え、口コミや紹介による新規顧客の獲得にもつながります。

エージェンティックコマース時代に重要なのは、「誰が選ぶ商品か」を理解し、それに合った施策を行うこと

エージェンティックコマースが普及すると、企業は「AIに選ばれるためにAIO対策を強化すべきだ」と考えがちです。しかし、AIO対策が有効なのは、あくまでAIが比較・提案・購入に関与しやすい商品で、人が主に関与する商品では効果を発揮しにくいのです。

これから企業に求められるのは、AIO対策を一律に進めることではなく、自社商品が「AIに選ばれるのか」「人に選ばれるのか」を見極め、その特性に合った施策を行うことでしょう。