音が呼び起こすブランド体験―聴くだけじゃない、サウンドロゴ戦略

Nintendo Switchの「カチッ」という起動音を聞いて、映像が目に入っていなくても、「任天堂のCMだ」とすぐに気づいた経験はないでしょうか?

上記のように、企業やブランドの世界観を「音」で表現したモノが「サウンドロゴ」です。一度聞けば思い出せるような短いフレーズやメロディが多く、企業がCMや広告に使用すればブランドの印象を強く刻み込むことができます。本記事では、サウンドロゴを活用した、「聴くブランディング」についてご紹介します。

「聴くブランディング」のメリット

①認知度向上

音は記憶との結びつきが強く、特定の音が過去の記憶を鮮明に呼び起こすことは「プルースト効果」とも呼ばれています。サウンドロゴは、文字や画像で伝えにくいブランドの世界観や個性を届けることができるのです。

②言語の壁を超える

メロディだけで構成されたサウンドロゴであれば、言語の異なる国や地域でも直感的にブランドを認識してもらうことが可能です。また、媒体を問わず活用できるという汎用性の高さも、企業にとって大きな魅力でしょう。

商標登録が可能

商標登録が可能である点も特筆すべきポイントです。サウンドロゴは独自性が高く、法的に守ることでブランド資産の一部として活用することができます。

記憶に残る、サウンドロゴ戦略

①マクドナルド

マクドナルドは、時代とともにサウンドロゴを進化させてきました。

1973年、日本マクドナルドがCM放映を開始しCM内の「味なことやるマクドナルド」というフレーズが全国展開を後押ししました。その後も「世界のことばマクドナルド」(1980年)、「おいしい笑顔マクドナルド」(1984年)、「だから…マクドナルド」(1989年)といったように、フレーズが変化しています。

2003年には、世界的におなじみの「パラッパッパッパー♪」というメロディに「i’m lovin’ it®」のフレーズを組み合わせた新たなサウンドロゴを導入しました。そして、2021年以降はメロディのみが定着していますが、それには以下の狙いがあります。

以前はお客様にご提供する価値を短いメッセージに込めていましたが、近年はマクドナルドがご提供する楽しさを瞬時に思い起こしていただけるよう、あえて馴染みのあるメロディだけにしています。私たちがお届けしたいのは、言葉にならないワクワクする楽しさ。CMのラストにはそんな想いが込められています。(マクドナルド 2025

このようにマクドナルドは、サウンドロゴを通じてブランドの魅力を発信し続けているのです。

②明治エッセルスーパーカップ

「明治エッセルスーパーカップ」は、サウンドロゴを活用したユニークな取り組みを行っています。注目されたのは、商品のインナーシールに譜面を印刷し、視覚的にもサウンドロゴを認知させる仕掛けです。さらに、その譜面にはQRコードが添えられており、読み取ると実際の音源を聞くことができるという工夫もあります。これにより、視覚と聴覚の両方からブランド体験を促進する仕組みが実現されました。

メロディは、おいしさと大容量への期待感を表現しています。
https://nlab.itmedia.co.jp/cont/articles/3389768/#google_vignette

仕掛けの背景には、「サウンドロゴの存在をもっと広めたい」という担当者の想いがありました。実際にSNSでは、シールの譜面を見て演奏動画を投稿する人々が登場しました。他にも、譜面の改善点を指摘する声が上がった結果、2024年夏頃に譜面が修正される運びとなりました。

こうしたユニークな取り組みから、サウンドロゴが単なる音ではなく、ユーザーとの接点を生むコミュニケーションツールとして機能していることがわかります。

③アサヒスーパードライ

アサヒスーパードライと言えば、CM内の「アサヒスーパードライ」という印象的な歌声が特徴です。実は、このサウンドロゴを使った体験型施策も登場しています。それが、アサヒグループホールディングスが運営する「スーパードライミュージアム」に設置されている、サウンドロゴの「採点コーナー」です。ここでは、来場者がCMでおなじみのサウンドロゴをカラオケのように発声し、その上手さを採点してもらえるという体験が提供されています。

ブースに入れば、カラオケ気分を味わえます。
https://nlab.itmedia.co.jp/cont/articles/3376484/

このような施策は、ブランドの印象を深めるだけでなく、参加型の体験として来場者の記憶に強く残ります。まさに、サウンドロゴを「聞くだけの存在」から「体験するブランド資産」へと進化させた好例と言えるでしょう。

サウンドロゴはブランドを思い出すきっかけになる

また、サウンドロゴは、単に耳に残るというだけでなく、ブランドの「想起」に大きな影響を与えるかもしれません。「想起」とは、商品を見たり聞いたりしない状態でその名前を思い出すことです。そのうち、「○○といえば?」と聞かれた時に、最初に思い浮かぶ企業やブランドのことを「第一想起」と言います。

2024年12月に実施された「第一想起調査2025」では、「第一想起ランキング」サウンドロゴを活用するブランドがランクインしています。たとえば、ビール部門では、前述した「アサヒスーパードライ」が第1位を獲得。さらに2位にはコーポレートブランドとしての「アサヒビール」もランクインしており、同社のブランド想起力の高さが示されました。

ビールカテゴリーの第一想起ランキング
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/01158/00005/?i_cid=nbpnxr_index より編集

このように、サウンドロゴは単なる音ではなくブランドの存在を伝えられるマーケティング資産だと言えます。ユニバーサル志向のブランディング手段として、その価値はますます高まっていくことでしょう。