TikTokやYouTubeショートなどで配信されている縦型ショートドラマが、最近企業のマーケティング手法としても注目されています。
視聴スタイルの変化から見る流行の背景
現代人のタイムパフォーマンス(タイパ)志向の広がり
近年、現代人の間で「短時間で必要な情報だけを得たい」「動画は倍速再生で効率よく視聴したい」といったような、時間を無駄にせず情報を得たいという意識が強まっています。
SEIKOの「セイコー時間白書2024」によると、実際に現代人の約6割が「タイパを意識して行動している」と回答しています。このことから、多くの人が日常的に時間効率を重視している様子が伺えます。

このタイパ志向を背景に、1~2分で物語が完結し、短時間で情報を得ることができる縦型ショートドラマが、現代人のニーズに合ったことが流行の要因の一つであると考えられます。
メリットはリーチのしやすさと費用対効果の高さ
① 視聴者へリーチしやすい
縦型ショートドラマの特長は、視聴完了率が高いことです。多くの動画が物語形式で構成されているため、視聴者は自然と結末まで見たくなると考えられます。
TikTokの場合、視聴完了率が高いほど動画が高く評価され、アルゴリズムでユーザーのおすすめ欄に表示されやすくなります。その結果、動画はより多くの視聴者に拡散され、リーチを増やすことができます。
② 費用対効果が高い
縦型ショートドラマは費用対効果が高い点も大きなメリットです。なぜなら、若年層をターゲットにしている企業は、若い世代に人気のあるTikTokなどを活用することで、効率的なアプローチができるからです。
また、縦型だと背景の範囲が少ないため、限られたスペースでもカメラワーク次第で、多くのカットを撮影できます。そのため、セットやロケーションにかかるコストを抑えられます。
縦型ショートドラマを活用したビジネス成功事例
日本航空の「旅行先でのカップルの喧嘩」を題材にした縦型ショートドラマ
日本航空は、認知度が低かった独自路線「久米島」の予約数増加を目的とし、縦型ショートドラマを活用したプロモーションを展開しました。
ドラマのテーマは、旅行中に多くの人が経験する「旅行先での喧嘩」です。視聴者にとって、共感しやすいエピソードを盛り込んだ内容となっています。

(https://www.tiktok.com/@japanairlines_official/video/7327986919877446913)
プロモーションの結果、動画は公開からわずか約1か月で1話あたり1,000万回以上の再生数を記録しました。久米島行きの予約数は、最大で約4倍に増加するという大きな成果を収めました。
この成功例によって、縦型ショートドラマが短期間で視聴者の関心を引き、購買行動にまでつながるマーケティング手法であるということが話題となりました。
ドコモの「若者に共感してもらう」縦型ショートドラマ
ドコモは、若者の間で「おじいちゃん、おばあちゃんが持っているケータイ」と見られ、ブランドの存在感すら発揮できていない、という課題がありました。この課題解決を目的とし、縦型ショートドラマを活用しました。
青春をテーマにした2分前後のドラマを制作し、週に2~3本のペースで投稿しました。若年層が思わず共感してしまうテーマで、親近感のある内容となっています。

( https://www.tiktok.com/@docomo.official )
動画投稿の結果、1か月で100万回再生の動画を生み出し、TikTokフォロワー数は1.8万人(動画投稿前)から28.3万人へと急増しました。 縦型ショートドラマによって、若年層へドコモの存在感を示すことに成功したことがわかります。
視聴者を引き込むには、「最後まで見たくなる作品」を作ることが重要
見始めてもらうための工夫
TikTokでは、動画が投稿されると、視聴完了率や総視聴時間、いいね、コメント、シェアの数を基に評価が行われます。これにより、「視聴完了率が高く、リアクションが多い動画」はアルゴリズムによっておすすめ表示されやすくなります。

アルゴリズムを活用するためには、ユーザーを最初の数秒で引き込む工夫が必要です。 例えば、動画の冒頭に興味を引くシーンや、意外性のあるセリフを映すことで、まず見始めたくなるような仕掛けをつくることができます。
視聴を継続させるための工夫
視聴者を冒頭部分で引き込んだ後は、最後まで視聴させるための工夫が重要です。
そのためには、広告らしさを排除し、物語性を強調したコンテンツ作りをする必要があります。動画内にブランドメッセージを自然に組み込むことで、企業の伝えたいことが視聴者に違和感なく届きます。
上記2つの工夫を取り込み、多くの再生数を獲得している三井住友カードの縦型ショートドラマをご紹介します。
このドラマは、「忙しすぎる人」というタイトルで、タイパを重視する若者が主人公となっています。そして、動画内ではこの主人公のみ2倍速になっているというユニークな設定がされています。

( https://vt.tiktok.com/ZSj2yEqgj/ )
冒頭から「なぜ主人公だけ倍速になっているのか?」という疑問を視聴者に持たせ、物語に引き込んでいきます。この斬新な設定により、視聴者は疑問の答えを知りたいと思い、最後まで見続ける動機が生まれます。
さらに、動画内で自社商品が画面に映るのは一瞬にとどめました。このことで、「広告らしさ」が薄れ、プロモーションが物語として受け入れられます。
このように、最後まで見たくなる作品を作るためには、広告の要素を自然に織り交ぜつつも、物語を主軸にして視聴者の興味を引きつける工夫をすることが重要です。









