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「自社独自AI」は本当に必要か?|開発するべき企業と外部ツールで十分な企業の違い

大手企業を中心に半数以上が開発している「自社独自AI」とは?

自社独自AIとは、自社のこれまでのデータを踏まえた出力が行える、自社専用のAIのことです。自社専用のため、利用環境や権限管理を適切に設計すれば、機密情報を扱いやすくなることが特長です。

株式会社Bocekは、金融、IT・通信、広告・エンタメ・マスコミなどの国内10業界において、大手企業を中心とした245社を対象に、AI活用に関する調査を行いました。

その結果、生成AIを活用している企業のうち、外部ツールではなく自社開発のAIを活用している企業は55.9%にものぼったことが明らかになりました。

このように、主要企業をはじめとする各社が自社独自AIの開発を進めている一方で、その必要性はすべての企業に当てはまるわけではありません。
自社独自AIを開発することで成果を生み出すことができる企業と、既存の外部ツールの活用で十分な企業があります。

自社独自AIが成果を生む条件は?―自社ならではの「ナレッジ」が競争力となるか

自社独自AIが成果を生む条件

自社独自AIによって成果を生み出すことができる場合は、自社独自のナレッジが企業価値となるケースです。

自社独自のナレッジとは、企業のこれまでの経験をもとにした「勝ち筋」のことで、企業独自の経験知ともいうことができます。
例えば営業職の場合、契約につながった商談データから編み出した「営業の成約率が上がる方法」が自社独自のナレッジです。

自社独自のナレッジが企業価値となる業界の代表的な例として、企画会社やコンサルティング会社、マーケティング会社などがあげられます。

自社独自のナレッジには、2つのパターンがあります。

1つ目は、属人的なナレッジです。例えば「コンペに書く企画書のポイント」など、担当者が経験から得たナレッジのことを指します。このナレッジは個人の暗黙知となりやすいため、社内で共有が難しいのが難点です。

2つ目は、第三者による再現性が高いナレッジです。例えば、ECサイト内における「購買率が上がるクーポン配布時間」がこれに該当します。蓄積されたデータをもとに、組織の誰もが実行できる「勝ち筋」として仕組み化できることが特徴です。

このように、自社独自のナレッジは業務において重要である一方で、暗黙知となりやすく、仕組み化することが難しいことがあげられます。そこで役に立つのが、自社独自AIです。

自社独自AIが生み出す2つの効果

自社独自AIを開発することによる効果は、大きく分けて2つあります。

1つ目は、自社独自のナレッジの可視化・パターン化ができることです。
自社独自AIに過去の自社の成功事例を学習・分析させることで、暗黙知となりやすいナレッジや、まだ仕組み化されていないナレッジを見つけることができます。

成功事例から得たナレッジであるため、今後の業務の質の向上につながります。

2つ目は、自社独自のナレッジに基づいて、実効性のあるアイデア・施策を生み出すことができることです。

一般的な汎用AIツールの場合、ネット上にある広いデータを学習しているため、平均的で無難なアイデアを出力する傾向にあります。
実際、スタンフォード大学などに所属する研究者が発表した調査でも、汎用AIツールが生成した複数のWebサイトは、人間が書いた複数のWebサイトと比較して内容の類似性が33%も高いことがわかりました。

一方で自社独自AIは、自社の過去の成功事例を踏まえた出力を行うため、平均的な出力になりにくく、競合との差別化につながる企画を出力することができます。

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自社独自AIの注意点―出力に偏りが生じることも

一方で、自社独自AIを開発するうえで注意点もあります。

それは、データの偏りによる過学習のリスクがあることです。
過学習とは、AIが学習データに対して過剰に適合してしまい、学習データの内容に偏った出力をしてしまうことです。

過学習を起こした場合、自社独自のデータをもとにしているため競合との差別化は図れるものの、現在のトレンドを踏まえられていないものや、過去の自社事例に適合しすぎた新規性の低いものが出力される可能性があります。

そのため、自社独自AIの開発を検討する場合は、過学習を防ぐために定期的に学習データの更新・追加が必要なことを念頭に置いておきましょう。

自社独自AIではなく、既存の外部ツールで十分なケースもある

自社独自AIではなく、既存の外部ツールが役に立つ場合として、業界横断で標準的なフローが確立されている業務や、情報処理の効率化を目的とする業務を行う場合があげられます。

業界横断で標準的なフローが確立されている業務は、自社独自のナレッジよりも、業界内で共通している知識やシステムで成り立つことが多いです。

例えば小売業界では、在庫管理や需要予測が成果を生み出すために重要な役割を占めています。在庫管理や需要予測は、市場の動向や季節変動など、業界で共通するパターンをもとに行うため、既存のツールでも十分に対応できます。

このように、業務における自社独自のナレッジの重要度が低いのであれば、自社独自AIを開発する必要性は低く、既存の外部ツールで十分だといえるでしょう。

加えて、オペレーションの効率化や業務改善を行いたい場合も、自社独自AIではなく、既存の外部ツールで対応できるケースがほとんどです。

この場合の目的は業務効率化であり、自社独自のナレッジの必要性は低いためです。
小売業界を例に挙げると、休日に店舗が円滑に回るシフトを組みたいとき、自社独自AIではなく外部のAIシフトツールを用いることで十分に業務改善を図ることができるでしょう。

以上のような外部ツールで十分な業務が多い業界として、例えば小売業界や、交通・インフラ業界、医療業界があげられます。

交通・インフラ業界では運行スケジュールの管理や設備の点検記録、医療業界では電子カルテの記録・管理や検査結果の記録が業界横断で標準的なフローが確立されている業務の例としてあげることができます。

自社独自AIは社内データをもとに独自性の高い出力をし、
汎用AIはインターネット上の公開データをもとに平均的で無難な出力をする傾向にある。

自社独自AIの開発前に確認すべき3つのチェックポイントー自社の価値を再定義しよう

業務でのAIツールの活用が一般的になっている現在、ただ汎用AIツールを導入するだけでは、他社との差別化はできず、新たな成果を生み出すのも難しいです。

そこで重要となるのは、「何を学習させるか」です。その学習内容が、自社だけが持つ知見といった自社独自のナレッジであるとき、はじめて自社独自AIを開発する意味が生まれます。

また、自社独自AIの開発には大きなコストがかかります。そのため、開発に踏み切る前に、開発の妥当性を検証するために次の3つのチェックポイントを確認することが必要です。

  1. 自社だけが持つナレッジは何か
  2. そのナレッジは競合との差別化につながるか
  3. AIに学習させられるデータとして蓄積されているか

自社独自AIの開発を検討する際は、まずはこの3つの問いを通じて、自社の競争力となる企業価値を再定義することが必要です。1つでも満たせない項目があれば、開発を見送る判断も必要になります。

以上の3点が明確になったら、自社独自AIをどの業務に組み込むか、具体的なワークフローを設計しましょう。この一連のプロセスが、自社独自AIの開発を検討し、成功に導く道筋となるでしょう。

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