ゼロパーティーデータとは?
ゼロパーティーデータとは、顧客が同意したうえで、自発的・積極的に企業へ提供するデータのことを指します。
たとえば以下のようなモノが身近な例として挙げられます。
- キャンペーンに応募する際に、データの利用許諾を得て実施されるアンケートデータ
- アプリをインストール・起動した際に、音楽や映像作品の好みを選択する形式のアンケートデータ
- 化粧品ブランドの、顧客が自発的に行うスキンケア診断データ
ファーストパーティーデータや、サードパーティーデータとの違いは?
ゼロパーティーデータと似たモノに、ファーストパーティーデータやサードパーティーデータがあります。
ゼロパーティーデータと、それらのデータの大きな違いは、顧客が自らの意思で企業に情報提供している点だと言えるでしょう。
ゼロパーティーデータのメリット・デメリット
メリット
- 顧客から、個別具体的な情報を直接取得できる
ファーストパーティーデータからも、顧客の属性や嗜好を推測できますが、それはあくまでも推測にすぎません。しかし、ゼロパーティーデータは、顧客が自ら提供する情報です。知りたい相手から、知りたい情報を直接もらうことができます。したがって、より顧客の「本音」を精度高く知ることができます。
デメリット
- 十分な量のデータ収集にはかなりのコストと時間がかかる
顧客が情報収集に同意し、自発的に情報提供してくれるような仕掛けを設計・実行する必要があります。その分のコストや時間がかかることは、デメリットと言えるでしょう。
つまり、半自動的に収集される、ファーストパーティーデータやサードパーティーデータと比較すると、ゼロパーティーデータは集めるのに手間がかかります。
したがって、大量のデータを収集することは、簡単ではありません。顧客が思わず興味を寄せてしまう仕掛けを用意し、できる限り多くの人に、情報を提供してもらうことがカギとなるでしょう。
ゼロパーティーデータ活用事例
事例①|サッポロビール|エビスビアタウン
「集まり、語らう」ファンコミュニティ
(https://ybt.sapporobeer.jp/)
ビールブランド「YEBISU(エビス)」を展開するサッポロビールは、2022年から同ブランドのファンコミュニティ「エビスビアタウン」を運営しています。ロイヤルティーの高い顧客からゼロパーティーデータを収集し、コミュニティ内の施策はもちろん、ライト・ミドルユーザー向け施策に反映することも目的としています。
目的|ゼロパーティーデータを活用して取り組んでいること
- 顧客(特にライト・ミドルユーザー)のロイヤルティー向上
収集方法|ゼロパーティーデータをどのように集めているか
- 月1回程度、コミュニティメンバーとのMTGを定期的に開催
- コミュニティメンバーの、日常でビールを楽しむ様子の投稿を確認
- アンケート調査を実施
活用方法|ゼロパーティーデータをどのように活用しているか
- グッズ開発
- ライト・ミドルユーザーファン化施策の実施
- 「体験する場」の提供
- ホームページに醸造責任者のインタビュー記事を掲載
- ロイヤルティー化施策の検討
事例②|DROBE|70問のアンケート
(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC193H90Z10C24A3000000/)
DOROBEは利用者のその時の気分や嗜好にあわせて、プロのスタイリストが洋服をコーディネートして提案するサービスを提供しています。1回につき5点の商品が自宅に届き、気に入ったモノは購入、そうでないモノは返品できるようになっています。サービス利用者から、個人の趣味嗜好やライフスタイル、体形などの詳細な情報を収集することで、サービスの質を向上させています。
目的|ゼロパーティーデータを活用して取り組んでいること
- 「その時買いたい服を提案して欲しい」というニーズに応えること
収集方法|ゼロパーティーデータをどのように集めているか
- 会員登録時にアンケート調査を実施
- 商品発送前に、候補商品の画像をLINE上で共有、それらに対する要望を確認
- 届いた商品の購入・返却理由についてアンケート調査を実施
活用方法|ゼロパーティーデータをどのように活用しているか
- コーディネート提案の個別最適化
- 自社商品の開発
- 外部ブランドとのコラボレーション商品の開発
事例から読み取る、ゼロパーティーデータ利活用の3つのポイント
① 顧客に積極的に情報提供してもらうための「仕掛け」
ゼロパーティーデータを収集する際は、顧客に積極性を持たせることが必要です。どうすれば、顧客の情報提供へのモチベーションを高めることができるのか、そのためにはどのような仕掛けが有効なのか、という視点が求められます。
たとえば、事例①では、ファンコミュニティメンバーとエビスビールの担当者が、定期的にMTGを開催することで、ゼロパーティーデータを収集しています。過去には、そこで出た意見をもとに、グッズ開発を行ったこともあります。この一連の流れによって、コミュニティメンバーは、「意見を言えば聞いてくれる」「私たちの声が届く」と思うでしょう。このように、顧客が企業・ブランドを「自分ごと化」できるような仕掛けを行っているのです。
コミュニティメンバーの投稿からもゼロパーティーデータを収集しています。投稿の中で特に人気なモノは、トップページに掲載しています。これにはコミュニティメンバーの投稿意欲を高める狙いがあり、それによってゼロパーティーデータ収集がより加速することが期待できます。
② 顧客が情報提供しやすい「環境」
いくらよい「仕掛け」をつくり、多くの顧客にデータの提供を促すことできたとしても、顧客が情報提供の際にストレスを感じてしまうと、こちら側が望むようなデータを収集できない可能性があります。結果として、人は集まったがデータは集まらない、ということが発生するかもしれません。何が顧客の情報提供を妨げるのか/妨げ得るのかを考えるべきです。顧客目線で情報提供の負荷を分析し、その負荷を解消できるような「環境」をつくることが必要です。
たとえば、事例②では、会員登録時に70問のアンケートを実施することで、ゼロパーティーデータを取得しています。顧客からすると、非常に面倒なアンケートのように思えますが、70~80%の回答率を誇ります。
70問のアンケート設計の裏には、いくつかの工夫がなされています。具体的には、アンケートの構成を、簡単な質問→難しい質問の順に設計しています。前半はテンポよく回答してもらえるようにし、後半は「せっかくここまで回答したのなら、最後まで答えるか」という心理を促すようになっています。
また、顧客に「アンケートの回答内容がどのように活用されるのかわからない」といった不安を抱かせることが回答を妨げ得ると考え、設問の意図を記載するようにしています。
③ 新たな方向性を見つけるための「ひらめき」
「仕掛け」と「環境」をつくり、ゼロパーティーデータを収集したあとは、それをどのように活用するかが肝になります。目的を定め、そのためにデータを収集・活用することは言うまでもなく重要です。
事例①では、ファンコミュニティから得たデータを、ライト・ミドルユーザーのロイヤルティー向上という目的達成のために活用しています。たとえば、樽生エビスにあわせた料理を楽しめるYEBISU BARや、エビスの歴史や醸造の様子、施設限定のエビスビールも楽しめる、YEBISU BERWRY TOKYOといった、ブランドを「体験してもらう場」を設置しています。
事例②では、取得したデータを、さらなる個別最適化のために活用しています。これは、「その時買いたい服を提案して欲しい」というニーズに応えるという、ビジョンを実現するためです。
事例②では、それだけでなく、自社商品の開発や外部ブランドとのコラボ商品の開発にも、ゼロパーティーデータを活用しています。
「このデータを使って/このデータから考えると、○○もできるかもしれない」というポジティブな視点でデータと向き合う姿勢が、新しい可能性を生み出すかもしれません。
目的ドリブンの視点と、データドリブンの視点両方から、データの活用について、想像力を膨らませることが重要です。
